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2024.08.07

実家を相続する際の手続き完全ガイド|名義変更や相続税などの基礎知識からトラブル回避と土地活用まで

この記事の監修者
黒部 豪税理士黒部 豪

実家を相続する際の手続きは複雑で、多くの人がお困りでしょう。本記事では、名義変更や相続税などの基礎知識から、トラブルの事例と回避策、さらには相続で取得した土地の活用方法まで、全てのステップを解説します。

相続手続きの流れを理解し、安心して進めるための必須情報をお届けします。

実家を相続することになったら?その基礎知識と必要な手続き

実家を相続する際には、法的手続きや税金、名義変更など多くの手続きが必要となります。そこで相続の基礎知識から具体的な手続き方法まで詳しく解説します。

相続とは何か?法的な定義と基本的な手続き

相続とは、亡くなった人の財産や権利、義務をその相続人が受け継ぐことです。相続は、被相続人の死亡によって開始されます。
中でも不動産は金額が大きい上に、その財産評価の方法に一定のルールがあり、且つ財産の分割が容易でないため、取扱いに困ったり、トラブルとなったりすることがあります。
相続財産等の承継は以下の3種類に分けられます。

法定相続法律に基づいて相続人が決まり、財産が分配されることです。民法では、配偶者と子どもが第一順位の相続人となります。
遺言:故人が遺言を残していた場合、その遺言に基づいて財産が分配されます。遺言は、故人の意志を反映するものであり、法定相続よりも優先されます。
相続放棄:相続人は故人の財産だけでなく負債も相続します。負債が多い場合、相続放棄をすることで債務を免れることができます。相続放棄は、家庭裁判所に申立てを行います。

相続手続きには、遺言書の有無の確認や相続人の確定、相続財産の調査と評価を行い、相続税の申告と納付、名義変更の手続きを行うことが含まれます。これらの手続きは複雑であるため、専門家に相談しながら行うことをおすすめします。

相続税とは?計算方法と節税のポイント

相続税は、被相続人から受け継いだ財産に対して課される税金です。相続税の総額の計算は、評価した相続財産の合計額から基礎控除額を差し引いた額をベースとして計算されます。以下の流れを確認してください。

財産の評価
まず、相続財産の価値を評価します。不動産の場合、路線価や固定資産税評価額が基準となります。預貯金や有価証券は、相続開始時の時価が基準となります。

基礎控除額
相続税には基礎控除額が設けられており、法定相続人の数によって変動します。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」となります。

各人の取得金額
基礎控除額を控除した金額(課税遺産総額)に、法定相続人ごとの法定相続分を乗じて、税額の基礎となる金額を算出します

税率の適用
各人の取得金額に対して、累進税率が適用されます。税率は10%から55%までの範囲で、各人の取得金額が多いほど高い税率が適用されます。

相続税の総額
税率を適用した金額を合計したものが、相続税の総額になります

相続税の申告と納付
相続税の申告と納付は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に行う必要があります。申告書は税務署に提出し、納付は一括または分割で行うことが可能です。

節税のポイントとしては、生命保険の活用や、贈与税の非課税枠を利用した生前贈与不動産の評価額を下げる方法などがあります。計画的な相続税対策を行うことで、相続税の負担を軽減することができます。 具体例は以下のとおりです。

方法 概要
1. 生前贈与 相続が発生する前に財産を相続人に贈与することで、相続税の課税対象となる財産を減少させる方法です。

日本では年間110万円までの基礎控除枠がある暦年贈与や、それに加えて、累計2,500万円まで控除枠がある相続時精算課税があり、この制度を活用して計画的に贈与を行うことが有効です。また、特定の条件を満たす場合には、教育資金や結婚・子育て資金の一括贈与も非課税となります。※相続税の対象となる生前贈与加算が、相続開始前3年以内から相続開始7年以内に変更となりました。(令和6年1月1日以後の暦年課税に係る贈与より)

