フィル・パークマガジン 賃貸物件の修繕費|土地オーナーが押さえるべき全ポイント
賃貸物件の修繕費|土地オーナーが押さえるべき全ポイント
アパート経営を検討する上で、避けて通れないのが賃貸物件の修繕です。適切な修繕は物件の価値を維持し、長期的な収益を確保するために不可欠です。しかし、その費用や負担の考え方は複雑で、多くの土地オーナー様が頭を悩ませています。本記事では、賃貸物件の修繕費に関する重要な知識を網羅的に解説。安定した経営と収益の最大化につながる情報をお届けします。
賃貸物件における修繕費の基本
賃貸物件の修繕費は、物件の価値維持と安定した収益確保に直結する重要な要素です。適切な修繕計画と費用管理が、長期的な不動産経営の成功を左右します。本項では、修繕費の定義から重要性まで、土地オーナー様が押さえるべき基本的な知識を解説します。
修繕費の定義と範囲
修繕費とは、賃貸物件の機能や価値を維持・回復するために必要な費用のことを指し、大きくは経常的な修繕費、大規模修繕費に分けられます。経常的な修繕費とは、共用部の電球交換、共用ドアのメンテナンス等、日常的で軽微な修繕に必要な費用を指します。
大規模修繕費とは、国土交通省の「賃貸住宅標準契約書」によると以下のように幅広く設定されています。
- 建物の主要構造部分(壁、柱、床、はり、屋根等)の修繕
- 共用部分の修繕(階段、廊下、エレベーター等)
- 専有部分の設備(給排水、電気、ガス設備等)の修繕
- 外壁の塗装や防水工事
- 建具(ドア、窓等)の修理や交換
これらの項目は、物件の種類や築年数によって優先順位や頻度が変わってきます。例えば、築10年以上の物件では外壁塗装や給排水管の交換が必要になる可能性が高くなります。一方、新築物件では設備の初期不良対応が中心となるでしょう。
修繕の重要性と経営への影響
適切な修繕は、賃貸物件経営において極めて重要な役割を果たします。その重要性は、以下の点に集約されます。
- 物件価値の維持・向上:定期的な修繕により、物件の劣化を防ぎ、資産価値を保つことができます。
- 入居者満足度の向上:快適な住環境を提供することで、入居者の満足度が上がり、長期入居や口コミによる新規入居者の獲得につながります。
- 空室率の低減:メンテナンスの行き届いた物件は、競合物件との差別化が図れ、空室率の低減に寄与します。
- 長期的な収益の安定:計画的な修繕により、大規模な修繕や建て替えのリスクを軽減し、安定した収益を確保できます。
修繕費の見積もりと計画の立て方
修繕費の適切な見積もりと計画立案は、安定した賃貸経営の要となります。一般的に、年間の経常的な修繕費は賃料収入の10〜20%程度が目安となります。大規模修繕は予め見積を取得し、預貯金や積立、ローンの活用などで予算を確保しておくことが大切です。これらの金額は、物件の状況によって大きく異なります。
効果的な修繕計画を立てるためには、以下のステップを踏むことをおすすめします。
- 物件の現状評価:専門家による建物診断を行い、現在の状態を正確に把握します。
- 長期修繕計画の作成:今後10〜20年の修繕スケジュールを立てます。
- 優先順位の設定:緊急性や重要性に基づいて修繕項目の優先順位を決めます。
- 予算の割り当て:各修繕項目に対して適切な予算を設定します。
- 定期的な見直し:年1回程度、計画を見直し、必要に応じて調整します。
次項では、具体的な修繕費の種類と相場について詳しく解説します。適切な予算設定のためには、各修繕項目にかかる費用の目安を知ることが重要です。また、「5.修繕費を抑えるための戦略と工夫」では、修繕費を抑えるための戦略についても触れますので、コスト管理に悩むオーナー様はぜひ参考にしてください。
賃貸物件の修繕費の種類と相場
賃貸物件の修繕費は、種類や規模によって大きく異なります。一般的な項目とその費用相場を把握し、計画的な経常的修繕を行うことで、突発的な出費を回避できます。本項では、主要な修繕項目とその費用目安を詳しく解説し、効果的な修繕費管理のポイントをお伝えします。
原状回復工事:項目と費用相場
賃貸物件の内装修繕は、入居者の快適性に直結する重要な要素です。退去時のタイミングで適切なメンテナンスを行うことで、物件の価値を維持し、長期的な収益確保につながります。
以下に、主な内装関連の修繕項目と費用相場をご紹介します。
