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2024.09.03 土地オーナー様土地活用

土地を売るときの注意点:トラブル事例や仲介手数料、高値売却のコツを一挙紹介

この記事の監修者
垣内 典之一級建築士垣内 典之

土地の売却は、多くの土地オーナー様にとって人生で数少ない大きな決断の一つです。
適切な準備と知識があれば、スムーズな取引と満足のいく結果を得ることができますが、そうでない場合は思わぬトラブルや損失を招くこともあります。

この記事では、土地売却の基本から税金対策、よくあるトラブルとその対処法まで、土地売却のためのポイントを詳しく解説します。これから土地の売却をお考えの方、相続した土地の売却を検討している方はぜひ最後までお読みください。

土地売却の基本:準備と売るときの注意点

土地を売る際には、事前に準備することや把握しておくべき点があります。

ここでは、土地売却を考えている方に向けて、基本的な準備と注意点をわかりやすく解説します。

土地の価値を左右する要因とは?

土地の価値は、さまざまな要因によって決まります。主な要因には以下のようなものがあります。

  • 立地
  • 面積
  • 形状
  • 法規制

まず、土地の価値が左右される要因として立地が挙げられます。売却する土地が駅から近いほど、その土地の価値は高まるのが一般的です。

さらに駅周辺に商業施設や住宅街、総合病院、警察署などがある場合、土地の価値はさらに高まります。しかし、売却する土地が駅から離れていた場合でも、近くに商業施設や大手企業の本社などがあれば、その土地の価値は高まる可能性があるでしょう。

このように土地の価値は周辺環境もしくは状況によって大きく左右するのが一般的です。

土地の広さや間取り、奥行きのバランスなどの面積によっても土地の価値は左右します。土地の面積が広ければ広いほど、アパートや商業施設などが建てられるようになるため、土地の価値は高まります。

ただし、土地の面積が広いからといって必ずしも土地の価値が高まるとは限らないことを覚えておきましょう。

たとえば、600㎡ほどの広さの土地を持つ場合、戸建て住宅を立てる人がこれほど広い土地を購入するのは稀です。そのため、購入先は不動産会社となりますが、土地の購入後の手入れ費用を見越して金額を提示するため、土地売却の費用が安くなる可能性があります。

また、土地の形状によっても価値は左右します。土地の形状が長方形や正方形のような整形地の場合は、建物を建てやすいためその価値は高くなるのが一般的です。反対に、三角地や旗竿地などの不整形地の土地は、売却金額が下がりやすくなります。

他にも土地の価値を調査する際には、法規制についても把握しておくことが大切です。法規制とは、法律によってその土地に定められた規制のことで、中でも都市計画法が土地の価値を左右する要因となります。

都市計画法とは、都市の健全な発展と秩序のある整備を目的として定められた法律です。用途地域の区分によって、土地の価値が上がるケース、価値が下がるケースがあります。たとえば、今後市街地化が進められる地域の土地の場合は、価値が向上するのが一般的です。反対に、都市計画法によって建築が制限される地域の土地の場合は、価値が下がります。

このように土地の価値はさまざまな要因によって左右されます。そのため、土地の価値を算出する際には、専門家に依頼するのがよいでしょう。

売却にかかる期間と費用、仲介手数料の目安

土地売却にかかる期間は、土地の条件や市場の状況によって異なりますが、一般的に3ヶ月~6ヶ月で不動産会社の査定から引き渡しまで完了します。一般的な流れと期間の目安は以下のとおりです。

期間 流れ 詳細
1週間~4週間 売却活動前 ・土地売却の事前準備を行う
・不動産会社の査定を行う
・不動産会社と媒介契約を締結する
1ヶ月~3ヶ月 売却活動中 ・売却活動を開始する
・購入希望者と条件を交渉する
・売買契約を締結する
1ヶ月~2ヶ月 売却活動後 ・土地の代金を決済する
・土地を引き渡す

また、土地売却を行う際には、不動産会社への仲介手数料や印紙税、譲渡所得税などの費用も支払う必要があります。
土地売却に伴い発生する費用の種類と目安は以下のとおりです。

■不動産会社への仲介手数料

土地の売却価格 仲介手数料
200万円以下の部分 売却価格の5%+消費税
200万円超え400万円以下の部分 売却価格の4%+消費税
400万円超えの部分 売却価格の3%+消費税

■印紙税

土地の売却価格 本則税率 軽減税率
10万円超え50万円以下 400円 200円
50万円超え100万円以下 1000円 500円
100万円超え500万円以下 2000円 1000円
500万円超え1,000万円以下 1万 5000円
1,000万円超え5,000万円以下 2万 1万
5,000万円超え1億円以下 6万 3万
1億円超え5億円以下 10万 6万
5億円超え10億円以下 20万 16万
10億円超え50億円以下 40万 32万
50億円越え 60万 48万