2. 小規模宅地等の特例 被相続人が住んでいた宅地や事業用宅地に対しては、「小規模宅地等の特例」が適用されることがあります。

この特例により、一定の面積までの宅地の評価額が最大80%減額されます。この特例を受けるためには、相続人がいくつかの要件を満たす必要があります。

3. 生命保険の活用 被相続人が生命保険に加入し、相続人を受取人とすることで、死亡保険金が非課税枠内で支給されます。非課税枠は「500万円×法定相続人の数」となり、この枠内であれば相続税がかかりません。

さらに、保険金は現金として受け取れるため、相続税の納税資金としても活用可能です。

4. 借入金の活用 相続税の課税価格を減少させるために、借入金を利用する方法もあります。例えば、被相続人が借入金を用いて不動産を購入すると、その借入金は相続財産から差し引かれるため、相続税の課税価格が減少します。

ただし、無理な借入は返済負担となるため、慎重に検討する必要があります。

5. 遺産分割の工夫 遺産分割の方法によっても節税効果が得られる場合があります。相続人全員が均等に遺産を分割することで、各相続人の課税対象額を減少させることができます。

また、特定の相続人に特定の財産を集中させる場合には、節税効果を最大化するような分割方法を検討することが重要です。

名義変更の手続きとポイント

名義変更は相続によって取得した財産の所有者名義を、故人から相続人に変更する手続きです。不動産や預貯金など、財産の種類によって名義変更の手続き方法が異なります。
実家の名義変更手続きは、相続登記と呼ばれ、法務局で行います。必要な書類には、被相続人の死亡証明書、遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書などがあります。
手続きのポイントとして、相続登記を早めに行うことが重要です。また、司法書士の報酬に加えて登記費用や登録免許税がかかるため、事前に予算を確認しておきましょう。

実家の相続に伴う財産分割協議の進め方

実家の相続後、相続人の間で遺産分割協議を行う必要があります遺産分割協議の手順は以下のとおりです。

相続財産の確認
まず、相続財産の全体像を把握します。不動産、預貯金、有価証券、動産、負債など、全ての財産をリストアップします。

相続人の確定
法定相続人を確定します。法定相続人は、故人の配偶者、子ども、直系尊属、兄弟姉妹などです。

協議の実施
相続人全員で協議を行い、遺産の分割方法を決定します。協議は全員の同意が必要であり、同意が得られない場合には調停や審判が必要です。

遺産分割協議書の作成
協議の結果を文書にまとめ、相続人全員が署名・押印します。遺産分割協議書は、名義変更や相続税の申告に必要となります。

協議がまとまらない場合は、家庭裁判所の調停や審判を利用することも考えられます。不動産の価値について合意ができない場合は、不動産鑑定士に鑑定を依頼するケースもあります。円滑な協議を進めるために、専門家のサポートを受けることが有効です。

実家を相続する人が知っておくべき法律と税金のポイント

実家を相続する際に知っておくべき法律や税金について解説します。相続財産の登記手続きや固定資産税の支払い、特例措置の適用方法について、具体的な情報を提供します。また、相続放棄の手続きとその影響についても詳しく説明します。

相続財産の登記と手続きの詳細

相続財産の登記とは、相続によって取得した不動産の名義を変更する手続きです。法務局で行われるこの手続きには、被相続人の死亡証明書や相続人全員の同意を示す遺産分割協議書などが必要です。相続登記は令和6年4月から義務化されており、3年以内の申請期間に遅延すると過料が課される可能性があります。また、適切な手続きを行って相続を確定することで、将来的なトラブルを避けることができます。

固定資産税の支払いと特例措置

実家を相続すると、その不動産に対して固定資産税が課されます。固定資産税は毎年1月1日時点の所有者に対して課税されますが、納税のタイミングはその年7月以降となるため、名義変更後の新しい所有者が支払うことになります。