- 壁紙張替え(6畳間):5〜8万円
- フローリング張替え(6畳間):10〜15万円
- 畳の表替え(1畳):5,000〜8,000円
- 襖の張替え(1枚):3,000〜5,000円
- 網戸の張替え(1枚):2,000〜4,000円
ワンルームマンションで軽微な損耗の場合、総額で15〜20万円程度が一般的です。なお原状回復工事は、前入居者の契約期間が短く、著しい経年損耗等が見られない場合などは、実施を見送る場合もあります。
大規模修繕:設備関連の修繕項目と費用相場
賃貸物件の設備修繕は、入居者の生活に直接影響を与える重要な要素です。適切なタイミングでの修繕や交換を行うことで、トラブルを未然に防ぎ、入居者満足度の向上につながります。以下に、主な設備関連の修繕項目と費用相場をご紹介します。
給湯器の交換は、比較的高額な修繕項目の一つです。一般的な賃貸物件で使用される16号タイプの給湯器の交換費用は、15〜25万円程度です。エアコンの交換も同様に高額で、6畳〜8畳用の一般的なモデルで10〜15万円程度かかります。これらの設備は、使用頻度が高く、故障時の影響が大きいため、計画的な交換が重要です。
- 給湯器交換(16号タイプ):15〜25万円
- エアコン交換(6〜8畳用):10〜15万円
- ユニットバス交換:50〜80万円
- システムキッチン交換:30〜50万円
- 洗面台交換:10〜20万円
設備の寿命は使用状況によって異なりますが、一般的な目安として、給湯器は10〜15年、エアコンは10〜12年、ユニットバスは15〜20年程度で交換を検討する必要があります。ただし、定期的なメンテナンスを行うことで、寿命を延ばすことも可能です。例えば、エアコンの定期清掃(1〜2万円程度)を行うことで、性能維持と寿命の延長が期待できます。
大規模修繕:外装・防水関連の修繕項目と費用相場
賃貸物件の外装・防水関連の修繕は、建物の安全性と資産価値の維持に直結する重要な要素です。適切なタイミングで大規模修繕を行うことで、建物の長寿命化と入居率の向上につながります。以下に、主な外装・防水関連の修繕項目と費用相場をご紹介します。
外壁塗装は、建物の美観を保つだけでなく、雨漏りや劣化を防ぐ重要な役割があります。一般的な2階建てアパート(延べ床面積200㎡程度)の外壁塗装費用は、150〜250万円程度です。屋根の塗装や防水工事も重要で、同規模の建物で50〜100万円程度かかります。これらの大規模修繕は、10〜15年に一度のペースで行うことが推奨されています。
- 外壁塗装(2階建てアパート):150〜250万円
- 屋根塗装・防水工事:50〜100万円
- バルコニー防水工事:30〜50万円
- 外構工事(駐車場・フェンス等):50〜100万円
外装・防水関連の修繕は高額になりがちですが、計画的に修繕費を準備することで、突発的な大規模出費を避けることができます。また、定期的な点検と早期の補修を行うことで、大規模修繕の頻度や費用を抑えることも可能です。例えば、年1回の屋根点検(3〜5万円程度)を行うことで、雨漏りなどの重大な問題を早期に発見し、対処できます。
経常的修繕:修繕項目と費用相場
計画的な経常的修繕を行うことで、大規模修繕による突発的な出費を回避したり遅らせる可能性が高まります。例えば、以下のような項目と費用が想定されますので、物件の状態を見極め想定される費用を把握しておくことが大切です。
- 電球交換:一箇所あたり5千円〜
- ドア調整:3万円〜
- エントランスタイルリペア:3万円〜 等
修繕費の相場を踏まえた予算立ての重要性
これまで見てきた修繕費の相場を踏まえ、計画的な予算立ての重要性について考えてみましょう。突発的な修繕に備えるためには、年間の家賃収入の10〜20%程度を目安として経常的修繕費を確保することが一般的です。例えば、月額家賃5万円のアパート1室の場合、年間6〜12万円程度の修繕費を想定することになります。
大規模修繕については長期修繕計画に基づき、予め施工会社から見積もりを取得し予算化、事業計画に入れ込んだ上で賃料設定をすることが大切です。
ただし、物件の築年数や状態によって必要な修繕費は大きく異なるため、一律の基準ではなく、個別の状況に応じた予算立てが重要です。例えば、築10年以上の物件では、給湯器やエアコンの交換時期が近づいているため、より多くの予算が必要になる可能性があります。また、入居率や家賃収入の変動も考慮に入れ、柔軟な資金計画を立てることが大切です。
