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2024.07.12 節税対策

不動産による相続税対策で1,000万円を超える節税効果も?仕組みと計算法をわかりやすく解説

この記事の監修者
黒部 豪1級FP技能士黒部 豪

相続税の負担に頭を悩ませていませんか?不動産活用による相続税対策が、その解決策となるかもしれません。
本記事では、2024年の相続税の計算方法から効果的な不動産選びのポイント、さらには生前贈与法人化といった高度な戦略まで幅広く解説しています。賢い相続税対策を行うための第一歩を一緒に踏み出しましょう。

相続税の仕組みと代表的な相続税対策

相続税は、亡くなった方から相続や遺贈(遺言によって故人の財産の一部またはすべてを特定の人や団体に譲り渡すこと)によって財産を取得した場合に課税される税金です。相続税の対象となる財産には、不動産や現金、預金、有価証券などがあります。相続税の計算方法や税率は複雑で、専門的な知識が必要とされるため、多くの方が節税対策に頭を悩ませています。

ここでは、2024年時点での相続税の計算方法と、代表的な相続税対策について解説していきます。

2024年時点での相続税計算方法

2024年現在、相続税の計算は以下の4つのステップで行われます。

  1. 正味の遺産額を計算
    まず、相続財産の価値を評価することが最初のステップです。現金・預金・株式や不動産などの評価額を算出し、その総額を計算。不動産の評価は、原則として路線価や固定資産税評価額を基準とします。次に、被相続人の債務や葬式費用を相続財産から差し引くことで、正味の遺産額を計算することができます。
  2. 課税遺産総額を計算
    正味の遺産額から基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を差し引き、課税遺産総額を計算します。正味の遺産額が基礎控除額よりも少ない場合は、相続税は発生しません。
  3. 相続税の総額の計算
    課税遺産総額を仮に法定相続分で分割した場合の各相続人ごとの相続財産額に応じた税率(10%~55%の累進税率)を乗じ、各相続人ごとの相続税を計算します。この際には相続税の速算表を使用するとよいでしょう。計算した各相続人の税額を全て合算することで相続税の総額を算出することができます。
  4. 各相続人の納税額の計算
    相続税の総額を、実際の各相続人の取得財産の割合に応じて按分し、各相続人が実際に納付する相続税額を計算します。ただし、配偶者の場合は、配偶者の税額軽減が使えるため、ここで計算した金額が1億6,000万円又は法定相続分相当額のいずれか多い金額以下であった場合は納税の必要はありません。

相続税の対策に不動産が使える理由とは?

相続税対策として不動産を活用することは、極めて効果的な手段の一つです。不動産は相続税の計算上、評価額が実勢価格より低く抑えられる傾向にあるため、大きな節税効果が期待できます。さらに、不動産を賃貸に出すことで安定的な収入も得られます。本項では、相続税対策に不動産が有効である理由を詳しく解説していきます。

相続における不動産の評価方法

相続税の計算上、不動産の評価額は、実勢価格よりも低く算定される傾向にあります。

土地の評価は、おもに路線価や固定資産税評価額を基準に行われます。
路線価は、国税庁が毎年発表する地価の指標で、一般的には公示価格の約80%程度とされていますが、具体的な評価割合は地域や状況によって異なる場合があります。
また、固定資産税評価額は、公示価格の約70%程度といわれています。

一方、建物の評価は、固定資産税評価額に基づいて計算されます。固定資産税評価額については、土地の評価と同様に実勢価格よりも低くなる傾向があります。この差額を活用することで、相続税の節税につなげることができるのです。
また、賃貸不動産(収益物件)の場合は、さらに評価額を圧縮することができます。その理由を解説していきます。
賃貸不動産においては、居住用の宅地や建物の評価額から賃貸部分を控除することができるため、相続財産の評価額をさらに低く抑えることが可能です。

では、具体的な計算方法について3つのパターンに分けて解説します。

①貸宅地の評価額(土地を貸して建物は他人が所有しているパターン)
土地を貸して、そこに建つ建物を他人が所有している場合は、以下の計算式で評価額を算出します。

貸宅地の評価額 = 自用地の評価額 –  (自用地の評価額 × 借地権割合)