実家を相続放棄する際の手続きとその影響

実家の相続を放棄する場合、前述のように家庭裁判所に相続放棄の申述書を提出する必要があります。相続放棄は、相続開始を知った時から3か月以内に行う必要があり、これを過ぎると自動的に相続を承認したと見なされます。
相続放棄をすると、実家だけでなく他の相続財産も受け取ることができなくなるため、慎重に判断する必要があります。また、相続放棄が次順位の相続人に影響を与える点も考慮する必要があります。
相続放棄をすると、その相続人は初めから相続人でなかったものとみなされます。そのため、次順位の相続人に相続権が移行します。たとえば、第一順位の相続人である子どもが相続放棄をした場合、第二順位の相続人である直系尊属(父母や祖父母)が相続権を持つことになります。
次順位の相続人が相続権を得ることで、相続財産の分配が計算されます。相続放棄が行われたあとは、次順位の相続人が新たに相続割合を計算し直し、その割合に基づいて財産や負債を分配します。
相続には、財産だけでなく負債も含まれます。相続放棄をした場合、その相続人は負債も相続しませんが、次順位の相続人がその負債を相続することになります。これにより、次順位の相続人にとっては経済的負担が増える可能性があります。
次順位の相続人が相続権を得たあと、その相続人も相続放棄を選択することができます。これが連鎖的に起こると、さらに次の順位の相続人に相続権が移行することになります。最終的には全ての相続人が相続放棄をした場合、相続財産は国庫に帰属する形になります。

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実家の相続にまつわるトラブルとその対策法

実家の相続に伴うトラブルは避けたいものです。ここでは、相続で発生しやすいトラブルの事例とその対策法について解説します。また、法的紛争を防ぐためのポイントや、遺言書の有効活用方法についても詳しく紹介します。事前に備えることで、トラブルを回避しましょう。

実家の相続で発生するよくあるトラブル事例

実家の相続に関するよくあるトラブル事例としては、相続人間の意見の対立や遺産分割協議の不調があります。とくに、相続財産が不動産のみの場合、分割が難しく、対立が生じやすいです。以下は相続で生じやすいトラブルの例です。

相続のトラブル事例

相続人間の意見の不一致 ・遺産分割の割合をめぐって不一致が生じた。
・相続人Aは、自分が相続人の遺産を増やした功績で「寄与分」を受ける権利があると主張して、他の相続人と対立した。
相続財産の評価額の不合意 ・相続の割合は法定にしたがうことで一致したが、評価で不合意が生じた。
・不動産を受け継ぐ相続人Aは相続税評価額での評価を希望したが、それ以外の相続人は、「不動産の実勢価格に近い価格で評価しないと、Aが取り過ぎとなって不公平だ」と主張した。
不動産の管理・維持に関する問題 ・実家が長年空き家状態を経て相続が発生した。
・相続した人は相応の費用をかけて取り壊しかリフォームなどを行う必要があり、全員が引き受けを拒んだ。
共有名義の問題 ・相続人全員で不動産を共有名義にした結果、以降の売却や修繕の意思決定がスムーズに行えず、管理費用の負担や売却益の分配で争いが生じた。
居住権の争い ・複数の相続人が同じ不動産に住み続けたいと主張し、誰が居住権を持つかについて対立が発生した。最終的に調停に持ち込まれた。
負債相続問題 ・被相続人が該当の不動産にローンを抱えていたため、相続人がその負債を引き継ぐか放棄するかで意見が分かれ、相続手続きが遅延した。
未登記不動産の発見 ・被相続人名義の未登記不動産が相続後に発見され、相続人が追加の登記手続きや遺産分割協議を再度行う必要が生じた。
相続人の一人が海外在住 ・相続人の一人が海外在住で手続きが複雑化し、現地の法律や手続きも絡んでスムーズな遺産分割が困難となった。
遺言書の不備 ・被相続人の遺言書が不明瞭で、不動産の具体的な分配方法が明示されていなかったため、相続人間で解釈の違いが生じた。
長期間の相続未処理 ・相続手続きを一定期間放置した結果、相続人の中で死亡者が出て、その子どもが新たな相続人となり、分配がさらに複雑化した。

これらのトラブルを避けるためには、事前に遺言書を作成し、明確な分割方法を示しておくことや、事前に遺産の内容や分割のめどを検討しておくことが有効です。また、専門家の意見を取り入れ、公正な協議を進めることが重要です。