- 年間家賃収入の10〜15%を修繕積立金として確保
- 物件の築年数や状態に応じて積立額を調整
- 5年、10年単位の長期的な修繕計画を立てる
- 定期的な点検結果を踏まえた修繕計画の見直し
修繕費の予算立ては、単なる費用管理ではなく、物件の価値維持と長期的な収益確保のための重要な投資戦略です。適切な修繕計画を立てることで、突発的な出費を抑えつつ、物件の競争力を維持することができます。次項では、貸主と借主の修繕費負担の考え方について詳しく解説しますので、予算立ての際の参考にしてください。
貸主と借主の修繕費負担の考え方
賃貸物件については、原則修繕費はオーナー負担です。その上で、賃貸借契約に基づき適切な費用負担を明示することで、トラブルを予防し、長期的で良好な賃貸関係を維持できます。ここでは、修繕費の負担に関する基本的な考え方と、実際の運用方法について詳しく解説します。
修繕費負担の法的根拠と基本原則
賃貸物件の修繕費負担については、基本的な原則として、共用部の経常的修繕、大規模修繕ともに貸主の負担です。専有部の経常的修繕(電球交換、エアコンフィルター清掃など)は借主負担となります。また、借主の故意・過失による損傷の修繕費は借主の負担となる事が一般的です。
民法第606条では、賃貸人(貸主)は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕を行う義務があると規定しています。一方、借地借家法第27条では、借主の故意・過失による損傷の修繕費用は借主の負担とすることができるとしています。
これらの法律に基づき、一般的な修繕費負担の基準は以下のように考えられています。
- 建物の基本構造に関わる修繕(屋根、外壁、給排水管等):貸主負担
- 設備の経年劣化による修繕(給湯器、エアコン等):貸主負担
- 専有部の日常的な使用に伴う損耗の修繕(壁紙、畳の汚損等):貸主負担
- 借主の故意・過失による損傷の修繕:借主負担
ただし、これらの基準は絶対的なものではなく、個々の契約内容や物件の状況によって異なる場合があります。そのため、賃貸契約時に修繕費負担について明確に取り決めておくことが重要です。
これらの判断基準は、国土交通省が公表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を参考にしています。このガイドラインでは、「経年変化」と「通常損耗」は貸主負担、「借主の故意・過失」による損耗は借主負担と明確に区分しています。
ただし、実際の判断は個々のケースによって異なる場合があります。例えば、入居期間が長期にわたる場合は、通常であれば借主負担となる項目でも、貸主が一部負担するなど柔軟な対応が求められることもあります。
修繕費負担に関する契約時の注意点
修繕費負担をめぐるトラブルを防ぐためには、賃貸契約時に明確な取り決めを行うことが極めて重要です。以下に、契約時に押さえるべきポイントをまとめます。
- 修繕費負担の基本的な考え方を契約書に明記する
- 具体的な修繕項目ごとの負担区分を詳細に記載する
- 経年劣化や通常損耗の定義を明確にする
- 借主の故意・過失の判断基準を明確にする
- 長期入居の場合の特別な取り決めがあれば記載する
また、最近では「フリーレント」や「敷金ゼロ」などの条件で借主を募集するケースも増えています。こうした場合、通常は借主負担となる修繕費を貸主が負担するなど、従来の慣習とは異なる取り決めをすることもあります。このような特殊な条件を提示する場合は、その内容を契約書に明確に記載し、双方の理解を得ることが重要です。
修繕費負担をめぐるトラブル事例と解決策
修繕費負担に関するトラブルは、賃貸経営において非常に多く発生しています。以下に、よくあるトラブル事例とその解決策を紹介します。
- 壁紙の変色トラブル
事例:退去時に壁紙の変色が見つかり、借主に全額負担を求められたケース
解決策:経年変化による変色か、借主の過失による変色かを専門家に判断してもらい、適切な負担割合を決定する - 設備の故障トラブル
事例:エアコンが故障し、貸主が修理費用の全額を借主に請求したケース