例えば、自用地の評価額が1億円で借地権割合が70%で設定されている場合の貸宅地の評価額は3,000万円ということになり、7,000万円の評価額の圧縮ができることになります。

②貸家建付地の評価額(土地と建物を所有し、建物を他人に貸すパターン)
土地と建物は自らが所有し、建物を他人に貸す場合については以下の計算式で評価額を算出します。

貸家建付地の評価額 = 自用地の評価額 ×  ( 1 – 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)

例えば、自用地の評価額が1億円、借地権割合が70%の地域、借家権割合が30%、満室稼働(賃貸割合100%)の場合には、貸家建付地の評価額は、7,900万円となり、2,100万円の評価額の圧縮ができます。

③貸家(賃貸物件)の評価額
土地だけでなく、貸家についても借家権割合分を控除することができます。2024年時点で、借家権割合については地域などに関係なく、一律30%に設定されています。また、マンションなどを所有されている場合で空室がある場合、賃貸割合が下がるため、評価額としては高くなります。具体的に、以下のような計算式で評価額を計算します。

貸家の評価額 = 自用家屋の評価額 ×  ( 1 – 借家権割合 × 賃貸割合)

自用家屋の評価額が1億円、空室率が20%(稼働率が80%)の場合の貸家の評価額は7,600万円となります。
以上の評価方法をまとめると、以下の表のようになります。

・土地の評価額

形態 土地 建物 計算式
  所有 賃貸 所有 賃貸  
貸宅地の評価額 する する しない –  貸宅地の評価額
= 自用地の評価額 – (自用地の評価額 × 借地権割合) 
貸家建付地の評価額 する しない する する 貸家建付地の評価額
= 自用地の評価額 × ( 1 – 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)

・家屋の評価額

形態 計算式
貸家(賃貸物件)の評価額  貸家の評価額 = 自用家屋の評価額 × ( 1 – 借家権割合 × 賃貸割合)

 

居住用不動産での相続税対策

被相続人が住んでいた自宅や、相続人が住んでいる家屋は、相続税の計算上、一定の条件を満たせば、さらに評価額が引き下げられます。この特例を小規模宅地等の特例の一つである、「特定居住用宅地等の特例」と呼びます。

特定居住用宅地等の特例では、以下のような要件を最低限満たす必要があります。

  • 被相続人又は生計を一にしていた親族の居住用宅地であること
  • 相続開始前に被相続人が所有していたこと
  • 親族が相続税の申告期限まで引き続き居住し有していること
    (配偶者が相続した場合は、この要件は必要ありません)

これらの条件を満たせば、居住用宅地の評価額330㎡までは最大で80%減額することが可能です。この特例を活用することで、相続税の負担を大幅に軽減できる可能性があります。
上記のようなことを考慮してマンションの購入などを計画的に行うとよいでしょう。

もし、相続される予定の土地などがある場合は、その土地の評価額や相続対策などをプロに相談してみるのも良いと思います。気になる方はこちらから。

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例は、居住用不動産だけでなく、事業用の不動産貸付用の不動産にも適用することができます。
事業用宅地の場合、被相続人等が事業を行っていた宅地で、取得した親族がその事業を継続する場合に適用されます。貸付用宅地の場合は、被相続人等が貸付事業を行っていた宅地で、取得した親族がその貸付事業を継続する場合に適用されます。

これらの特例を活用することで、不動産の評価額を大幅に引き下げることができ、相続税の節税につなげることができます。ただし、特例の適用には一定の条件があるため、専門家のアドバイスを受けながら、適用できるかの判断をしていくとよいでしょう。

不動産購入時に借金して対策することも可能

相続税対策として不動産を購入する際、借金を活用することも有効な手段の一つです。このような場合、相続財産の評価額から、借入金を差し引くことができるため、相続税の課税対象額を減らすことができます。

例えば、1億円の不動産を購入する際、8,000万円を借り入れたとします。この場合、相続財産の評価額は1億円ですが、借入金8,000万円を差し引くことができるため、課税対象額は2,000万円となります。この方法を活用することで、評価額を圧縮することができるため、相続税の負担を抑えることができるのです。

しかし、借入を実施する際には綿密な計画が必要になります。借入をするメリット・デメリットを十分に理解し、税理士や不動産の専門家のサポートを受けながら進めることが大切です。

相続税対策に有効な不動産とは具体的にどのような物件?