相続後の負担を軽減するための遺言書の有効活用

相続時の法的紛争を防ぐためには、遺言書の作成と遺産分割協議の適切な進行が重要です。遺言書は、相続人にとって重要な道標となり、相続後の負担を大幅に軽減することができます。遺言書には、具体的な分割方法や相続人間の調整事項を記載することで、相続手続きを円滑に進める助けになります。
遺言書は、公証役場での公正証書遺言がおすすめです。遺産分割協議では、相続人全員の意見を尊重し、公平に分割することが求められます。

遺言書には主に以下の種類があります。

自筆証書遺言 被相続人が自分で書いた遺言書。書式や内容に不備があると無効になる可能性があるが、家庭裁判所の検認が必要であり、手間がかかる。
公正証書遺言 公証人の立会いのもとで作成される遺言書。法的効力が高く、無効となるリスクが低い。検認も不要で、信頼性が高い
秘密証書遺言 内容を秘密にして公証人に提出する遺言書。自筆証書と公正証書の中間的な形式だが、利用頻度は低い。

遺言書の有効活用は、以下の点に留意しましょう。

明確な分配方法の指定
遺言書に具体的な分配方法を明記することで、相続人間の争いを防ぐことができます。誰にどの財産をどれだけ与えるかを明確にすることで、遺産分割協議の手間を減らし、スムーズな相続手続きを実現します。

特定の相続人の配慮
被相続人に対し、介護などの特別な寄与をした場合には、その相続人に対して特別な配慮を示すことができます。これにより、不公平感を減らし、相続人間の関係を円滑に保つことが可能です。

 遺留分に対する配慮
兄弟姉妹を除く法定相続人には遺留分と呼ばれる最低限の相続権が保障されています。遺言書で遺留分を侵害するような配分をすると、遺留分侵害額請求が発生する可能性があります。そのため、遺留分に配慮した内容にすることで、相続トラブルを未然に防ぐことができます。

相続税対策
遺言書を活用して相続税の負担を軽減することも可能です。例えば、生前贈与や生命保険を活用して相続財産を減少させる方法や、小規模宅地等の特例を適用するための具体的な指示を遺言書に記載することができます。

専門家の助言を活用
遺言書を作成する際には、弁護士や税理士などの専門家の助言を受けることが重要です。専門家の助言を受けることで、法的に有効な遺言書を作成し、相続税対策やトラブル防止策を講じることができます。

遺言執行者の指定
遺言執行者は、遺言書に基づいて財産の分配や手続きを実行する責任者です。遺言書に遺言執行者を明記することで、手続きがスムーズに進みます。遺言執行者には、信頼できる人物や専門家を選ぶことが推奨されます。

定期的な見直し
遺言書は一度作成すれば終わりではありません。被相続人の財産状況や家族構成に変化があった場合には、遺言書を見直し、必要に応じて修正することが重要です。これにより、つねに最新の状況に対応した内容に保つことができます。
また、遺言執行者を指定することで、遺言内容の実行を確実に行うことができます。遺言書の作成には、法的な要件を満たす必要があるため、専門家の助言を受けることが推奨されます。

実家の相続で専門家に相談するべきこと

実家の相続に際しては、専門家の助言が不可欠です。司法書士や弁護士、不動産投資の専門家の役割や選び方について詳しく解説します。また、相続後の資産管理や遺言執行についても、専門家のサポートを受けることでスムーズに進めることができます。

司法書士と弁護士の役割と選び方

司法書士は、不動産登記や遺産分割協議書の作成など、相続手続きに関する法律事務を担当します。一方、弁護士は、相続紛争の解決や法的助言を提供します。
また、一般的な方法としては、司法書士や弁護士への窓口、一次対応の依頼先として、不動産会社をおすすめします。これらは不動産をめぐる遺産相続の事例や査定を通じた資産価値の把握に精通しているため、適切な回答や相談先を得られる可能性が高いでしょう。
売却してお金で分けるほうがいいか、誰かが受け継いでいくのがいいかなども相談対象です。
選び方としては、Webサイトなどで実績や専門分野を確認し、自分のニーズに合った専門家を選ぶことが重要です。また、初回相談での対応を見て、信頼できるかどうかを判断しましょう。