■登記免許税
土地に抵当権がついている場合は、土地の引き渡しが行われるまでに抵当権を抹消する必要があります。抵当権を抹消する登記免許税は、不動産一つに対して1,000円です。

■譲渡所得税

区分 所得税(復興税含む税率) 住民税(税率)
長期譲渡所得
(土地の所有期間が5年超)
15.315% 5%
短期譲渡所得
(土地の所有期間が5年以下)
30.63% 9%

上記は土地の売却にかかる代表的な費用の目安です。必要に応じて土地の測量費用や水道引き込み工事の費用、建物の解体費用などが加えられます。

土地売却に必要な書類リスト

土地売却には、多くの書類が必要になります。主な必要書類は以下のとおりです。

必要書類 概要
本人確認書類 ・所有権移転登記などの申請を司法書士に依頼する際に必要
・運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど
権利書(登記識別情報通知書) ・土地の所有権を移転する際に必要
・2005年3月7日以前に土地を取得している場合は権利証、同日以降に土地を取得している場合は登記識別情報通知書を所有している
印鑑証明 ・所有権移転登記の際に必要
・登記申請日の3ヶ月以内の印鑑証明が必要となる
・市町村役場で取得でき取得費用は数百円程度
住民票 ・所有権移転登記の際に必要
・取得期限はない
・市町村役場で取得でき取得費用は300円程度
固定資産評価証明書 ・所有者移転に伴う登録免許税を計算する際に必要
・市町村役場で取得でき取得費用は300円程度
固定資産税納税通知書 ・固定資産税精算金を計算する際に必要
確定測量図 ・土地を購入する人が確定測量図の提示を条件としている場合に必要
・売却する土地のすべての境界が確定されたときに発行される
筆界確認書・越境の覚書 ・土地を購入する人が提示を条件としている場合に必要
・隣接する土地の所有者との間で越境物の所有権や是正方法などについて定めた書類
抵当権抹消書類 ・土地を担保にお金を借り、土地の売却価格で残債を一括返済する際に必要
・融資をしている金融機関が保有しているため、土地の引き渡しの場に金融機関の担当者によって持参する

これらの必要書類を事前に準備しておくことで、スムーズな取引につながるでしょう。

権利関係と境界線の確認方法

土地を売却するうえで、土地の権利関係と境界線の確認は欠かせません。土地の権利関係は、法務局の登記簿(登記記録)を確認することで把握できます。登記簿では、所有権に関する内容が記載された「甲区」と所有権以外の権利に関する内容が記載された「乙区」を確認しましょう。

まずは、土地の所有者が本当に自身であるのかを確認する必要があります。所有権が自身にある場合は、そのまま売却を進めても問題ありません。しかし、土地の所有権が共有名義であれば、共有者全員の同意が必要となります。利害関係者の調査では、抵当金の有無や賃借権、地上権、地役権などが設定されているのかを確認しましょう。
なお、それぞれの意味は以下の通りです。

賃借権 賃貸借契約にもとづく賃借人(居住者)の権利のこと
地上権 他人が所有する土地を使う権利のこと
地役権 一定の目的のために他人の土地を利用する権利のこと

また土地を売却する際には、境界線も確認する必要があります。
境界線が曖昧なまま売却を進めると、売却後にトラブルとなる可能性があるでしょう。自身で境界線について確認する場合は、法務局が管理する登記事項証明書(登記簿謄本)や地積測量図を取得する方法があります。

なお、地積測量図がなく境界線が確定していない場合は、測量を実施する必要があります。複雑なケースでは、土地家屋調査士などの専門家に相談することをおすすめします。

土壌汚染や埋設物のチェックポイント

土壌汚染や地中埋設物の存在は、土地の価値を大きく下げる要因となります。
土壌汚染とは、工場などで使用された有害な化学物質、排水などが地表面から浸透して、土壌に蓄積された状態のことです。地中埋設物とは、既存の建物の基礎部分やコンクリート片、瓦などの建築資材、古い水道管、浄化槽、井戸などの廃棄物が地中に埋まっている状態のことを指します。特に、工場跡地や古い建物の跡地では注意する必要があります。
土壌汚染と地中埋設物のチェックポイントは以下のとおりです。

  • 土地の利用履歴の確認
  • 目視による土壌の色や臭いの確認
  • 必要に応じて土壌汚染調査の実施
  • 地中レーダー探査による埋設物の確認

これらの調査には費用がかかりますが、売却後のトラブルを防ぐために重要な投資となります。たとえば、土壌汚染が見つかった場合、浄化費用が数百万円から数千万円かかることもあり、売主の責任となる可能性が高いのです。

