フィル・パークマガジン マンションの固定資産税を完全解説!5000万までのマンションを例に計算方法から軽減措置まで詳しく紹介
マンションの固定資産税を完全解説!5000万までのマンションを例に計算方法から軽減措置まで詳しく紹介
固定資産税は、マンションオーナーにとって毎年の大きな負担となる税金です。しかし、その仕組みや計算方法が複雑なため、「いくら払うことになるのか」「税額が急に上がることはないのか」など、オーナーが抱える疑問や不安は尽きません。
本記事では、マンションの固定資産税について、基本的な仕組みから税額変動のメカニズム、節税のための軽減措置の活用方法まで、プロの視点でわかりやすく解説します。
自身の置かれた状況に合わせて税負担を適切に管理し、マンション経営を安定的に行うための知恵が満載です。
固定資産税対策の第一歩を、今日から始めましょう。
固定資産税の基本知識
固定資産税は、土地や建物を所有している人が支払う必要がある税金です。しかし、「何に対して」「いくら」払うのかが分かりにくいと感じる方も多いでしょう。ここでは、固定資産税の基本的な仕組みをわかりやすく解説します。
固定資産税とは何か?その基本を理解する
固定資産税は、土地や家屋(建物)、償却資産(事業用の設備など)といった「固定資産」を所有する人に、「市町村(東京都23区の場合には、東京都)」が毎年課税する税金です。土地および家屋の固定資産税を支払う義務があるのは、毎年1月1日(賦課期日)現在で、その固定資産の所有者として固定資産課税台帳に登録されている人です。これは土地と家屋の両方に適用されるルールです。仮に1月2日以降に所有権が移転しても、その年度の固定資産税は1月1日時点の所有者に全額課税されます。
税額は固定資産の価値に応じて決まりますが、その評価額は自治体によって算出されます。土地であれば公示地価などを基に、家屋なら再建築価格を基に「課税標準額(税額の基礎となる価格)」が決められ、そこに標準税率(1.4%)をかけて税額が計算されます。
固定資産税と都市計画税の違いを知ろう
固定資産税と合わせて納付する「都市計画税」も、固定資産の所有者が支払う税金の一種です。都市計画税は、都市計画事業や土地区画整理事業など、まちづくりに必要な費用を賄うために課税されます。
税率は自治体によって異なりますが、都市計画税の上限は0.3%とされています。つまり、固定資産税が年1.4%なら、都市計画税は最大で年0.3%です。両者を合わせると、固定資産にかかる税負担は最大で1.7%になります。
ただし、都市計画税を課税していない自治体もあるため、一概に「固定資産を持っていれば必ず払わなければならない」とはいえません。自分の土地が都市計画税の対象になるかどうかは、自治体の税務担当に確認するのが確実です。
誰がいつ固定資産税を支払うのか?
先ほども触れましたが、固定資産税や都市計画税は、毎年1月1日時点の所有者に課されます。新しく固定資産を取得した場合は、その年の翌年度から課税が始まります。
具体的なスケジュールは以下のようになります。
- 1月1日:固定資産の価格を決定
- 4月~5月:納税通知書の発送(自治体により異なる)
- 6月、9月、12月、2月:固定資産税・都市計画税の納付(年4回)
納付は分割払いが一般的ですが、一括払いを選択することも可能です。資金的な余裕がある場合は、一括で支払うことで納付忘れを防ぐことができます。
納税通知書には、納税者の氏名や住所、物件の所在地、課税標準額、税額などが記載されています。金額に誤りがないかしっかり確認し、期限までに指定の方法で納めるようにしましょう。
実際の固定資産税の支払い方法については、さまざまな選択肢があります。現金払い、口座振込の他、クレジットカード払い、ペイジー払い、電子マネー、スマホ決済など、様々な方法が利用可能です。自身の生活スタイルに合わせて適切な支払い方法を選択しましょう。
固定資産税は、自治体の財源として重要な役割を担っています。土地や建物を所有する以上、税金の義務から逃れることはできません。税の基本を理解し、計画的に納税することが大切です。
マンションの固定資産税の計算方法
マンションを購入(区分所有)すると、物件の価格に応じた固定資産税を毎年支払う必要があります。でも、いざ自分が払う税額を計算しようとすると、評価額や税率など専門的な言葉が出てきて戸惑ってしまう人も多いのではないでしょうか。ここでは、マンションの固定資産税の具体的な計算方法を詳しく見ていきましょう。