不動産投資の専門家に相談するメリットと注意点

不動産投資の専門家に相談することで、相続した実家の有効活用方法について具体的なアドバイスを得ることができます。
市場動向や投資リスクを踏まえた最適な賃貸や売却のタイミングを提案してくれます。ただし、物件の査定や運用は、複数の意見を聞くことが重要です。また、過度な期待を避け、現実的なアドバイスを求める姿勢が大切です。 

相続後の遺言執行と資産管理のサポート

 相続後の資産管理と遺言執行は、相続財産の評価や運用計画の立案が重要で、金融機関や税理士と連携することが有効です。遺言執行は、遺言書に基づき、相続人間の調整や相続財産の分配を行います。専門家のサポートにより、法的なトラブルを避け、スムーズな相続手続きを実現できます。
また、不動産の資産管理については、不動産会社をパートナーとして管理委託とアセットマネージメントをおすすめします。
管理委託とは、土地オーナー様が物件の運営・管理を専門の不動産管理会社に任せることを指します。管理会社は、入居者募集や契約管理、家賃の徴収、修繕・清掃など、日常の管理業務を代行します。

管理委託の具体的な業務内容は以下のとおりです。

  • 入居者募集 入居者を募集し、内見の対応や入居審査を行います。広告の掲載や不動産ポータルサイトの利用などが含まれます。
  • 契約管理 入居者との契約書の作成、更新手続き、解約手続きを行います。また、敷金や保証金の管理も行います。
  • 家賃徴収 毎月の家賃を入居者から徴収し、未払いが発生した場合の督促業務も行います。
  • 修繕・清掃 物件の維持管理のための修繕や定期清掃を手配します。緊急のトラブル対応も含まれます。
  • クレーム対応 入居者からのクレームや問い合わせに対応し、トラブルを未然に防ぐための調整を行います。

管理委託には以下のように、多くのメリットがあります。

  • 専門知識の活用 専門の管理会社が運営するため、効率的で効果的な管理が期待できます。
  • 時間の節約 オーナーが直接管理しなくてもよいため、時間と労力を節約できます。
  • 入居率の向上 管理会社のネットワークとマーケティング力を活用することで、入居率を高めることができます。
  • リスク管理 トラブル対応や法的手続きに精通した管理会社が対応するため、リスクを最小限に抑えることができます。

アセットマネージメントとは、不動産投資において、資産運用を専門的に行うことを指します。土地活用におけるアセットマネジメントのおもな役割は、投資のパフォーマンスを最大化し、資産価値を向上させることです。具体的な業務内容は以下のとおりです。

  • ポートフォリオの管理 複数の不動産物件を保有している場合、各物件の収益性やリスクを評価し、最適なポートフォリオを構築・維持します。
  • 資産価値の向上 市場調査を行い、物件のリノベーションやリプレースメントを提案・実施することで、資産価値の向上を図ります。
  • 財務管理 収支計画を作成し、キャッシュフローの管理を行います。これにより、健全な財務状態を維持し、投資リターンを最大化します。
  • リスク管理 市場の変動や法規制の変更に対応し、リスクを最小限に抑えるための対策を講じます。また、保険の見直しや適切なリスクヘッジを行います。

相続は遺産分割も大切ですが、受け継いだものをどう活かすかが正念場です。老後の生計や、次世代への相続へ向けて、積極策を取りたい方はこちらからお問い合わせください

実家を相続して有効活用するための具体的な方法とは?