土地の適正価格の見極めと売る方法の選択

土地を売却する際、適正価格の見極めと最適な売却方法の選択は、スムーズな取引と満足のいく結果を得るための重要なステップです。
ここでは、土地オーナーの皆様に役立つ情報と実践的なアドバイスをお届けします。

路線価と公示地価の活用法

土地の適正価格を見極める際には、路線価と公示地価を活用するのが一般的です。

路線価と公示地価は、ともに公的機関が認める日本各地の土地の値段のことです。路線価は国税庁が相続税や贈与税を算出するために定めている土地の価格のことを指します。一方、公示地価は、適正な地価の基準とするために国土交通省が公表しているものです。公示地価は、一般的に土地を売買する際の指標になったり、公共事業の取得価格算定の基準になったりします。

路線価と公示地価の違いは以下のとおりです。

路線価 公示地価
調査主体 国土交通省土地鑑定委員会 国税庁
価格の算出方法 1ヶ所につき2名以上の不動産鑑定士が算出した鑑定額をもとに算出する 売買の実例価格、鑑定評価額などをもとに算出する
評価時期 毎年1月1日時点 毎年1月1日時点
発表時期 毎年3月下旬 毎年7月1日
調査地点 1㎡あたりの価格 道路に面する土地の1㎡あたりの価格

これらの値は、実際の取引価格の70〜80%程度とされることが多いです。
たとえば、路線価が30万円/㎡の地域であれば、実際の取引価格は約37.5〜42.9万円/㎡と推測できます。ただし、これはあくまで目安であり、個々の土地の条件によって大きく変動する点に注意が必要です。

複数の不動産会社に相見積もりを取るコツ

土地の適正価格を知るには、複数の不動産会社から査定を受けることが大切です。
以下のポイントを押さえて、効果的に相見積もりを取りましょう。

  1. 3社以上の不動産会社に依頼する
  2. 地元の不動産会社と大手不動産会社をミックスする
  3. 各社の査定根拠を詳しく聞く
  4. 査定額の高低だけでなく、販売力や対応の丁寧さも考慮する

オンラインの一括査定サービスを利用すれば、手軽に複数社から見積もりを取ることができます。ただし、個人情報の取り扱いには十分注意し、信頼できるサービスを選びましょう。

個人売買vs不動産仲介:メリット・デメリット

土地売却の方法は大きく分けて、個人売買と不動産仲介の2つがあります。

個人売買とは、不動産会社を通さずに土地を売買する方法のことです。
土地の売買を不動産会社に依頼した場合は、仲介手数料が必要となりますが、個人売買の場合はこうした費用を用意する必要がありません。
また売主・買主間での合意があれば、契約内容を問わず売買ができるため、自由度が高い点もメリットといえるでしょう。

しかし、土地の売買に関する手続きをすべて自身で行う必要があるため、不動産についての専門的な知識がないとミスやトラブルに発展する可能性があるでしょう。たとえば、適切な価格設定ができなかったり、詐欺にあったりするケースがあります。

一方、不動産会社を土地の売買の仲介に入れれば、法的手続きなどをサポートしてくれるため、売主・買主間でのトラブルやミスなどを防げるでしょう。さらに、不動産会社は、買主を紹介してくれるといった広告力もあるため、土地の売買をスムーズに進められる点もメリットの一つです。

しかし、不動産会社に依頼すると、売却価格に応じた仲介手数料が必要となります。さらに、個人売買の場合は契約内容の自由度が高いですが、不動産会社に依頼すると自身の希望どおりに売買が進まない可能性もあります。
なお、不動産会社に依頼する際の仲介手数料は、400万円を超える売買価格の場合「物件価格の3%+ 6万円+消費税」という法定上限があります。

一般的には、不動産の知識や経験が豊富でない方は、不動産仲介を利用する方が安全で効率的です。ただし、知人への売却など、買主が既に決まっている場合は個人間での売買も選択肢となります。

媒介契約の種類と選び方

不動産会社と契約を結ぶ際、一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類の媒介契約があります。

一般媒介契約とは、複数の不動産会社に仲介を依頼できる契約のことです。さらに依頼者が自身で購入希望者を確保した場合でも土地の売買が可能となるため、3つの媒介契約のなかでも比較的自由度が高いというメリットがあります。
しかし、土地が人気なエリアにあったり、相場よりも値段が安かったりするなど、不動産会社にとって魅力的な条件でない限り、時間と経費をかけた積極的な売買活動は行ってくれないでしょう。

専任媒介契約とは、1社のみの不動産会社に依頼する契約のことです。
ただし、専任媒介契約を締結しているからといって必ずしも不動産会社経由で売却しなければならないというわけではなく、個人で売買契約を結べます。

