フィル・パークマガジン 建築費高騰の推移でわかるアパート経営の成功戦略
建築費高騰の推移でわかるアパート経営の成功戦略
アパート経営を検討されている土地オーナーのみなさま、建築費の高騰にお悩みではありませんか?近年、アパート建築費は急激に上昇し、計画の見直しを迫られる方も少なくありません。
本記事では、建築費高騰の推移やその背景・今後の展望、そして賢明な判断のための具体的な対策まで、専門家の知見を交えて徹底解説します。アパート経営の成功に向けた道筋を、一緒に探っていきましょう。
アパート建築費高騰の現状
近年、アパート建築費が急激に上昇し、土地オーナー様のアパート建設計画に大きな影響を与えています。過去10年間以上に渡り上昇し続けており、とりわけ2021年以降は急激に上昇しています。
アパート建築費の推移と現状
アパート建築費の高騰は、近年の不動産業界における重要な課題となっています。
国土交通省が発表する建設工事費デフレーター(2015年度を100とした指数)によると、2023年10月時点で建築総合分野の指数は123.5を示しており、コロナ禍前の2020年2月の108.2から大幅に上昇しています。詳しくは「2-1.建築費高騰のおもな要因」でご説明します。
この建築費の高騰は、賃貸マンション建設にも大きな影響を与えており、投資回収期間の長期化や賃料の上昇につながっています。これらの状況は、アパート経営を検討する土地オーナー様にとって大きな課題となっており、今後の市場動向に注目が集まっています。
地域別の建築費高騰状況
近年、全国的に建築費の高騰が続いています。国土交通省の建設工事費デフレーターによると、2022年度第3四半期の建設工事費は、2015年度を100とした場合、全国平均で112.7まで上昇しています。
地域別に見ると、関東地方が最も高く114.5、次いで中部地方が113.6、近畿地方が112.9と続きます。一方、最も低いのは北海道の109.8ですが、それでも2015年度比で約10%の上昇となっています。
建築費高騰の主な要因は、原材料費の上昇と人件費の増加です。特に鉄鋼製品や木材の価格上昇が顕著で、例えば異形棒鋼の価格は2021年6月から2022年6月の1年間で39.1%上昇しています。
また、建設業の人手不足も深刻で、特に地方部では若年層の人材確保が難しくなっています。これにより人件費が上昇し、建築費を押し上げる要因となっています。
地域によって建築費の上昇率に差があるのは、地域ごとの需要の違いや、人手不足の程度、資材調達の難易度などが影響していると考えられます。今後も建築費の動向には注意が必要です。
建築費高騰が与える影響
建築費の高騰は、アパート経営に多面的な影響を与えています。
- 投資回収期間の長期化:初期投資額の増加により、投資回収に要する期間が延びています。以前は15〜20年程度だった回収期間が、現在では25〜30年以上かかるケースも珍しくありません。
- 収益性の低下:建築費上昇分を家賃に転嫁できない場合、収益率が低下します。
- 資金調達の難化:初期投資額の増加に伴い、必要な借入金額も増加。金融機関の審査が厳格化する傾向にあります。
- 計画の見直し・延期:予算オーバーにより、規模縮小や計画延期を余儀なくされるケースが増加しています。
アパート建築費の高騰は、確かに大きな課題です。しかし、適切な対策と戦略的なアプローチを取ることで、この困難を乗り越え、成功への道を切り開くことができます。
建築費高騰のおもな要因と今後の予測
アパート建築費の高騰は、複数の要因が複雑に絡み合った結果です。資材価格の上昇、人手不足、環境規制の強化などがおもな原因となっています。しかし、新技術の導入や政策変更により、状況が好転する可能性も秘めています。
建築費高騰のおもな要因
アパート建築費の高騰には、いくつかの重要な要因があります。これらの要因を理解することで、今後のアパート経営計画に役立てることができるでしょう。以下におもな要因を詳しく見ていきましょう。
1. 資材価格の上昇
近年、建築費における資材価格の上昇が顕著となっています。内閣府の報告によると、2021年以降、建設工事費デフレーターが急激に上昇しており、これは主に建設資材価格の高騰が要因とされています。