実家を相続した後、その土地をどのように有効活用するかが重要です。用途地域の確認や具体的な活用方法の選択は、相続財産を最大限に活用するための鍵となります。この項では、用途地域の確認方法や不動産賃貸、リノベーション、売却などの具体的な方法について詳しく解説します。

用途地域と13種類の区分を改めて確認しよう

用途地域とは、その土地がどのように利用されるべきかを示す地域区分です。日本では13種類の用途地域があり、それぞれ建築できる建物の種類や用途が異なります。
土地の用途地域は市町村の都市計画課が発表している資料不動産会社で詳細を確認しましょう。 

相続した土地の区分を確認する

土地の区分を確認するには、法務局や市町村の都市計画課を訪れるとよいでしょう。また、インターネットで提供されている用途地域図を活用することもできます。これにより、建築可能な建物の種類や用途を把握し、具体的な活用方法を検討する基礎情報を得ることができます。
日本全国の土地は以下に分類され、建てられる建物の用途が制限されています。

市街化区域 市街化を促進する地域 ・「住居系」「商業系」「工業系」の3系統・13種類の用途地域に区分され、建てられる施設の種類や規模が制限される
・住居系の地域では住宅、賃貸住宅、小規模の商店などが建てられる
市街化調整区域 市街化を一時抑制する地域 ・人が住むための住宅や商業施設などを建築することは原則認められない(既存の建て替えや小規模のものなど、例外あり)
・賃貸住宅の新築も、原則認められない
非線引き区域 指定のない地域 ・区域区分の制限を受けない地域
・地方の山間部や、土地利用の進んでいないエリアが主体

 

どのような活用方法があるのかを知る

土地の活用方法としては、不動産賃貸、リノベーション、売却などが考えられます。それぞれの方法にはメリットとデメリットがあり、自分の目的や状況に応じて最適な方法を選ぶことが重要です。不動産投資の専門家に相談することで、より具体的な活用プランを立てることができます。

たとえば、駐車場は用途制限がありませんが、月極以外の料金制や、一定規模以上のものは、駐車場法で届け出や、構造等の基準指定が適用されます。住居系区域の実家の土地であれば、周辺のニーズに応じてアパートへの建て替えが可能です。いま人気が高まっている賃貸ガレージハウスは、規制の厳しい低層住居専用地域でも、総面積600平方メートルまでなら建てることができます。

有効活用のための具体的な方法と注意点

実家を有効活用するためには、事業目的や用途地域から適切な活用方法を選ぶことが重要です。不動産賃貸、リノベーション、売却などの具体的な方法と、それぞれのメリット・デメリットを理解することで、最適な選択を行うことができます。
次項では、実家の有効活用の中でも収益性の高い、不動産賃貸業のメリット・デメリットを詳しく解説します。

不動産賃貸のメリットとデメリット

実家を賃貸にすることで、安定した収入を得ることができます。しかし、入居者の募集や管理、修繕費用などの負担も伴います。賃貸市場の動向を把握し、適切な家賃設定を行うことが成功の鍵です。また、専門の不動産管理会社に委託することで、管理の手間を軽減することも可能です。
以下は、不動産賃貸のメリットとデメリットを抽出したものです。

メリット

内容

収益の安定性 他の投資手段と比較して、収益の計画を立てやすい。
資産価値 収益を生む資産となる。
税制面の優遇措置 相続の際には低く評価できる。賃貸収入は所得税の課税対象になるが、赤字の場合損益通算が可能。
運用方法 事業用の借り入れが起こせ、手元資金を補って運用ができる。計画的に売却も可能。

 

デメリット

内容

税金面管理の負担 固定資産税などの納税が必要。
(相続後の)維持費用 維持費用は増えるが、経費で計上可能。

上記をさらに細かく見てみましょう。

不動産賃貸のメリット
・安定した収益源となる
不動産賃貸は、毎月安定した家賃収入を得ることにつながります。長期にわたって入居者がいる限り、一定のキャッシュフローが期待できるため、生活費やその他の投資のための資金として活用できます。

・資産価値の上昇への期待
不動産は、現在価値が上昇する傾向にあります。地価や物件の価値の上昇に伴い、資産価値の増加も期待でき、将来的に売却する際に利益を得られる可能性があります。

・インフレ対策になる
不動産は実物資産であるため、インフレに強いとされています。インフレが進むと物価が上昇し、家賃も上がる可能性があるため、実質的な資産価値の維持が期待できます。

・税制優遇を受けられる
不動産賃貸には、税制上の優遇措置があります。例えば、減価償却費や修繕費、ローンの利息などを経費として計上することで、所得税や住民税の負担を軽減することができます。