不動産会社は、媒介契約締結日の翌日から5日以内(不動産会社およびレインズの休業日は除く)に不動産物件情報交換のためのネットワークシステムであるレインズに登録しなければなりません。不動産会社の営業力や販売力、積極性がないと売買が成立するまでの期間が長期化する可能性もあるでしょう。

専属専任媒介契約とは、1社の不動産会社のみに依頼する契約のことです。一般媒介契約のように、他の不動産会社との契約はできません。また上記2つの契約方法とは異なり、自身で購入希望者を確保した場合も、不動産会社を媒介として売買を行う必要があります。

専属専任媒介契約は、3つの媒介契約のなかでも依頼者の縛りが強いため、不動産会社の積極的な売買活動に期待できます。一方で、不動産会社に不満がある場合でも、契約期間中は1社のみにしか依頼できません。

特殊なケース:競売、公売、遠方の土地の売却方法

土地を売る際には、不動産会社に依頼したり、個人売買をしたりするなどの売却方法が一般的ですが、競売や公売、遠方の土地の売却など特殊な売却方法もあります。

競売とは、債務者が契約どおりに返済していない債権を回収するために、法律に則って裁判所のもとで不動産を売却する手続きのことです。
たとえば、所有している土地を担保として住宅ローンを借り入れている場合、住宅ローンの返済ができなくなると、金融機関が債権の回収のために土地を強制的に売却させます。この際の手続きを競売といいます。

公売とは、税金を滞納したために差し押さえられた財産を、入札などによる方法によって売却し、滞納している税金に充てる制度のことです。
財産には、土地や住宅、農地、貴金属などが含まれます。差し押さえられた財産は、インターネットオークションや期間入札によって売却されます。

売却したい土地が遠方にある場合は、自身が現地に行かなくても売却することが可能です。たとえば、「持ち回り契約」という方法を使うと、売主と買主、不動産会社が契約書を郵送しあいながら手続きを進められます。
具体的には、不動産会社が買主に契約書を送付し、買主が署名・捺印を行ったと同時に手付金を指定の口座に振り込み、契約書を売主に送ります。売主は届いた契約書に署名・捺印を行い、手付金が振り込まれていることを確認し、買主もしくは不動産会社に契約書を郵送すれば、売買契約が成立します。

土地を売る際には、状況により様々な手続きが必要になります。また、一度売ってしまった土地を取り戻すことは困難なため、土地を活用する、という選択肢も検討することをおすすめします。所有している土地を活用して収益化する方法があるのかプロの意見を聞きたい、という方はぜひ一度ご相談ください。

土地を売る契約時の注意点:トラブルを防ぐチェックリスト

土地売却の契約は、大切な資産を取り扱う重要な手続きです。適切な注意を払うことで、将来のトラブルを未然に防ぎ、スムーズな取引を実現できます。

ここでは、契約時に押さえておくべきポイントをチェックリスト形式でご紹介します。

重要事項説明書の読み方

重要事項説明書は、売買契約の要点をまとめた重要な書類です。以下のポイントに注意して確認しましょう。

【チェックポイント】

  1. 物件の基本情報(所在地、面積、境界線など)が正確か
  2. 法令上の制限(建ぺい率、容積率、用途地域など)を理解したか
  3. 周辺環境や将来の開発計画に関する情報が記載されているか
  4. 契約不適合責任の範囲と期間が明確か

重要事項は宅建士に説明義務があります。不明点は、その場で確認しましょう。

手付金の適正額と注意点

手付金は、契約の証として買主が売主に支払う金額です。一般的に売買価格の5〜10%程度が相場とされていますが、以下の点に注意が必要です。買主の不安を拭うことができる情報ですので、ぜひ覚えておきましょう。

  • 手付金の金額と支払い時期を明確に契約書に記載する
  • 保全措置が適用される場合は、その内容を確認する(注:この制度は主に宅建業者が売主の場合に適用されます)
  • 手付解除の条件(期間や方法)を確認する

たとえば、5,000万円の土地売買で250万円の手付金を設定する場合、契約不履行時のリスクを考慮し、手付金保証制度を利用することができます。手付金保証制度を利用すると、売主が倒産するなどしたときに手付金を返還してもらえます。

契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)の範囲を確認

契約不適合責任は、売買契約の目的物に契約の内容に適合しない点があった場合の売主の責任を指します。
以下の点を確認しておきましょう。

  • 責任の範囲(土壌汚染、地中埋設物など具体的に何が含まれるか)
  • 責任期間(引き渡し後何年間有効か)
  • 免責事項(売主が責任を負わない項目)

