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2024.07.19 アパート・マンション経営土地活用

アパート経営の成功率は意外と低い?初心者が失敗する理由と回避策

この記事の監修者
垣内 典之一級建築士垣内 典之

定収入が得られ、節税でき、生命保険がわりにできるなど、アパート経営は魅力あふれる事業です。しかし空室・入居者トラブル・修繕など、他の土地活用手段にはないリスクも伴います。
そこで本記事ではアパート経営を目指す方向けに、成功率を高めるための方法、失敗例と回避策などを含め、アパート経営の始め方を解説します。

アパート経営初心者向けの基本知識

アパート経営は不動産「投資」などと表現されます。確かに利回りは高く、暴落のない安定した投資と見ることもできるでしょう。しかし、プロの宅建業者のサポートを受けながら、人と建物に関わり管理・運営に携わるので、やはり経営と捉えた方がいいでしょう。
まずアパート経営成功率を上げるためにも基本的な流れや特徴など、前提となる基礎知識を学びましょう。

アパート経営の基本的な流れ

アパート経営の計画から運営開始までのステップは、以下のように進行します。

  1. 事業企画・資金計画
  2. 資金調達
  3. 建築を依頼する会社の選定
  4. 建築計画
  5. 入居者募集
  6. 賃貸の開始

上記のすべてのステップで、専門的なアドバイスやサポートを受けることができますが、何を行い、何を注意すればいいか、以下でご説明します。

経営のメリットとデメリット

アパート経営上の大きなメリットは、以下の4つです。

  • 安定した所得
  • 節税対策
  • リタイア後の生活資金
  • 生命保険の機能

不動産の経営、中でもアパート経営は他の投資などと異なり、空室が出ても入居中のお部屋の家賃で運営が可能です。安定した所得や返済の原資を得られるでしょう。生活費の補てんや、将来への備えが開始できます。
また、アパート経営などの土地活用で、相続税や固定資産税の負荷の軽減が可能です。現金での相続は、そのまま課税対象になりますが、土地であれば固定資産税評価額となり、現金に比べて20~30%安い評価で課税対象にできます。
その土地に賃貸住宅を建築すれば、「貸家建付地」としてさらに評価減となり、相続税の評価額が15〜24%程度減少します。 また、「小規模宅地等の評価減」を適用すると、土地面積200平方メートルを上限に評価額が50%減少します。このようにはっきりした効果が見込めます。

相続税評価の減らし方

現金のままでは1億円

路線価による評価は実勢価格の8割と言われるため
土地:8,000万円

貸家建付地の評価額:借地割合0.7借家割合0.3として
8,000万円×(1-0.7*0.3)=6,320万円

小規模宅地等の特例
6,320万円×0.5=3,160万円

また、近年は公的年金額の削減や支給開始の遅れ、物価の上昇など、老後に想定している収入が大きく減る不安があります。預貯金で持っていると、円安やインフレへの対応ができない上、前述のように節税もできません。
アパート経営は、資産価値を目減りさせずに継続的な収益が得られるので、年金を補う老後の生活資金として、理想的な手段といえるでしょう。
老後の備えの段階でも、生活設計上まだ高額の生命保険料が必要な方は多くいます。
そして、アパートを持てばもしもの時に団体信用生命保険がおりて、賃貸物件の債務がなくなります。返済のない家賃収入を家族に残すことができるため、生命保険として活用される方も多いです。