相続税対策に不動産を活用する際、どのような物件を選ぶかは最重要課題です。相続税の節税効果を最大限に引き出すためには、物件の特性を理解し、自分の状況に合った最適な選択をすることが必須となります。本項では、相続税対策に有効な不動産の具体例や選び方のポイントについて詳しく解説していきます。

時価と相続税評価額の差が大きい物件

相続税対策に有効な不動産の一つ目は、時価と相続税評価額の差が大きい物件です。相続税の計算上、不動産は路線価や固定資産税評価額などを基準に評価されるため、実勢価格より低く評価される傾向にあります。この差額を活用することで、相続税の節税につなげることができます。

とくに、都心部の高級マンションや、地価の高い都市部の土地などは、時価と相続税評価額の差が大きくなる傾向があります。これらの物件を相続税対策に活用することで、大きな節税効果が期待できるでしょう。

投資効率(利回り)の良い物件

相続税対策に有効な不動産の二つ目は、投資効率(利回り)の良い物件です。賃貸収入が安定的に見込める物件は、相続税の納税資金を確保しやすいというメリットがあります。

例えば、都心部の収益物件などは、利回りが高く、安定的な収入が期待できます。これらの物件を相続税対策に活用することで、節税効果と同時に、将来的な収益性も見込むことができるでしょう。

現金化しやすい物件

相続税対策に有効な不動産の三つ目は、現金化しやすい物件です。相続税の納税には現金が必要となるため、必要に応じて売却しやすい物件を選ぶことも重要です。

例えば、都心部の人気エリアにある物件や、利便性の高い立地の物件などは、売却がしやすい傾向にあります。これらの物件を相続税対策に活用することで、納税資金の確保が容易になるでしょう。

ケーススタディ:相続税対策になる物件の具体例

それでは、具体的なケースを想定して、相続税対策に有効な物件を考えてみましょう。

ケーススタディA:都内駅徒歩5分にある10億円マンション
都心部の高級マンションは、時価と相続税評価額の差が大きい傾向にあります。また、売却もしやすいため、納税資金の確保も容易です。ただし、維持費や管理費が高額になる点には注意が必要です。

ケーススタディB:都内近郊の住宅街にあるバス停1分の5,000万円戸建て物件
都内近郊の戸建て物件は、利便性が高く、売却もしやすい傾向にあります。また、相続税評価額が低く抑えられるため、節税効果も期待できます。ただし、老朽化による修繕費用などのリスクには注意が必要です。

ケーススタディC:地方都市の学生街エリアにある2億円賃貸アパート
学生向けの賃貸アパートは、基本的に1Rや1Kといった間取りが多く、同じ敷地面積でも個数を多く設けることができるため、高い収益性を確保できる可能性があります。また、家賃については、保護者が負担することがほとんどのため、家賃滞納リスクが低く安定的な収入が見込めます。相続税評価額も低く抑えられるため、節税効果も期待できます。ただし、学生の入れ替わりによる空室リスクには注意が必要です。

これらのケースを見ると、それぞれの物件に対する相続税の節税対策には、メリット、デメリットがあることがわかります。自分の状況に合った最適な物件を選ぶためには、不動産の専門家のアドバイスを参考にしながら、慎重に検討することが重要です。まずは、土地活用に関する最新情報を確認してみませんか?