新築マンションと中古マンションの固定資産税の計算方法
新築マンションの場合、購入した年は固定資産税が課税されず、翌年から課税が始まります。税額は、マンションの「課税標準額」に標準税率(1.4%)をかけて算出されます。ただし、新築マンションには固定資産税の軽減措置が適用され、以下の条件を満たす場合、5年間は税額が2分の1に減額されます。
- 居住部分の割合が全体の床面積の2分の1以上
- 居住部分の床面積が40㎡以上280㎡以下
また、認定長期優良住宅の場合は、軽減措置の期間が7年間に延長されます。
一方、中古マンションは、購入した年の翌年から、前所有者の評価額をもとに課税されます。ただし、評価替えが行われる年(3年ごと)は、新しい評価額で税額が計算されます。
固定資産税評価額と課税標準額の違い
固定資産税評価額とは、自治体が、あらかじめ評価方法が定められた固定資産評価基準に基づいて評価した金額のことです。土地は路線価や公示地価をもとに、建物は再建築価格をもとに算出されます。
一方、課税標準額は、その評価額をもとに税額を計算するための基準となる金額です。住宅用土地の場合、一定の範囲で評価額から減額される仕組みになっており、例えば小規模住宅用地では評価額の6分の1、一般住宅用地では3分の1に減額されます。また、マンションなど家屋の場合には、課税標準額は一部特例を除き、固定資産税評価額となります。
マンションの所有に伴う固定資産税の計算は複雑なので、不明な点があれば不動産の専門家に相談してみるのも良いでしょう。各種の優遇措置や軽減措置など、税金面でのアドバイスをしっかりとしてもらうことで、無理のない資産運用につなげていけるはずです。
固定資産税を軽減する方法
マンションを所有していると、毎年少なからず固定資産税の支払いに頭を悩ませているオーナーの方も多いのではないでしょうか。でも実は、税法上のいくつかの特例を活用することで、その税負担を大幅に軽減できる可能性があります。ここでは、マンションオーナーが知っておくべき固定資産税の軽減措置について、詳しく解説していきましょう。
固定資産税の軽減措置とは?
固定資産税の軽減措置とは、一定の要件を満たした住宅や土地について、税負担を減らすために設けられた特例制度のことを指します。新築マンションやバリアフリー改修を行った住宅、そして居住用の土地など、いくつかの類型ごとに軽減のための基準が定められています。
軽減の具体的な内容は、固定資産税の課税標準額を一定割合減額するというものです。つまり、税額計算の基となる課税標準額を引き下げることで、結果的に税金を安くするわけですね。適用期間や軽減割合は、物件の種類や自治体によって異なりますが、最大で課税標準額の5割から6割程度が減額されるケースもあります。
マンションの築年数による固定資産税の軽減シミュレーション
マンションの固定資産税は、新築時点の評価額をピークに、その後は築年数に応じて徐々に減少していくのが一般的です。これは、建物の経年劣化に伴い資産価値が下がっていくためです。では、具体的にどのくらいのペースで税額が下がっていくのかイメージしてみましょう。
下のグラフは、新築時の固定資産税の年税額を100%とした場合の、築年数ごとの税額の推移を示したものです。
このように、築10年で新築時の6割程度、築20年で4割程度、築30年では3割程度まで税額が下がるのが一般的な傾向だといえます。もちろん、立地条件や建物の状態によって減価のスピードは異なりますが、中古マンションの購入を検討する際は、この軽減効果も視野に入れておくとよいでしょう。
軽減措置の活用方法とそのメリット
住宅用地に適用される課税標準額は、一般の土地よりも大幅に低く設定されています。これは、住宅用地の場合には、課税標準額を1/3(200㎡以下であれば1/6)に減額する軽減措置が適用されるためです。
仮に、固定資産税評価額が4,800万円の土地(400㎡)にマンションが建っている場合には、年税額は以下のように計算されます。
【200㎡以下の部分】
4,800万円×(200㎡/400㎡)×1/6×1.4%=56,000円
【200㎡超の部分】
4,800万円×(200㎡/400㎡)×1/3×1.4%=112,000円
年税額合計:56,000円+112,000円=168,000円
一方、同じ土地が住宅用地でない場合、4,800万円×1.4%=672,000円となります。