反面、想定される代表的なデメリットは以下の3つです。

  • 空室リスク
  • 老朽化による大規模修繕費
  • 災害リスク

空室期間が長引けば、想定していた収入が得られず、回収に時間がかかります。原因としては、事業計画の際に、ニーズの想定と将来の予測が足りなかった可能性があります。また、運営中に十分な集客の動きが足りなかったことも考えられます。
老朽化と、それに伴う修繕は必ず必要となりますし、その際は、数百万円単位の支出もあり得ます。また、日常でもエアコンや給湯器の故障などによる交換の出費は、つねに想定が必要です。しっかり予測を立て、予算を計上していない場合には、あわててしまうことになります。
地震や台風などの自然災害や火災も、アパート経営に起こりうるデメリットです。現在の居住者の暮らしへの配慮から、迅速な対応が求められる場合もあるでしょう。
オーナー様と入居者の保険の加入内容は、補償や特約などに理解が足りないと、思わぬ出費で経営が苦しくなる可能性があります。
上記の点を踏まえ、つねに予測と計画のもとで、リスクとリターンのバランスをとっていくことが、アパート経営の成功率を上げるポイントです。

初心者が陥りやすい失敗

アパート経営の経験が浅いことで、失敗することがないよう、以下の点に着目しましょう。失敗事例から、回避策を学ぶことで成功率をあげることができます。

  • 立地が良くなく空室が埋まらない
  • コスト削減で競争力不足の物件に
  • 管理不足で入居期間の短い物件に
  • 資金繰りが悪くローン滞納
  • 建物のメンテナンス不足で入居率減

上記の失敗は企画段階での問題と、運用開始後の問題に分けられます。ただし、企画段階での失敗も、あとで挽回するというのは、不可能ではありません。立地の悪さや設備の不足は、補う魅力を付加したり、ターゲットを見直したりすれば、改善に向かうこともあるでしょう。

また、時代の流れの変化に合わせて、アパート経営も浮き沈みは存在します。しかしこの記事では、失敗を未然に防ぐための回避策や少しでもアパート経営の成功率あげる方法を、以下で解説します。

初めてのアパート経営は、分からないことが多く不安です。利回り高く安定した収益へのサポートをご希望の方はフィル・カンパニーまでご相談ください。

資金計画と融資の活用

余裕を持った資金計画は、良好な収入を生み続けるためにも必要な要素です。たとえば修繕などが後手に回っていると、自然に入居率が下がって収支が悪化します。
したがって融資を受ける際も、予備費の確保できる、無理のない借入が大切です。
長期の収支計画を立案する際は、以下の出費やリスクを想定します。

収支計画の想定

歳入 家賃、敷金預かり他
ランニングコスト ローンの返済・不動産会社へ支払う管理費・固定資産税・火災保険など
計画出費 15~20年ごとの大規模修繕費・原状回復の際のオーナー様負担分のリフォーム費用
リスク想定 一定数の空室がある想定

借入の際の自己資金は、多いほうが返済月額も下げられるので、運営開始後のキャッシュフローにも余裕ができ、金利が上昇した際などにも対応できます。
しかし、自己資金の一部は予備費として手もとにもある程度残しておく必要もあるので、物件や予算に合わせて、使途のバランスを検討する必要があります。

また、ローンは有利な条件で借りられる金融機関を探しましょう。建築を依頼する会社と提携している「提携ローン」や、ご自身のお付き合いの深い金融機関で、金利優遇を受けられるケースもあるので、よく比較します。

初期費用の見積もり

初期費用は建てるアパートの立地、構造、大きさが決まると、竣工時までの費用が概算できるようになります。

下記はアパート建築から入居者募集までの費用項目と目安です。土地所有者の方向けなので、土地も購入される方は、土地の価格と仲介手数料、登記関連の費用が追加となります。

支出するタイミング 項目 予算目安
計画時に必要な費用 現況測量費(未実施の場合) 30万円程度
地盤調査費用 1ポイント50万円程度
建物解体費 木造で坪単価4~5万円
請負契約・着工時に必要な費用 建築費 木造で坪単価77万~100万円
印紙代 5,000万円超1億円以下で6万円
設計料 工事費の1~5%
水道分担金 100万円~500万円
地鎮祭・上棟 5,000円(奉献酒)
工事期間中の費用 土地の固定資産税および都市計画税 2階建てなら平均工事期間3ヶ月分
※ただし1/1時点で更地の場合、固定資産税は更地の計算となる。
追加工事 必要に応じて発生(地盤改良など)
竣工時に必要な費用 火災・地震保険料 1年分は請負工事金額の0.05%程度
新築建物登録免許税 固定資産税評価額×0.4%
抵当権設定登記費用 債権金額×0.4%
司法書士手数料 6~7万円程度
新築建物不動産取得税 固定資産税評価額×3%が基本
融資関連費用 事務手数料だけなら5~10万円
入居者募集費用 家賃保証型ではない場合 仲介手数料:家賃の1ヶ月
その他希望による広告費
家賃保証型の場合 家賃の3~6ヶ月