不動産投資のリスクもしっかり把握しておきましょう

相続税対策として不動産を活用する際は、不動産投資のリスクについても十分に理解しておく必要があります。不動産投資には、以下のようなリスクが存在します。

  • 空室リスク:賃貸物件の場合、入居者が見つからず、空室が発生するリスクがあります。
  • 金利上昇リスク:借入金を利用する場合、金利上昇により返済負担が増加するリスクがあります。
  • 価格下落リスク:不動産価格が下落した場合、資産価値が減少するリスクがあります。
  • 管理コストリスク:物件の維持管理に想定以上のコストがかかるリスクがあります。

これらのリスクを十分に理解し、対策をしていくことが非常に重要です。物件選びの際は、上記のようなリスクを最小限に抑えられる物件を選ぶことが望ましいでしょう。また、不動産投資の知識を深め、リスク管理能力を高めることも大切となってきます。

不動産を活用した相続税対策は、大きな節税効果が期待できる一方で、専門的な知識が必要となります。専門家のアドバイスを参考にしながら、慎重に検討することをおすすめします。フィル・カンパニーでは、不動産を活用した相続税対策について、豊富な知識と経験を持つ専門家が無料で相談に乗っております。ぜひ、お気軽にお問い合わせください。

不動産は相続より生前贈与するべき?

相続対策として不動産を活用する際に「生前贈与」をすすめられたことがある方も多いのではないでしょうか?

生前贈与とは、被相続人が存命中に財産を贈与することを指します。生前贈与を行うことで、相続時の課税対象となる財産を減らすことができ、相続税の節税につながります。ただし、贈与税が発生する場合もあるため、贈与税と相続税をてんびんにかけ、より有利な選択をしていく必要があります。本項では、その判断基準となる土地の生前贈与と相続にかかる税金の知識について解説していきます。

土地の生前贈与と相続にかかる税金

土地を生前贈与する場合と相続する場合では、かかる税金に違いがあります。おもな税金としては、登録免許税不動産取得税贈与税相続税などがあげられます。それぞれの税金について、生前贈与と相続の場合を比較してみましょう。

登録免許税は贈与より相続のほうが安い

登録免許税は、不動産の所有権移転登記を行う際にかかる税金です。生前贈与の場合、登録免許税の税率は不動産の価格の2%(平成26年3月31日まで1.5%)となります。一方、相続の場合は、不動産の価格の0.4%(平成26年3月31日まで0.2%)と、生前贈与に比べて低い税率が適用されます。

つまり、登録免許税の観点からは、生前贈与よりも相続のほうが有利といえるでしょう。ただし、登録免許税の負担額は、不動産の価格によって変わるため、個別のケースに応じた検討が必要です。

不動産取得税は相続ではかからない

不動産取得税は、不動産を取得した際にかかる税金で、都道府県が課税します。生前贈与の場合、不動産取得税がかかりますが、その税率は不動産の価格の3%(平成27年3月31日まで4%)となります。

一方、相続の場合は、原則として不動産取得税はかかりません。これは、相続人が被相続人から不動産を取得しても、所有権の移転ではなく、相続人が被相続人の地位を承継するものと考えられているためです。

不動産取得税の観点からは、相続のほうが有利といえます。ただし、生前贈与の場合でも、一定の要件を満たせば不動産取得税の減免措置を受けられる場合があります。

非課税になる金額は贈与税より相続税のほうが大きい

贈与税と相続税には、非課税となる基礎控除額が設定されています。贈与税の基礎控除額は年間110万円ですが、相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」となっています。

つまり、非課税となる金額は、相続税のほうが贈与税よりも大きくなります。仮に法定相続人が3人の場合、相続税の基礎控除額は4,800万円となり、贈与税の基礎控除額との差は歴然です。

この点からも、相続のほうが贈与よりも税制上有利といえるでしょう。ただし、贈与税には相続時精算課税配偶者控除など、さまざまな特例措置が設けられています。これらの特例を活用することで、贈与税の負担を軽減できる可能性があります。

土地の生前贈与と相続にかかる税金を比較すると、登録免許税、不動産取得税、非課税となる金額のいずれの観点からも、相続のほうが有利といえます。ただし、個別のケースに応じて、贈与税の特例措置を活用することで、生前贈与のメリットを引き出すことも可能です。