このように、軽減税率の適用だけで、税負担を3分の1から4分の1に抑えられるのです。土地の有効活用を考える上で、この特例措置の存在は見逃せません。
一口に固定資産というと、税金の重荷というイメージが先行しますが、実は税負担を減らすための制度がいくつも用意されています。特例の適用には物件の要件をクリアする必要がありますが、少しでも税負担を和らげるために、活用できる軽減措置は見逃さないようにしたいものです。
マンションを購入する際や、すでに所有している物件の税務を見直す際は、ぜひ不動産の専門家に相談してみてください。節税の観点からも、物件選びや運用方法の最適化を図れるはずです。固定資産税の仕組みを正しく理解して、賢くマンション経営を進めていきましょう。
固定資産税の支払い方法と注意点
マンションを所有していると、毎年必ず支払わなければならないのが固定資産税です。 しかし、具体的にいつ、どのように納税すればいいのか、トラブルを避けるための注意点は何か、意外と知らない人も多いのではないでしょうか。ここでは、マンションオーナーが知っておくべき固定資産税の支払いに関する重要ポイントを解説します。
固定資産税の支払い時期と納税スケジュール
固定資産税は、毎年1月1日時点の所有者に対して課税されます。支払いは通常、年4回に分けて行います。具体的な納付期限は自治体によって異なりますが、一般的には6月、9月、12月、2月頃に設定されています。
具体的なスケジュール例は以下の通りです。
- 1月1日:固定資産税の課税が確定
- 6月:第1期分の納付
- 9月:第2期分の納付
- 12月:第3期分の納付
- 2月:第4期分の納付
支払い時期が来たら、各自治体から送付される納税通知書に基づいて、期限までに指定された金融機関やコンビニエンストアで納付します。口座振替やクレジットカード払いに対応している自治体もありますが、別途手数料がかかることもあるため注意が必要です。
支払いの督促状が届いても放置していると、延滞金のペナルティだけでなく、差し押さえなどの滞納処分を受けるリスクもあります。支払い期限は必ず守るようにしましょう。
固定資産税を滞納した場合のペナルティと対策
万が一、固定資産税を滞納してしまった場合、どのようなペナルティがあるのでしょうか。
まず、支払い期限から1ヶ月以内に納税しないと、督促状が送られてきます。納期限後に支払う場合、未納税額に対する延滞金が日割りで加算されていきます。延滞金の利率は納期限後1ヶ月以内は年2.4%、1ヶ月経過後は年8.7%(令和6年中の場合)と設定されています。この利率は毎年見直されるため、最新の情報を確認することが重要です。
さらに、滞納が長期化すると、財産の差し押さえなどの滞納処分を受ける可能性もあります。
例えば、家賃収入が差し押さえの対象になったり、不動産そのものが差し押さえられて公売にかけられたりするリスクがあるのです。
滞納の延滞金と滞納処分のペナルティは下の表のようになっています。
期間 | ペナルティ |
納期限後1ヶ月以内 | 延滞金の加算(年2.4%) |
納期限後1ヶ月超 | 延滞金の加算(年8.7%) |
滞納の長期化 | 財産の差し押さえなど滞納処分のリスク |
こうしたペナルティを避けるためにも、納税は計画的に行いましょう。もし期限までの支払いが難しそうなときは、早めに自治体に相談して、分割納付などの対応を検討しましょう。滞納をそのまま放置するのは絶対にNGです。
固定資産税を分割払いする方法とその利点
固定資産税は通常、年4回の分割払いですが、自治体によっては納税者の事情に応じてより細かい分割払いが可能な場合があります。分割回数は自治体ごとに異なります。具体的な分割回数については、各自治体の税務窓口に確認することをおすすめします。一括納付が難しい場合は、こうした制度の活用を検討してみるのも一案です。
分割払いのメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
- 一度の支払い額を抑えられ、資金繰りの負担が軽減される
- 計画的な支出管理ができる
- 納税の適正化につながる
ただし、分割払いの手続きには一定の審査があり、申請のタイミングも決まっているので、注意が必要です。
固定資産税を一括で支払うことが困難な場合や、滞納の可能性がある場合には、お住まいの自治体の税務窓口にご相談ください。事前に対策を講じることで、将来的なトラブルを防ぐことができます。