国土交通省の調査によれば、2021年後半から原材料費の高騰やエネルギーコストの上昇等により、各建設資材価格が大幅に上昇しました。具体的には、建設資材物価指数が2020年第4四半期を100とした場合、2022年第3四半期には建築用資材価格が126.3、土木用資材価格が118.0まで上昇しています。
この資材価格の上昇は、建設工事全体のコストに大きな影響を与えています。内閣府の分析によると、2021年1月から2024年3月までの37か月間で、建設資材の高騰と労務費の上昇により、仮設費・経費などを含めた全建設コスト(平均)は19~22%上昇したと推計されています。
公共工事においては、この価格上昇に対応するため、スライド条項(建設工事の契約において、契約締結後に賃金や物価水準が変動した際に、請負代金額の変更を請求できる制度)の適用や予定価格への最新取引価格の反映など、価格転嫁の取り組みが進められています。しかし、資材価格の上昇は公共投資の実質値を押し下げる要因となっており、今後の公共投資の動向を注視する必要があります。
建設業界全体としては、この資材価格の高騰に対応するため、適切な価格転嫁や契約内容の見直しなどの対策が求められています。
2. 人手不足と労務費の上昇
建築費における人手不足と労務費の上昇は、日本の建設業界が直面する重要な課題となっています。
国土交通省のデータによると、建設業就業者数は平成9年のピーク時685万人から令和3年には485万人まで減少しており、約29%の減少となっています。特に、55歳以上の就業者が35.5%を占める一方、29歳以下は12.0%にとどまっており、高齢化と若手人材の不足が顕著です。
この人手不足に対応するため、労務費は継続的に上昇しています。公共工事設計労務単価は2013年から11年連続で上昇しており、2020年以降の3年間だけでも16%上昇しています。さらに、2024年度には前年度比5%を十分に上回る賃上げが要請されています。
労務費の上昇は建築費全体に大きな影響を与えています。一般社団法人日本建設業連合会のデータによると、2021年1月から2024年6月までの40か月間で、建設資材の高騰と労務費の上昇により、全建設コスト(平均)は20〜23%上昇しています。
この状況に対し、国土交通省は担い手の処遇改善、働き方改革、生産性向上を一体として進める必要性を指摘しています。しかし、人口構造の変化や若年層の建設業離れなどの根本的な問題もあり、今後も建築費における人件費の上昇傾向は続くと予想されます。
3. 環境規制と省エネ基準の強化
アパート建築における環境規制と省エネ基準は近年強化されており、2025年4月からは原則全ての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合が義務付けられます。
この背景には、日本のエネルギー消費量の約3割を占める建築物分野の対策が不可欠であるという認識があります。改正建築物省エネ法では、中規模建築物への適合義務制度の対象拡大や、小規模住宅・建築物への説明義務制度の創設などが盛り込まれています。
具体的な省エネ基準としては、外皮性能と一次エネルギー消費量の2つの基準があります。外皮性能は断熱性能を示し、一次エネルギー消費量は冷暖房、換気、照明、給湯などの設備が消費するエネルギーから再生可能エネルギーを差し引いたものです。
これらの規制強化により、アパート建築においても高い省エネ性能が求められるようになり、建築コストの増加が予想されます。一方で、光熱費の削減や居住者の快適性向上、建物の長寿命化などのメリットも期待されています。
建築費高騰に影響を与える今後の変動要因
建築費の今後の動向には、いくつかの変動要因があり、その動きを注視することで、より賢明なアパート建設のアパート建設の投資判断が可能になるでしょう。
1. 技術革新の影響
建設業界におけるデジタル化と自動化の進展は、建築費の抑制に寄与する可能性があります。具体的には以下のような技術が注目されています。
- BIM(Building Information Modeling):建築プロジェクト全体をデジタル技術により管理する手法により、コスト削減の可能性