生前贈与をより戦略的に活用していく方法については、以下の記事で詳しく解説していますので、こちらも合わせてご覧ください。

不動産を生前贈与するメリットと注意点|相続税対策を徹底解説

こんな相続税対策も!不動産賃貸業の法人化

不動産を活用した相続税対策として、もう一つ注目すべき方法が「不動産賃貸業の法人化」です。不動産賃貸業を行っている場合、個人事業から法人化することで、相続税対策につなげることができます。
法人化によって、個人資産であった不動産を会社の資産に移転し、相続財産から切り離すことが可能となります。ここでは、不動産賃貸業の法人化について、そのポイントを詳しく解説していきます。

法人化のポイント

不動産賃貸業を法人化する際は、いくつかのポイントに注意する必要があります。法人化を成功させるためには、適切な資本金額の設定や、相続人の株主・役員への就任など、綿密な計画が求められます。以下、法人化のポイントについて詳しく見ていきましょう。

資本金額の設定

法人化の際は、適切な資本金額を設定することが重要です。資本金額は、会社の信用力を示す指標の一つであり、金融機関からの融資を受ける際にも影響します。一般的に、不動産賃貸業の場合は、1,000万円以上の資本金額が望ましいとされています。
ただし、資本金額が高すぎると、法人税や地方税の負担が増えてしまったり、設立初年度から消費税の課税事業者に該当してしまうため、自社の事業規模や将来的な展望を踏まえて、最適な金額を設定する必要があります。資本金額の設定については、税理士や会計士などの専門家に相談しながら、慎重に検討することをおすすめします。

相続人を株主に

不動産賃貸業の法人化において、相続人を株主にすることは非常に重要なポイントです。不動産を株式化し、株主を元々の所有者である被相続人だけでなく、推定相続人にも事前にある程度出資してもらうことで、相続時に移転する株数(被相続人が所有している株数)が少なくなり、結果的に節税につながります。
また、相続人が株主となることで、会社の経営に関与することができ、不動産賃貸業の事業としての継続性を高め、安定的な収益を確保することが可能となります。

相続人を役員に

相続人を役員に就任させることも、不動産賃貸業の法人化における重要なポイントです。ただ、名前だけの役員ではあまり意味がありません。相続人を法人の役員に就任させる場合は、相続人が法人の経営に実際に関与することが重要です。これにより、不動産賃貸業の方針や戦略を、相続人の意向に沿って決定することが可能となります。

また、役員報酬は損金として認められるため、法人税や地方税の節税にもつながります。ただし、役員報酬の金額は、会社の業績や規模に見合った適正な水準である必要があります。役員報酬の設定については、税理士などの専門家に相談しながら、慎重に検討しましょう。
不動産賃貸業の法人化は、相続税対策として非常に有効な手段です。個人資産であった不動産を会社の資産に移転することで、相続財産から切り離せるのが最大のメリットです。また、相続人を株主や役員にすることで、将来的な相続税の節税につなげることも可能です。

ここに気を付けて!相続税対策の注意点・デメリット

不動産を活用した相続税対策は、大きな節税効果が期待できる一方で、いくつかの注意点やデメリットも存在します。相続税対策を検討する際は、これらの点を十分に理解し、対策を講じることが重要です。本項では、不動産を活用した相続税対策のおもな注意点やデメリットについて、詳しく解説していきます。

自分の意思決定で購入しなければ無効になる

相続税対策として不動産を購入する際は、自分の意思決定で購入することが非常に重要です。相続税対策を目的として、他者から強制されるように不動産を購入した場合、その対策は無効となる可能性があります。

税務署は、不動産の購入経緯や資金の流れなどを詳しく調査します。もし、購入者の自由な意思決定に基づいていないと判断された場合、その不動産は相続税の課税対象となってしまいます。せっかく行った対策が無駄にならないよう、慎重に対策を検討しましょう。

税務署が明らかに租税回避行為と判断すると無効になる

不動産を活用した相続税対策は、あくまでも自然な形で行われる必要があります。あまりにも明らかに租税回避行為を目的としていると、税務署に判断された場合、そのスキームは無効となる可能性があります。