マンションの所有コストを適切に管理するうえで、固定資産税の支払いは避けて通れません。期限内の納付を心がけ、もし支払いが難しい事情があるなら早めの相談をするようにしましょう。
同時に、節税対策の一環として、固定資産税の軽減措置などもしっかりチェックしておくことをおすすめします。税金の仕組みを正しく理解し、上手に活用することが、マンション経営の安定化につながるのです。
固定資産税の増額とその対策
マンションを長く所有していると、固定資産税が年々上昇していくことに頭を悩ませるオーナーの方も多いのではないでしょうか。しかし、なぜ税額が増えるのか、その仕組みを正しく理解している人は意外と少ないのが実情です。
ここでは、マンションオーナーが知っておくべき固定資産税の増額メカニズムと、その対策について詳しく解説します。
固定資産税が上がる理由とその防止策
固定資産税の税額は、課税対象となる土地や建物の「評価額」をベースに計算されます。この評価額は、市場価値の変動などを反映させるため、地方税法に基づき3年に1度見直されます。これを「評価替え」といいます。
例えば、新築マンションであれば、周辺の地価上昇などにより、固定資産税評価額が建築当初から大きく上がることも珍しくありません。ただし、土地の評価額が上昇しても、急激な税負担の増加を抑えるための負担調整措置が設けられています。そのため、評価額の上昇が直ちに税額の同程度の上昇につながるわけではありません。
では、こうした増税を防ぐにはどうすればいいのでしょうか。
基本的には、適切なタイミングで固定資産税の評価額の妥当性をチェックし、必要に応じて自治体に見直しを求めていくことが重要です。
評価額に疑問がある場合は、まず市町村の固定資産税担当窓口で評価の内容を確認しましょう。必要に応じて不動産鑑定士などの専門家に相談し、明らかな誤りがある場合は修正を求めることができます。
ただし、安易に評価額の引き下げを求めても、かえって増額査定を招くリスクもあるので注意が必要です。見直し請求のタイミングや根拠については、慎重に見極める必要があるでしょう。
長期的な固定資産税のシミュレーションと計画
マンションを長期保有する場合、将来の固定資産税の負担増をあらかじめ想定し、資金計画を立てておくことが肝要です。
一般的に、建物の固定資産税評価額は経年減点補正により徐々に減少しますが、最終的に評価額の20%を下回ることはありません。一方、土地の評価額は地価の変動に応じて上下します。その両者を合算した税額が、トータルでどのように推移していくのかを予測しておきたいところです。
下のグラフは、ある新築マンションを30年間保有した場合の固定資産税額の長期シミュレーション例です。ただし、これは一般的な傾向を示すものであり、実際の税額は地域や個別の状況によって大きく異なる可能性があります。
このように、土地価格の上昇を主因に、税額は取得当初の1.5倍程度まで増加していくことも予想されます。
マンションの購入や相続を計画する際は、こうした将来の税負担の増加をも見据えた資金計画が不可欠です。ローンの返済や修繕積立金など、さまざまな支出とのバランスを考えながら、固定資産税の支払いに備えていく必要があるでしょう。
固定資産税の評価額見直しの方法
固定資産税の評価額に疑問を感じたら、どのように見直しを求めればいいのでしょうか。
基本的な流れは以下の通りです。
- 自治体の固定資産税担当窓口に、評価内容の開示を請求する
- 開示された評価の根拠資料を精査し、不動産鑑定士などに相談して妥当性を確認する
- 評価の誤りや不適切な点があれば、文書で修正を求める
- 自治体との協議で評価額の是正が図れなければ、不服申し立ての手続きに移行する
ただし、評価額の見直しには注意点もあります。
- 見直し請求が認められるのは、評価の誤りや違法性が明らかな場合に限られる
- 請求の根拠が不十分だと、かえって評価額が引き上げられるリスクもある
- 不服申し立ての手続きは時間と手間がかかり、専門家の協力が不可欠
このように、評価額の見直しは単独で行うのが難しいケースも多いのが実情です。
固定資産税の評価額見直しは複雑で専門知識が必要です。しかし、適切な対応で税負担を軽減できる可能性もあります。土地の有効活用と合わせて専門家のアドバイスを受けることで、より良い選択肢が見つかるかもしれません。
築年数が経つごとに固定資産税がどう変わるか?