解決策:故障の原因が経年劣化か借主の不適切な使用かを確認し、適切な負担割合を決定する - 原状回復費用のトラブル
事例:退去時に高額な原状回復費用を請求されたケース
解決策:国土交通省のガイドラインに基づき、経年変化や通常損耗の部分は貸主負担とし、それ以外の部分のみを借主負担とする
これらのトラブルを未然に防ぐためには、入居時と退去時に詳細な物件の状態チェックを行い、写真や動画で記録を残すことが有効です。
さらに、修繕費負担に関するトラブルが発生した場合は、先ずは入居者と契約書等を確認しながら、話し合いの場を持つ事が大切です。中立的な第三者の意見を聞くことで、公平な解決につながる可能性が高まります。
賃貸物件の修繕費負担は、単なるコストの問題ではなく、物件の価値維持や入居者満足度の向上につながる重要な要素です。貸主と借主が適切に負担を分担し、長期的な視点で物件管理を行うことが、持続可能な賃貸経営の鍵となるでしょう。
計画的な修繕費の確保の重要性と方法
賃貸物件の安定経営には、計画的な修繕費の確保が不可欠です。長期的な視点で資金を管理することで、突発的な修繕にも対応できる体制を整えられます。適切な積立方法を知り、実践することで、物件の価値を維持しつつ、安定した収益を確保できるでしょう。
修繕費確保の重要性と効果
計画的な修繕積立は、賃貸物件経営における財務健全性の要です。突発的な修繕費用に振り回されることなく、長期的な視点で物件管理を行うことができます。
修繕積立の主な効果には以下のようなものがあります。
- 突発的修繕への対応力向上
- 物件の価値維持と長寿命化
- 入居者満足度の向上と長期入居の促進
- 将来的な資金繰りの安定化
特に、築年数が経過するにつれて修繕費用は増加傾向にあります。国土交通省の調査によると、築30年を超える賃貸マンションでは、年間の修繕費用が新築時の約2倍になるケースも珍しくありません。このような状況に備えるためにも、計画的な積立は重要なのです。
適切な経常的修繕費の算出方法
修繕費の算出には、物件の特性や築年数、立地条件などを考慮する必要があります。一般的な算出方法として、以下の3つのアプローチがあります。
- 延床面積による算出:1㎡あたり月額200〜300円程度を目安に設定
- 賃料収入による算出:月額賃料の5〜10%程度を積立
- 専門機関による長期修繕計画に基づく算出:最も正確だが、費用がかかる
例えば、延床面積100㎡のアパートの場合、月額2万円〜3万円程度の修繕費が目安となります。ただし、これはあくまで一般的な目安であり、物件の状況に応じて適切に調整する必要があります。
長期修繕計画の策定と活用
効果的な修繕積立を行うためには、長期修繕計画の策定が欠かせません。長期修繕計画は、今後20〜30年にわたる修繕項目とその時期、概算費用を示したロードマップです。これにより、さらに精緻な積立金額の算出と、計画的な修繕の実施が可能になります。
長期修繕計画の主なメリットには以下のようなものがあります。
- 修繕時期の最適化による費用削減
- 突発的な大規模修繕の回避
- 入居者への長期的な住環境改善の提示
- 金融機関からの融資を受ける際の信用力向上
定期的な見直しと更新を行うことで、常に最適な計画を維持することが重要です。
長期修繕計画の策定には、建築や設備の専門知識が必要となるため、専門家への相談を検討するのも一案です。初期費用はかかりますが、長期的利益は大きいと言えるでしょう。
以上のように、計画的な修繕積立は賃貸物件経営の要となります。適切な積立金額の設定、効果的な資金運用、税務上の留意点、そして長期修繕計画の活用を通じて、物件の価値を維持しつつ、安定した収益を確保することができるのです。次項では、実際の修繕費を抑えるための戦略と工夫について詳しく見ていきましょう。
修繕費を抑えるための戦略と工夫
賃貸物件の修繕費を効果的に抑えるには、予防的なメンテナンスと賢い選択が鍵です。適切な施工業者の選定や定期的な点検、入居者への適切な使用方法の周知など、様々な戦略を組み合わせることで、長期的なコスト削減が可能になります。ここでは、土地オーナー様が実践できる具体的な修繕費削減のテクニックをご紹介します。
経常的修繕:定期的なチェックとメンテナンス
修繕費を抑える最も効果的な方法の一つが、予防的メンテナンスです。小さな問題を早期に発見し対処することで、大規模な修繕を回避できます。具体的な予防的メンテナンスの例として、以下のような取り組みが挙げられます。