例えば、相続発生直前に高額な不動産を購入したり、不自然な価格で不動産を取得したりすると、税務署に疑われる可能性が高くなります。相続税対策として不動産を活用する際は、より自然な形で、かつ、適正な価格で取得することが重要です。

相続税対策不動産の売却時期に注意する

相続税対策として取得した不動産を売却する際は、売却時期にも注意が必要です。相続発生後、短期間のうちに不動産を売却すると、相続税対策として不動産を取得したと税務署に判断される可能性があります。

一般的に、相続税対策として取得した不動産(従来から被相続人が所有している不動産を除く)は、相続開始後、3年以上保有することが望ましいとされています。この期間を過ぎてから売却することで、相続税対策として不動産を取得したと判断されるリスクを軽減できます。

利回りや流動性のバランスが悪いと保有でお金がかかる

相続税対策として不動産を取得する際は、利回りや流動性のバランスにも注意が必要です。利回りが低く、流動性が乏しい不動産を取得してしまうと、保有にコストがかかり、相続税対策としての効果が薄れてしまいます。

不動産を取得する際は、賃料収入などによる利回りと、売却しやすさを示す流動性のバランスを考慮することが重要です。利回りが高く、流動性も確保されている不動産を選ぶことで、相続税対策としての効果を最大限に発揮することができるでしょう。

現金と違い分割しにくいため「争族」が起こってしまう可能性がある

不動産は、現金と違って分割が難しいという特性があります。この特性が、相続の際に「争族」を引き起こす可能性があります。大切な家族が亡くなって悲しい状況で、残された家族に争いが発生してしまうことは悲惨なことです。
このような悲劇を避けるには、事前対策が非常に重要になります。
例えば、複数の相続人がいる場合、不動産を公平に分割することは容易ではありません。この場合、相続人間で不動産の取得を巡って争いが起きる可能性があるのです。相続税対策として不動産を活用する際は、将来的な相続の際の分割方法についても、あらかじめ考えておくことが大切です。

不動産を活用した相続税対策には、さまざまな注意点やデメリットが存在します。自分の意思決定で購入すること税務署に相続税対策と判断されないこと売却時期に注意すること利回りや流動性のバランスを考慮すること将来的な分割方法を検討しておくことなどが重要です。
これらの点を十分に理解し、事前に対策を講じることで、不動産を活用した相続税対策の効果を最大限に発揮することができるでしょう。

まとめ 「今すぐできる」不動産活用による相続税対策とは?

本記事では、相続税対策として不動産を活用する方法について詳しく解説してきました。不動産は、相続税の計算上、評価額が低く抑えられる傾向にあるため、大きな節税効果が期待できます。とくに、収益物件や居住用賃貸物件などは、評価額が低く抑えられる一方で、安定的な収入も見込めるため、注目すべき選択肢といえるでしょう。

さらに、不動産賃貸業を行っている場合は、法人化することで相続税対策につなげることもできます。
まずは、「自身の資産の見える化」を実施することが大切です。相続対策はここからスタートします。そして、その資産を「誰に、いくら残すか?」また、「どんな不動産を何件建てるのか?」を検討していきます。

不動産を活用した相続税対策にはリスクや注意点も存在します。これらを全て自分で調べてもれなく実行するのはなかなかハードルが高いものです。まずは自身の状況を把握し、専門家に相談してみるのが近道です。フィル・カンパニーでは、みなさまの不動産を活用した相続税対策を、全力でサポートいたします。お気軽にご相談ください。

この記事の監修者

黒部 豪

税理士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/GKコンサルティング合同会社 代表社員

東京都出身。明治大学理工学部物理学科卒業。大学卒業後はIT会社に勤務していたが、一念発起して税理士に。都内の税理士事務所に約10年ほど勤務したのち、2021年にくろべ税理士事務所を開業。法人や個人事業主の税務顧問以外に、相続やファイナンシャルプランなどのスポット案件も行う。

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