たとえば、「引き渡し後2年以内に発見された土壌汚染については売主が責任を負う」といった具体的な取り決めを行うことで、将来のトラブルを防ぐことができます。

引き渡し日の決め方と注意すべきこと

土地の引き渡し日の設定は、双方の都合を考慮しながら慎重に行う必要があります。
以下のポイントに注意しましょう。

  • 買主の資金調達スケジュールに合わせる
  • 売主の引っ越しや新居の準備期間を考慮する
  • 固定資産税の精算日を考慮する(通常は引き渡し日)

たとえば、6月30日に引き渡す場合、1月1日から6月29日までの固定資産税は売主負担、6月30日以降は買主負担となります。
このような細かい点も事前に確認し、契約書に明記しておくことが大切です。

契約解除の条件と違約金について

契約解除の条件と違約金の取り決めは、トラブル防止の観点から非常に重要です。
以下の点を確認しましょう。

  • 契約解除が可能なケースを明確にする(ローン特約など)
  • 買主都合と売主都合での違約金の金額や計算方法を確認する
  • 手付解除の期限を確認する

一般的に、違約金は売買価格の10〜20%程度に設定されることが多いですが、宅地建物取引業者が売主の場合は法律により20%が上限とされています。個々の事情に応じて適切な金額を設定することが大切です。
たとえば、5,000万円の取引で違約金を10%と設定した場合、解約時に500万円の支払いが必要になることを理解しておく必要があります。

土地売却の契約は、細心の注意を払って進める必要があります。上記のポイントを押さえることで、多くのトラブルを未然に防ぐことができるでしょう。しかし、不動産取引は複雑で、専門的な知識が必要な場面も多々あります。

税金対策:確定申告のポイントと控除の活用

土地売却で得た利益に対する税金は、適切な対策を講じることで大幅に軽減できる可能性があります。
ここでは、土地オーナーの皆様に役立つ税金対策のポイントと、活用できる控除について詳しく解説します。

土地や建物の譲渡所得税の計算方法と軽減のテクニック

譲渡所得税は、土地や建物などの売却による利益に課される税金で、以下の式で計算されます。

譲渡所得 = 売却価格 – (取得費 + 譲渡費用)

ここで重要なのは、取得費と譲渡費用を適切に計上することです。
たとえば、土地の取得時に支払った仲介手数料や登記費用、売却時の測量費用なども譲渡費用として認められます。また、長期譲渡所得(所有期間が5年超)の場合、税率が優遇されます。

所有期間 所得税(復興税含む) 住民税 合計税率
5年以下 30.69% 9% 39%
5年超 15.315% 5% 20.315%

たとえば、1,000万円の譲渡所得がある場合、長期譲渡所得(所有期間5年超)として扱われれば、短期譲渡所得(所有期間5年以下)と比較して税額を約193万円節約できる計算になります。

確定申告の手続きと必要書類

土地売却の確定申告は、通常、売却した年の翌年の2月16日から3月15日までに行います。
必要となるおもな書類は以下のとおりです。

  • 確定申告書(譲渡所得用)
  • 収支内訳書
  • 売買契約書の写し
  • 登記簿謄本
  • 取得費の証明書類(古い領収書など)
  • 譲渡費用の証明書類

特に取得費の証明が難しい場合は、概算取得費として譲渡価額の5%を取得費として計上できる特例があります。ただし、実際の取得費が5%を上回る場合は、できる限り実額で計上する方が有利です。

特別控除の種類と適用条件

土地売却時に活用できるおもな特別控除には以下のようなものがあります。

  1. 3,000万円特別控除:一定の要件を満たす居住用財産を売却した場合に適用可能
  2.  買換え特例:居住用財産を売却し、新たな居住用財産を購入する場合に適用可能
  3. 相続財産の譲渡所得の特例:相続した土地を相続開始から3年以内に売却した場合に適用可能

たとえば、長年住んでいた実家を5,000万円で売却した場合、3,000万円特別控除を適用すれば、課税対象となる譲渡所得を大幅に減らすことができます。

相続した土地を売る際の税金の注意点

相続した土地を売却する際は、以下の点に特に注意が必要です。

相続により取得した財産で、その取得者が相続税が課税されており、その財産を3年以内に譲渡した場合には、計算の基礎となる取得費に、一定の相続税額が加算されます。

税理士に相談すべきケースとは?

以下のような複雑なケースでは、税理士への相談が特に有効です。

  • 複数の特例や控除が適用可能な場合
  • 事業用資産と居住用資産が混在している場合
  • 相続絡みの売却で、相続税と譲渡所得税の調整が必要な場合
  • 過去の売却損失の繰越控除を活用したい場合

税理士選びのポイントとしては、不動産取引の税務に詳しいこと、相続税の知識も豊富であること、そして定期的に国税庁のセミナーなどに参加し最新の税制に精通していることなどが挙げられます。

土地の相続について検討している方に役立つ、税理士監修の資料をご用意しました。ぜひダウンロードしてお読みください。

土地を売る際のトラブルと対処法:事例から学ぶ

土地売却は、時として予期せぬトラブルに直面することがあります。ここでは、よくあるトラブル事例とその対処法を紹介します。

これらの知識を身につけることで、スムーズな取引の実現に近づけるでしょう。

境界線争いが発生したらどうする?