- 定期的な建物の点検(年2回程度)
- 配管の洗浄(3-5年ごと)
- 共用部エアコンのフィルター清掃(年1回)
- 排水溝の清掃(年1〜2回)
これらの定期的なメンテナンスを実施することで、突発的な故障や劣化を防ぎ、修繕費の抑制につながります。電球やフィルターなどの消耗品は予備品を確保しておき、不具合があればすぐに交換出来るようにしておくことで、入居者の満足度向上にも貢献し、長期的な入居率の維持にもつながるでしょう。
適切な施工業者の選定
修繕工事を行う際、適切な施工業者を選ぶことは非常に重要です。安価な業者を選ぶことでコストを抑えられると思われがちですが、必ずしもそうとは限りません。むしろ、技術力や信頼性の高い業者を選ぶことで、長期的には修繕費を抑えられる可能性が高くなります。
施工業者を選ぶ際のポイントとして、以下の点に注目しましょう。
- 実績と評判(口コミやレビューを確認)
- 保証内容(長期保証があるかどうか)
- アフターサービスの充実度
- 見積もりの透明性と精度
- 使用する材料の品質
実施時には相見積もりをとり信頼できる業者を選ぶことで、手間やコストの二度払いを避けることができるのです。
高品質な材料の使用
修繕に使用する材料の品質は、修繕の耐久性に大きく影響します。初期コストは高くなる可能性がありますが、高品質な材料を使用することで、長期的には修繕の頻度が下がり、トータルコストを抑えることができます。
高品質材料を選ぶ際のポイント
- 耐久性(使用年数の長さ)
- メンテナンス性(清掃や補修のしやすさ)
- 環境への配慮(エコ製品の選択)
- 省エネ性能(断熱材や省エネ設備など)
ただし、すべての箇所に最高品質の材料を使用する必要はありません。物件の特性や使用頻度に応じて、適切な品質の材料を選択することが重要です。
入居者への適切な使用方法の周知
修繕費を最低限に抑えるうえで、入居者の協力は欠かせません。適切な使用方法や日常的なケアを入居者に周知することで、不要な劣化や損傷を防ぐことができます。多くの場合、入居者は賃貸物件の適切な使用方法を十分に理解していないことがあります。
効果的な周知方法として、以下のような取り組みが考えられます。
- 入居時のオリエンテーションの実施
- 使用マニュアルの作成と配布
- 定期的な注意喚起(メールやチラシなど)
- トラブル事例とその対処法の共有
特に注意が必要な点として、結露対策、排水口の使用方法、共用部のエアコンのフィルター清掃などが挙げられます。これらの適切な使用方法を周知することで、カビの発生や水漏れなどのトラブルを未然に防ぐことができます。
計画的な設備更新
設備の老朽化は避けられませんが、計画的に更新することで修繕費を最適化できます。突発的な故障による緊急修理は、通常の修理と比べてコストが高くなる傾向があります。また、古い設備を使い続けることで、エネルギー効率が悪くなり、結果的にランニングコストが上がってしまうこともあります。
計画的な設備更新のポイント
- 各設備の耐用年数を把握し、更新時期を事前に計画
- 省エネ性能の高い設備への更新を検討
- 複数の設備を同時に更新することでコスト単価を抑制
- 税制優遇措置や補助金制度の活用
初期投資は必要ですが、長期的には大きなコスト削減につながります。
賢い選択で修繕費を最適化
修繕費を抑えるための戦略と工夫は、単に目先のコストを削減するだけではありません。長期的な視点で物件の価値を維持し、安定した収益を確保するための重要な取り組みです。ここで紹介した5つの戦略を適切に組み合わせることで、修繕費の最適化が可能になります。
重要なのは、これらの戦略を個別に実施するのではなく、総合的なアプローチとして捉えることです。例えば、予防的メンテナンスと入居者への周知を組み合わせることで、より効果的に修繕費を抑制できます。また、高品質な材料の使用と計画的な設備更新を連動させることで、長期的な資産価値の向上につながります。
最後に、修繕費の管理は賃貸経営の一側面に過ぎません。全体的な経営戦略の中で、適切なバランスを取りながら実施していくことが重要です。定期的に修繕費の分析を行い、効果を検証しながら、常に最適な方法を模索し続けることが、成功する賃貸経営の鍵となるでしょう。