- プレハブ工法の進化:建築物の一部又は全ての部材をあらかじめ工場で製作し、建築現場で組み立てる建築工法により、コスト削減の可能性
新技術の導入を積極的に検討している建設会社との連携も、コスト抑制の一策となるでしょう。
2. 政策変更の可能性
政府の住宅政策や経済政策の変更も、建築費に大きな影響を与える可能性があります。注目すべき政策動向には以下のようなものがあります。
- 建設業界の働き方改革:労働環境改善による生産性向上の可能性
- 資材輸入規制の緩和:海外からの安価な資材調達による価格安定化の可能性
- 省エネ住宅への補助金拡大:環境対応コストの一部相殺の可能性
これらの政策変更は、建築費の上昇を抑制する方向に働く可能性があります。
政策動向にアンテナを張り、柔軟に対応することが重要です。
アパート建築費を抑える具体的戦略
アパート建築費の高騰に対抗するため、コスト削減のための実践的アプローチが不可欠です。本項では、成功事例を交えながら7つの有効な戦略をご紹介します。これらの方法を組み合わせることで、建築費を削減できた事例もあります。どのような戦略があるかを知り、知識と経験を有した施工会社やプロを見極め相談することが大切です。賢明な土地活用と持続可能なアパート経営を実現するため、以下の戦略をぜひ参考にしてください。
設計の最適化とコストパフォーマンスの向上
建築費を抑えるには、まず設計段階からコスト意識を持つことが重要です。
無駄を省いた効率的な間取りや、規格品を使うことで修理や交換などの維持管理コストを考慮した設計を心がけましょう。
- シンプルな矩形プランの採用:複雑な形状を避けることで、資材の無駄を減らし、工期も短縮できます。
- 標準化された部材の使用:特注品を避け、既製品を積極的に活用することでコストダウンが図れます。
建築資材の選定
建築資材のコストは全体の40〜50%を占めるため、ここでの削減効果は大きいです。しかし、品質や耐久性のバランスを取ることが重要です。
- 海外製品の活用:品質を確認した上で、コストパフォーマンスの高い海外製品を検討します。
- まとめ買いによる交渉:複数のプロジェクトでの一括発注や、他のデベロッパーとの共同購入で価格交渉力を高めます。
- 代替材料の検討:従来の材料に代わる新素材や再生材料の採用で、コストと環境負荷の両面でメリットを得られる可能性があります。
工法の見直しと新技術の導入
従来の工法にとらわれず、新しい建築技術や工法を積極的に取り入れている施工会社を選ぶことで、大幅なコスト削減と工期短縮が可能になります。
- プレハブ工法の採用:工場での部材製作により、現場作業を減らし品質向上とコスト削減を両立します。
- モジュラー工法:規格化されたユニットを組み合わせる方式で、工期短縮と労務費削減が可能です。
- 3Dプリント技術:一部の構造物や装飾部分に3Dプリント技術を活用し、製作コストを低減します。
エネルギー効率を考慮した設計
初期投資は多少増えても、長期的な運用コストを考えると、エネルギー効率の高い設計は非常に重要です。
- 高性能断熱材の使用:冷暖房効率を上げ、共有部分の光熱費負担を軽減します。
- 自然光の活用:窓の配置や大きさを工夫し、照明コストを削減します。
- 再生可能エネルギーの導入:太陽光パネルや地中熱利用システムなどの導入を検討します。
施工会社の選定と契約方法の工夫
上記のような提案をもらえる適切な施工会社の選定と、効果的な契約方法の採用は、建築費削減の大きな鍵となります。
- 複数社による相見積もり:複数社で競わせることにより、適正価格を引き出します。
- 設計施工一括発注方式:設計と施工を一社に任せることで、全体最適化とコスト削減を図ります。
建築費が高騰しても安定経営を実現するポイント
最後に、建築するアパートの立地や地域特性を十分に考慮することが、重要ポイントです。
- ターゲット層の明確化:学生向け、ファミリー向けなど、ターゲットを絞った設計で無駄を省きます。
- 地元業者の活用:地域の事情に詳しい地元業者を活用し、スムーズな施工と地域との良好な関係構築を図ります。