土地の境界とは自身の土地と他人の土地との境目のことです。境界線争いは、土地の境界線が曖昧になっている際に起こります。たとえば、「塀が境界線だと思ったら違った」「建物や物が境界線を越えている」などのトラブルが考えられるでしょう。

境界線の争いは、土地売却時によく起こるトラブルの一つです。
回避するために以下のような対処をとりましょう。

  • 法務局が管理する登記事項証明書(登記簿謄本)や地積測量図を確認し、正確な境界線を把握する
  • 隣地所有者と話し合いの場を設ける
  • 必要に応じて土地家屋調査士による測量を実施する
  • 合意が得られない場合は、調停や裁判など法的手段を検討する

たとえば、Aさんが土地を売却しようとしたところ、隣地のBさんから「境界線が曖昧で、Aさんの土地が実際より狭いのではないか」と指摘されたケースがありました。この場合、まず古い測量図や境界杭の確認を行い、それでも解決しなかったため、土地家屋調査士に依頼して正確な測量を行いました。

その結果、わずかなずれが見つかりましたが、両者で話し合いを重ね、最終的に合意に至りました。

買主のローンが通らなかった場合の対応

売主・買主ともに土地の売買に同意していたのにも関わらず、買主のローンが通らず、契約が白紙になるというトラブルも考えられるでしょう。
こうしたトラブルを防ぐために、以下の対策を講じておくと安心です。

  • 売買契約書にローン特約条項を盛り込む
  • 買主の資金計画を事前に確認する
  • 複数の買主候補と並行して交渉を進める
  • ローン審査の結果が出るまで、次の買主探しを続ける

実際のケースでは、Cさんが土地を売却する際、買主Dさんのローンが審査中だったため、契約書にローン特約を入れました。
結果的にDさんのローンは通りませんでしたが、特約のおかげで違約金なしで契約を解除でき、その後すぐに新たな買主が見つかりました。

売却後に隠れた瑕疵が見つかったら?

瑕疵(かし)とは、わかりやすくいうと傷や不具合、欠陥などのことです。土地を売却する際には気づけなかったものの、売却後に瑕疵が見つかるというケースもあるでしょう。売却後に土地の瑕疵が発見された場合、売主に契約不適合責任が生じる可能性があります。
対処法は以下のとおりです。

  • 買主からの申し出の内容を詳細に確認する
  • 契約書の契約不適合責任条項を確認する
  • 専門家(弁護士や土地家屋調査士)に相談する
  • 誠意を持って話し合い、必要に応じて補修や補償を行う

たとえば、Eさんが売却した土地で、後日地中から産業廃棄物が見つかったケースがありました。

Eさんは事実を知らなかったものの、「隠れた瑕疵」が売買後に発覚した場合、その責任は売主が取るという決まり(瑕疵担保責任)に基づき誠意を持って対応し、撤去費用の一部を負担することで和解に至りました。

買主は、定められた期間内に隠れた瑕疵を申し出ることで、損害賠償請求、あるいは売買契約の解除を行うことができるため、売主の誠意ある対応が重要です。

相続人全員の同意が得られない場合の解決策

土地の相続人が自身のみの場合は、土地を売却しても相続人との争いは起こらないでしょう。しかし、共同名義で複数の相続人がいる場合は、相続人同士で争いが起こる可能性があります。これは、複数の相続人がいる場合、相続した土地を売却する際に、相続人全員の同意が必要となるためです。
同意が得られない場合の対処法は以下のとおりです。

  • 相続人全員で話し合いの場を設ける
  • 各相続人の意向や事情を丁寧に聞き取る
  • 必要に応じて弁護士や司法書士などの専門家に相談する
  • 調停や裁判など法的手段を検討する

実際のケースでは、Fさん家族が相続した土地の売却を巡って意見が分かれました。話し合いを重ねた結果、売却賛成派が反対派の持分を買い取ることで合意し、その後スムーズに売却が進みました。

ローン残債がある場合の対処法

ローンで購入した土地は、ローン残債があっても売却することは可能です。しかし、ローンを契約している金融機関とのトラブルに発展する可能性があるでしょう。
土地にローン残債がある場合、以下の手順で対応しましょう。

  • 現在のローン残高を正確に把握する
  • 売却予定価格とローン残高を比較する
  • 金融機関に一括返済の相談をする
  • 必要に応じて、売却益からローンを返済する計画を立てる