マンションの固定資産税は、築年数に応じてどのように変化していくのでしょうか。
一般的な傾向としては、以下のような変化が見られます。
- 新築から5年ほど:建物の評価額が大きいため税額も高めだが、「新築住宅に係る税額の減額措置」を受けることで軽減できる
- 築6〜10年:建物の評価額は緩やかに下がるが、「新築住宅に係る税額の減額措置」が終わるため税額は5年目までより高くなる
- 築10〜45年:建物の評価額が下がり、税額は緩やかに減少
- 築45年以降:建物の評価額が下げ止まり、固定資産税も変わらない
ただし、これはあくまで一般論であり、土地価格の変動率によっては、早い段階から税額が上昇に転じるケースもあります。
将来の税負担を適切に見積もるためには、その時々の地価動向や、自治体の評価額の推移をこまめに確認していくことが重要になります。
また、建物の老朽化に伴う大規模修繕の費用増なども考慮に入れて、資金計画を立てる必要があるでしょう。
マンションの所有コストを適切に管理するうえで、固定資産税の増額リスクは無視できない存在です。だからこそ、評価の仕組みを正しく理解し、適切な対策を講じていくことが肝要なのです。
専門家を交えて長期的視点から資産運用を見直し、必要に応じて評価額のチェックや見直し請求も検討する、そんな複合的な取り組みが、予期せぬ税負担の増加を避けるカギとなるでしょう。
固定資産税をめぐる悩みは、一人で抱え込まずに専門家に相談してみてください。節税や資産の有効活用など、幅広い選択肢の中から、最適な一手を見出していけるはずです。
マンション購入時の固定資産税のポイント
マンションの購入を検討する際、物件価格や住宅ローンの返済額だけでなく、固定資産税の負担も考慮に入れる必要があります。しかし、いざ税額を試算しようとすると、評価額の計算方法が複雑で途方に暮れてしまう人も多いのではないでしょうか。ここでは、マンション購入者が知っておくべき固定資産税の基礎知識と、物件選びの際の考慮点を解説します。
固定資産税がかからない不動産とは?
ほとんどの不動産には固定資産税が課されますが、中にはこの税金がかからないケースもあります。
宗教法人や学校法人などが所有し、本来の用に供している社会福祉事業用の不動産、国や地方自治体が所有する公共用の不動産などは、非課税の対象となります。また、公園や緑地など、一定の要件を満たした非収益型の土地についても、課税が免除されるケースがあります。
とはいえ、一般の個人がこうした特例の適用を受けるのはかなり難しいのが実情です。不動産購入の際は、原則として固定資産税がかかると認識しておいた方が無難でしょう。
マンションと一戸建ての固定資産税の違い
同じ価格帯の物件でも、マンションと一戸建てでは固定資産税の負担感が異なるのをご存知でしょうか。
マンションと一戸建ての固定資産税評価額の差は、物件の個別性や立地条件によって大きく異なります。マンションの場合、共用部分の按分や土地の評価額の違いにより、一戸建てとは異なる計算方法が適用されることがあります。ただし、一概にどちらが有利とは言えず、個別の物件ごとに評価額を確認する必要があります。
土地の資産価値が高い都心部や、新耐震基準を満たした一戸建てなど、ケースバイケースの判断が必要不可欠。候補物件の税額を個別に試算しつつ、トータルな購入コストを比較検討することが肝要です。
マンション経営とアパート経営の違い
賃貸物件としてマンションを購入する場合、アパートを購入する場合とはどう違うのでしょうか。ここでは、固定資産税の観点から両者の特性を比較してみましょう。
アパートは1棟全体を所有する形態のため、土地にかかる固定資産税が全額自己負担となります。一方、マンションの場合は区分所有となるため、その分税額も按分されます。ただし、固定資産税の負担の大小は、物件の具体的な状況(土地の評価額、建物の構造、築年数など)によって異なるため、一概にアパート経営の方が重くなるとは言えません。
また、アパートは一般に築年数が経過するほど設備の維持管理コストが増大します。大規模修繕に多額の資金を要するケースもあり、固定資産税以外の出費増加リスクも考慮しなくてはなりません。