建て替えという選択肢も
築年数が経過したアパートやマンションでは、大規模修繕か建て替えかの判断に直面することがあります。特に築30年以上の物件では、修繕費用が高額になる一方で、修繕後の収益性向上が見込めないケースも少なくありません。
建て替えは初期投資が大きいものの、最新の設備や間取りを採用でき、家賃収入の増加や物件価値の向上が期待できます。また、耐震性能の向上や省エネ設備の導入により、入居者の安全性と快適性を高められます。建て替えを検討する際は、立地条件、市場動向、資金計画を総合的に判断し、長期的な収益性を見据えた決断が必要です。
次項から、大規模修繕か立て替えか、判断する際に知っておくべきことをご紹介します。
避けられない空室リスク
大規模修繕や建て替え工事では、空室による収入減少は避けられません。工事期間中は家賃収入が得られないだけでなく、既存入居者との契約解除や移転補償費用も発生する可能性があります。さらに、工事完了後も新規入居者の確保には時間がかかることが予想されます。
このリスクを軽減するためには、段階的な工事計画の立案や、入居者への早期告知と丁寧な説明が重要です。また、工事期間中の収入減少に備えた資金計画や、新規入居者確保のための営業戦略を事前に準備することで、空室リスクの影響を最小限に抑えることができます。
全体修繕の場合、費用は高額
大規模修繕は、回を重ねる事に劣化の進度と項目増が影響して費用が高額化し、投資回収バランスの判断が難しくなる傾向にあります。また、外壁塗装、屋根防水、給排水管の更新、設備の交換など、複数の工事が同時に必要となり、費用は数千万円から億単位に及ぶことがあります。予期せぬ問題が発見された場合、追加工事が必要となり、当初の見積もりを超過することも珍しくありません。
このため、修繕積立金の確保や金融機関からの借入れなど、綿密な資金計画が不可欠です。高額な費用に見合う収益性が見込めない場合は、建て替えや売却という選択肢も視野に入れる必要があります。
市場調査と差別化の戦略
効果的な大規模修繕や建て替えを実現するには、徹底的な市場調査と差別化戦略が重要です。周辺エリアの賃貸物件の家賃相場、設備水準、入居率などを詳細に分析し、競合物件との差別化ポイントを明確にする必要があります。
例えば、省エネ設備の導入、防音性能の向上、共用施設の充実化など、物件の付加価値を高める要素を戦略的に組み込むことで、競争力を高めることができます。また、地域特性や将来の開発計画なども考慮し、長期的な視点での投資判断が求められます。これらの調査結果を基に、的確な投資計画を立案することが成功への鍵となります。
入居者のニーズ特化型住宅
今日の賃貸市場では、特定のニーズに特化した住宅づくりが注目されています。建て替えを検討する際には、将来を見据えてどのような住宅を立て替えるのが良いかも幅広くリサーチしましょう。
日本ではここ数年、働き方改革やワーク・ライフ・バランスの推進によって、生活スタイルや価値観が変化してきました。就業時間や制度の見直しによって増えた自分の時間を、好きな趣味に使う人が増えたり、時間や場所にとらわれない働き方をするような人も増えてきています。
多様な価値観に合わせて、在宅ワークが中心の人のためのコワーキングスペース付き住宅、ペットとともに暮らしたい人のためのテラスや屋上スペースのある住宅、音楽や映画を楽しみたい人のためのホームシアターや音響設備を備えた住宅など、様々な住宅が誕生しています。
「車やバイクの保管場所として」はもちろん、「週末だけのセカンドハウスとして」「趣味や息抜きの場として」「テレワーク時の仕事場として」など、自分のライフスタイルに応じてさまざまな使い方のできる賃貸ガレージハウスの人気が高まってきたのも同じ理由です。
愛車を家族のように想っている車やバイクの愛好家にとっては、ひとつ屋根の下で過ごせるガレージハウスは夢のような空間です。建物内に車を格納できる賃貸ガレージハウスであれば防犯ニーズもしっかりと満たします。車と暮らせる安心感、使用用途の幅広さ、また賃貸ならではの気軽さなどから、需要が高い状態が続いている人気の住宅です。
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垣内 典之
株式会社 PROPUP 代表取締役/一級建築士