たとえば、Gさんが5,000万円のローンが残る土地を6,000万円で売却した際には、売却益からローンを完済し、残り1,000万円は自身の手元に残ります。ただし、売却価格がローン残高を下回る場合は、事前に金融機関と相談し、不足分の返済計画を立てる必要があります。

土地活用の選択肢:売る以外の方法も検討しよう

土地を所有していると、「このまま持ち続けるべきか、それとも売却すべきか」と悩むことがあります。しかし、実は売却以外にもさまざまな土地活用の選択肢があります。
ここでは、土地オーナーの皆様に知っていただきたい土地の活用方法をご紹介します。

賃貸経営で安定収入を得る方法

賃貸経営は、土地を売却せずに継続的な収入を得られる人気の活用法です。
主な選択肢には以下のようなものがあります。

活用方法 特徴 初期投資 収益性
アパート 需要が安定、マンションに比べてコンパクトなため管理が比較的容易 比較的大きい 比較的大きい
マンション 高級感、長期的な資産価値 大きい 高い
戸建て賃貸 ファミリー向け、差別化しやすい 比較的大きい 比較的高い
店舗・事務所 法人需要、長期契約が多い 大きい 高い

アパート経営やマンション経営は、土地活用のなかでも代表的な方法です。駅から近い土地や、周辺に商業施設がある土地であれば、アパート経営・マンション経営に向いているでしょう。
一方で、地方などの人口が少ない場所や、すでに多くの賃貸住宅がある土地では、空室のリスクがあり、収益があまり出ないかもしれません。

また戸建て賃貸住宅経営とは、その名のとおり一戸建て住宅を貸し出す事業です。狭い土地や形状の悪い土地などアパートが建てられない土地には戸建て賃貸住宅経営が向いています。

店舗や事務所経営では、駅の近くやオフィス街などの土地に向いているでしょう。

賃貸経営を成功させるポイントは、立地の見極め、需要調査、適切な建築計画、そして効率的な管理運営です。長期的な視点で収支計画を立て、必要に応じて不動産投資の専門家にアドバイスを求めることをおすすめします。

分筆して一部だけ売却するメリットとデメリット

土地の一部だけを売却する「分筆売却」も、検討する価値のある選択肢です。分筆売却を行うメリット・デメリットは以下のとおりです。

メリット

  • 一部を売却しつつ、残りの土地は保有し続けられる
  • 売却益を得ながら、将来の資産価値上昇の可能性も残せる
  • 相続対策として有効(相続税の納税資金を確保しつつ、残りの土地を相続)

デメリット

  • 分筆手続きに費用と時間がかかる(一般的に約10〜50万円、1〜3か月程度、ただし案件によって大きく異なる場合があります)
  • 残った土地の形状によっては利用価値が下がる可能性がある
  • 税務上の長期譲渡所得の特例が適用されなくなる可能性がある

たとえば、200坪の土地を所有している場合、100坪を5000万円で売却し、残りの100坪は賃貸アパートを建設して活用するといった方法が考えられます。この場合、売却益を得つつ、継続的な賃貸収入も確保できます。

分筆売却を検討する際は、残地の活用計画や税金面での影響を十分に検討し、必要に応じて不動産の専門家や税理士に相談することをおすすめします。

土地活用のトレンド:駐車場の上部空間の活用

駐車場として利用されている土地の有効活用、特に、駐車場の上部空間を活用する新しい手法が、土地オーナー様の間で人気を博しています。
この革新的なアプローチは、限られた都市空間を最大限に活用し、駐車場のほか、プラスの収益源を確保できる点が魅力です。

具体的には駐車場をそのままに、上部空間にテナントビルを建設し、店舗として貸し出すという方法です。これにより、土地のオーナー様は、駐車場からの収益に加えて、店舗の賃料も受け取れます。そのほか、駐車場の上部空間を有効活用するメリットは以下のとおりです。

駐車場上部空間活用の主なメリット

  1. 収益性の向上
    ・駐車場収入はそのままに、上部空間からの賃料収入が得られる
    ・土地の単位面積当たりの収益が大幅に増加する
  2. 土地の有効利用
    ・都市部の貴重な空間を立体的に活用できる
  3. 多様なニーズへの対応
    ・地域のニーズに合わせた施設の併設が可能
    ・駐車場利用者以外の集客も見込める
  4. 将来的な選択肢の確保
    ・暫定活用が可能で、将来の再開発の余地を残せる

上部空間の活用は、都市計画の観点からも注目されています。コンパクトシティの概念に沿った効率的な土地利用として、自治体から評価される事例も増えている状況です。新しい土地活用をご検討中の方は「フィル・カンパニー」にご相談ください。