一方、マンションは管理組合による一括管理の下、長期修繕計画に沿った修繕が定期的に行われるのが一般的です。そのための積立金は区分所有者が負担しますが、賃貸収入から捻出することができます。ただし、修繕積立金が不足する場合は追加の負担が必要となる可能性もあるため、大規模修繕リスクを完全に排除することはできません。
マンション経営とアパート経営にはそれぞれ特性があり、一概に優劣を付けられるものではありません。両者には固定資産税の計算方法や管理方式に違いがありますが、どちらが有利かは個々の物件や投資家の状況によって異なります。重要なのは、自身の目的や予算に合った物件を選び、時間軸を踏まえた収支シミュレーションを行うこと。
その上で、固定資産税を含む必要経費を適切に見積もり、期待収益率を満たすかどうかを見極める。この一連の検討プロセスを丁寧に行うことが、不動産経営における成功の第一歩といえるでしょう。
マンションを購入する際、固定資産税額の試算は欠かせません。「固定資産税評価額(建物・土地の課税標準額)×1.4%」が基本ですが、所在自治体の課税状況を加味しつつ、より精緻な見積もりを立てていくことが重要です。
賃貸目的の物件選定では、アパートとの税負担差も念頭に置きつつ、中長期の収支予測が肝要。マンション経営のプロに相談しながら、物件の将来性や管理面のリスクも慎重に見極めていきたいものです。
固定資産税対策を適切に行い、効率的な資産運用を実現する。その先には、マンションを活用した、より豊かな人生設計が待っているはずです。
固定資産税に関する疑問解消
アパート経営を検討している方や既に経営している方は、固定資産税について素朴な疑問をお持ちではないでしょうか。納税通知書の見方がよくわからない、税制が変わったと聞いたが自分はどうなるの?そんな声をよく耳にします。ここでは、オーナー視点で税務上の疑問を解消していきましょう。
固定資産税の納税通知書の読み方と注意点
毎年4月から6月頃に届く納税通知書。あの複雑な書面を前に、頭を抱えた経験はありませんか?ポイントを押さえれば、そう難しくはありません。
納税通知書のチェックポイントはこの3つ。
- 課税されている物件の所在地と家屋番号が正しいか
- 前年と比べて、税額に大きな変動がないか
- 納付期限の確認
固定資産税は物件ごとに課税されるので、所有するマンション全てについて通知書が届きます。まずは物件の特定情報を確認し、思い当たる物件が漏れなくあるか、課税内容に不審な点がないかをチェックします。
税額は前年と比べて大幅に変わることは少ないですが、評価替えのタイミングでは上下する可能性もあります。課税標準額の推移を追うことで、増税リスクを事前に察知することもできるでしょう。
固定資産税に関する最新情報と変更点
2023年度の税制改正では、マンション経営に関わるいくつかの変更点があります。
注目すべきは、2023年度の税制改正で、マンションの長寿命化を促進するための新たな固定資産税の減税措置が導入されたことです。管理計画の認定を受けた築20年以上、10戸以上のマンションで、一定の要件を満たす大規模修繕工事を実施した場合、工事が完了した翌年の固定資産税(建物部分)が1/6〜1/2の範囲内で減額されます(1戸あたり100m²相当分まで)。
また、一定の省エネ改修工事を行った住宅に対する固定資産税の減額措置が継続されています。この措置は、平成26年4月1日以前からある一定の住宅が対象となり、工事完了年の翌年度分の固定資産税が1/3減額されます(120m²まで)。このように、一定の要件を満たす物件では税負担が下がるケースもあります。
ただし、税制は物件の種類や立地、築年数、環境性能などによって適用関係が異なります。自身の物件がどのような影響を受けるのか、一概には言えないのが実情です。
「うちのマンションはどうなるの?」そんな疑問には、税理士などの専門家に相談してみるのがおすすめ。物件の個別事情を踏まえたアドバイスがもらえるはずです。
オーナーの皆さんも、税制の変化にはぜひ注目していてください。減税のチャンスを逃さず、有利な制度はしっかり活用する。そんな機敏な情報感度が、賢い資産運用の第一歩となるでしょう。
黒部 豪
税理士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/GKコンサルティング合同会社 代表社員