・多様な選択肢がある
不動産賃貸は、住宅用、商業用、オフィスビル、アパートなど、多様な投資先があります。それぞれの不動産タイプには特有のリスクとリターンがあり、土地オーナー様ニーズや戦略に応じて選択することができます。

・レバレッジ効果
土地活用では、金融機関からの融資を利用することで、自己資金以上の物件を購入することが可能です。このレバレッジ効果により、少ない自己資金で大きな収益を得ることができる可能性があります。

不動産賃貸のデメリット

・空室リスク
不動産賃貸における最大のリスクの一つが空室リスクです。入居者がいない場合、家賃収入が途絶えるため、ローンの返済や維持管理費用などの固定費用が負担となります。地域の需要や物件の魅力を十分に考慮して物件選びを行い、運用後も継続して入居者にとって魅力的な環境を維持することが重要です。

・管理の手間と費用
不動産賃貸には、物件の維持管理が不可欠です。日常の清掃や修繕、入居者対応など、多くの管理業務が発生します。これらの業務を専門の管理会社に委託することも可能ですが、その分費用がかかります。

・初期投資の高さ
不動産の購入には多額の初期投資が必要です。自己資金だけでなく、ローンを組む場合には、金利や諸費用も考慮する必要があります。また、物件取得後も維持管理や修繕に伴う費用が発生します。

・市場リスク
不動産市場は景気や地域の経済状況に大きく影響されます。不動産価格や家賃相場が下落するリスクもあり、これにより投資のリターンが減少する可能性があります。市場の動向をつねに把握し、適切な対応が求められます。

・流動性の低さ
不動産は流動性が低い資産です。売却する際に時間がかかることが多く、急な資金が必要な場合には対応が難しくなります。また、市場の状況によっては希望する価格で売却できない可能性もあります。

・法的なリスク
賃貸経営には、さまざまな法的規制が関わります。例えば、借地借家法や建築基準法、消防法などの規制に従う必要があります。法的トラブルが発生した場合、専門家の助けを借りることが必要となり、そのための費用も考慮する必要があります。

事前にメリットとデメリットを把握した上で、不動産賃貸を始めましょう。

実家をリノベーションして収益を上げる方法

実家をリノベーションすることで、賃貸物件としての価値を高め、収益を上げることができます。リノベーションのポイントとしては、需要に合ったデザインや設備を取り入れることが重要です。

リノベーション費用とその後の収益を比較し、投資対効果をしっかりと計算することが必要です。

実家の売却手続きの流れと注意点

実家を売却する際には、不動産会社に依頼し、売却手続きを進めます。売却価格の設定や契約書の作成、引き渡しまでの流れを把握し、適切に対応することが重要です。
また、売却には税金がかかります。計算した結果、所得税が生じないと分かっても、それが特例などの控除を利用した前提である場合、特例を申請する目的での確定申告が必要です。事前に税務署に確認し、確定申告の納税準備をしておくことが求められます。 

相続した実家を有効活用して収益をあげよう

 相続した実家を有効活用し、収益を上げるためには、用途地域の確認や適切な活用方法の選択がポイントとなります。不動産賃貸やリノベーション、売却など、自分に合った方法を選び、専門家の助言を受けながら進めることで、最大限の収益を得ることができます。
このように、生まれ育った実家にも、実は様々な活用方法の可能性があります。しかし、立地に合った事業の企画と詳細な試算は必須となります。

フィル・カンパニーでは、さまざまなケースの土地活用を、企画から運用までサポートいたします。実家の土地の未来について、土地活用のプロに相談したい方はこちらから!

この記事の監修者

黒部 豪

税理士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/GKコンサルティング合同会社 代表社員

東京都出身。明治大学理工学部物理学科卒業。大学卒業後はIT会社に勤務していたが、一念発起して税理士に。都内の税理士事務所に約10年ほど勤務したのち、2021年にくろべ税理士事務所を開業。法人や個人事業主の税務顧問以外に、相続やファイナンシャルプランなどのスポット案件も行う。

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