土地を売る時に成功するための戦略とチェックリスト

土地売却は、多くの土地オーナー様にとって人生の一大イベントです。できるだけ高値で、かつスムーズに売却するためには、適切な戦略と準備が欠かせません。

ここでは、成功事例から学ぶ効果的な戦略と、実践的なアドバイスをご紹介します。

高値売却を実現した3つの共通点

土地の高値売却に成功した事例を分析すると、以下の3つの共通点が浮かび上がります。

1. 適切な価格設定
・複数の不動産会社から査定を受け、市場価値を正確に把握
・周辺の取引事例や将来の開発計画なども考慮した戦略的な価格設定

2. 効果的な販促方法
・土地の特徴や魅力を明確に伝えるキャッチコピーの作成
・複数の販売チャネル(不動産ポータルサイト、SNS、チラシなど)の活用

3. タイミングの見極め
・市場動向や季節要因を考慮した売り出しタイミングの選択
・買主のニーズが高まる時期に合わせた販売

たとえば、東京都内の駅徒歩10分にある200坪の土地を所有していたAさんは、複数の不動産会社から査定を受けたあと、市場価値を慎重に分析し、適切な価格設定を行いました。
その際、周辺の再開発計画を効果的に伝えるキャッチコピーを用意しました。その結果、比較的短期間で希望に近い価格での売却に成功しました。

売却期間を短縮できた工夫とは?

売却期間の短縮は、経費削減や次の計画への移行を早めるために重要です。
以下のような工夫をするとよいでしょう。

1. 土地の魅力向上策
・整地や不要物の撤去による見栄えの改善

2. 戦略的な広告展開
・ターゲット層を明確にしたピンポイントな広告出稿
・SNSの活用

3. 柔軟な価格設定と交渉
・市場反応に応じた迅速な価格調整
・買主のニーズに合わせた柔軟な条件提示(例:決済日の調整、建物解体の負担など)

実際に、大阪府の住宅地で400坪の土地を売却したBさんは、当初の反応が芳しくなかったため、市場動向を再分析し適切な価格調整を行いました
その結果、物件の魅力が向上し、見学者が増加。比較的短期間で成約に至りました。

土地の魅力を高める:売却前にできる工夫

土地の売却前の工夫次第で、土地の価値を大きく高められる場合があります。

以下は、投資対効果の高い改善策です。

改善策 効果 概算費用
整地・除草 見栄えアップ、安全性向上 数万円〜数百万円
(広さや立地・現況によって大きな差がある)
境界確定測量 トラブル防止、信頼性向上 35~45万円程度
(民有地のみと接している場合)
土壌汚染調査 買主の不安解消、スムーズな取引 10万~30万円程度
接道部分の整備 利便性向上、印象アップ 20万円~30万円程度
建築プラン作成 土地の可能性を視覚化 40万円~100万円程度(ハウスメーカーの場合)

たとえば、埼玉県の住宅地で300坪の更地を売却したCさんは、50万円をかけて境界確定測量を実施しました。

その結果、当初の査定額より1000万円高い価格で、わずか2ヶ月で売却に成功しました。

専門家のサポートを受けるタイミングと方法

土地売却のプロセスでは、適切なタイミングで専門家のサポートを受けることが重要です。
以下は、各段階で相談すべき専門家と、そのポイントです。

1. 売却検討段階
・不動産鑑定士:正確な市場価値の把握
・税理士:譲渡所得税の試算、節税策の検討

2. 売り出し準備段階
・宅地建物取引士:適切な媒介契約の選択、重要事項の確認
・土地家屋調査士:境界確定、測量の実施

3. 契約・決済段階
・弁護士:契約書の確認、トラブル対応
・司法書士:所有権移転登記の手続き

土地を売るという決断はとても大きなものです。一人で悩むのではなく、土地売却の実績が豊富で、親身に相談に乗ってくれる専門家に相談し、ひとつひとつ納得しながら進めていくことが重要です。

また土地を売る決断をする前に、土地活用という選択肢も検討するのがおすすめです。アパート経営やマンション経営などの賃貸経営をすれば、遊休地となっている土地で収益を獲得できます。
また、駐車場の上部空間を有効活用した土地活用なども注目されています。

土地活用の先を見通せる資料をご用意いたしました。ぜひ本記事と合わせてお読みいただき、お持ちの土地のもつ可能性についても検討してみてください。

この記事の監修者

垣内 典之

株式会社 PROPUP 代表取締役/一級建築士

石川県金沢市出身。千葉大学大学院修了(建築学)。建築設計監理からキャリアをスタート、環境性能に係る設計審査業務、企業不動産(CRE)戦略、ファシリティマネジメント(FM)コンストラクションマネジメント(CM)等を経験。建築・不動産・ITを横断的に繋げ、高次元のプロパティ・マネジメントを実現するべくPROPUPを設立。

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