現代のライフスタイルにマッチした新しい住まい方を提案することが重要で、フィル・カンパニーが提供するプレミアムガレージハウスは、1階にガレージ、2階に居住空間を備えた賃貸住宅の形態で、特に車やバイクを愛する人々に人気があります。この住宅は、趣味やビジネスのスペースとしても利用できるため、多様なライフスタイルに対応しています。
<特徴と利点>
ガレージと居住空間の融合: プレミアムガレージハウスは、車庫と住居が一体となった設計で、愛車を常に近くに置くことができます。これにより、雨や風から愛車を守りつつ、自宅でメンテナンスやカスタマイズを楽しむことが可能です。
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- 多様な利用方法:ガレージは単なる駐車スペースではなく、趣味の作業場やリモートワークオフィスとしても利用できます。これにより、生活と趣味を両立させることができるため、多くの人々に支持されています。
- セキュリティと快適性:プレミアムガレージハウスには、電動シャッターやセキュリティシステムが完備されており、大切な愛車を24時間365日見守ります。また、居住空間も快適さを追求しており、リビングダイニングなどが設けられています。
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建設費高騰時代のアパート建築判断基準
建築費高騰時代のアパート建設では、従来の判断基準を見直し、新たな指標に基づいた意思決定が不可欠です。建築費が高騰していてもアパート経営の成功を収めるための、実践的かつ具体的な判断基準をご紹介します。
アパート経営判断の新たな指標
従来のアパート経営では、単純な利回り(※物件価格に対する賃料収入のみを基にした簡便な指標で、経費やリスクを考慮しないもの。)や回収期間が重視されてきました。
しかし、建築費高騰時代には、より包括的な指標が必要です。以下に、新たに注目すべき指標をご紹介します。
- 修正キャップレート:運営費用を考慮した実質的な利回り
- 建物の長期価値:省エネ性能や耐震性能を加味した資産価値の持続性
単純な利回り計算だけでなく、上記の指標を総合的に判断することがポイントとなります。
リスク評価の重要性
建築費高騰時代には、アパート建設へのリスクの慎重な評価が不可欠です。これまで以上に以下のリスクを考慮に入れましょう。
- 建築費の変動リスク:資材価格や人件費の更なる上昇の可能性
- 金利変動リスク:借入金利の上昇による収益性への影響
- 需要変動リスク:人口減少や働き方の変化による入居率への影響
- 規制リスク:建築基準法改正や税制変更による影響
これらのリスクを定量化し、アパート建設判断に組み込むことで、より堅実な意思決定が可能になります。
以上の新たな判断基準を活用することで、建築費高騰時代においても賢明な決定が可能となります。
建築費高騰時代におけるアパート経営の成功と自己診断のポイント
アパート建築費高騰の時代にあっても、適切な戦略と行動指針により、長期的に収益性の高いアパート経営は可能です。
アパート経営成功のための3つの柱
アパート経営の成功には、以下の3つの柱が重要です。
- コスト管理:建築費の抑制と効率的な運営
- 収益最大化:適切な家賃設定と高い入居率の維持
- リスク分散:多様な資金調達と柔軟な経営戦略
これらの柱を意識しながら、具体的な行動に移すことが成功への近道となります。
アパート経営成功のための自己診断チェックリスト
以下のチェックリストを用いて、あなたのアパート経営戦略を自己診断してみましょう。
- 建築費の詳細な内訳を把握し、削減可能な項目を特定していますか?
- 地域の需要と供給バランスを考慮した適切な規模と仕様を計画していますか?
- 長期的な維持管理コストを考慮した設計・材料選択をしていますか?
- 複数の金融機関から融資条件を比較検討していますか?
- 省エネ住宅ポイントなどの補助金制度を活用していますか?
各項目に「はい」と答えられる数が多いほど、成功への準備が整っているといえるでしょう。みなさまも、この記事で紹介した戦略を実践し、成功への道を歩んでいただきたいと思います。
垣内 典之
株式会社 PROPUP 代表取締役/一級建築士