※税金や法定の費用などは、年次によって変動する場合があるので上記は目安とし、最新の情報をご確認ください。

融資の基本と選び方

アパート経営のための融資を一般的にアパートローンと呼びます。収益目的で不動産を購入・建築するための資金を融資する商品のことです。
住宅ローンはマイホームの購入・建築に使途が限定されており、住宅専用の低金利が設定されています。したがって投資目的で借り入れることはできません。
名称どおりのアパートだけでなく、マンション・戸建賃貸・貸店舗・貸事務所・貸ビル・賃貸物件を建築予定の土地など、収益物件用に幅広い対象の借り入れが可能です。
アパートローンは、購入・建築予定の不動産(土地と建物)を担保に借入を行います。これから建物が建つ場合は、竣工後に抵当権が設定されます。

融資先を選ぶ際は、以下の点をチェックしましょう。

  • 金利が低い
  • 審査が厳しくない
  • 借入の可能額
  • 付帯条件や融資条件

金利を比較する際は必ず、A銀行とB銀行の金利差で、返済総額がいくら変わるかを計算しましょう。
また、金利には大まかに「変動金利型」「固定金利型」「固定金利選択型(当初固定金利型)」の3種類、元利均等・元金均等の2種類があります。これらの選択も返済額を左右します。金利は金利上昇が始まっているので、慎重な比較が必要です。
金融機関によって審査の基準が異なります。事業に対する評価=収益性の認め方の違いですが、都市銀行よりも地方銀行・信用金庫・信用組合などのほうが、審査基準は寛容な傾向があります。
審査が寛容な金融機関は、金利が高めである点も意識しましょう。
また、審査によって決まる融資の限度額や借入期間、手数料、団体信用生命保険への加入、保証料の支払い方法など、融資条件も、チェックポイントとなるでしょう。

自己資金と借入金のバランス

健全な資金計画とは、返済の余裕に尽きます。必要な自己資金は、建築費の1割~3割と言われています。建築費の1割は、ローンが下りるまでに必要となる金額に相当するため、必要と考えるべきです。
自己資金は多いほど返済に余裕が出ますが、いざという時に対応するための手元のお金も必要となるため、多くても3割程度におさめましょう
また、アパートローンが使えることのレバレッジに頼りすぎるのは危険です。年齢が若いからと長期ローンを組んで、わずかな毎月の手残りで返済を開始したとします。しかしその後「金利が上がって収入を返済額が超えてしまった」などの事態は、避けなければなりません。

アパート経営の成功率を高める建設計画と業者選び

アパート経営の成功率を上げるのに重要なのは、建設計画と建築業者の選定です。立地、予算、間取りなど、こちらの要望を取りまとめて、複数社に建築のプランと見積もりを依頼します。

ともに成功を目指す、信頼できるパートナーを選びましょう。

建築を依頼する会社の選定

アパート建築の依頼先は、ハウスメーカー・建設会社・工務店の3つが主流です。それぞれの特徴をご覧ください。

分類 コスト 工期 品質 自由度
ハウスメーカー 平均~やや高い 短い 高い 低め
建設会社 高め 会社による 高い 低い
工務店 安め 長め 会社による 高い

住宅の設計依頼と異なるポイントは、コストの掛け方が顧客主導型になる点、設計プランの自由度よりも、ニーズに合った定型プランを選ぶほうが、合理的な傾向にある点です。
工期の早さではハウスメーカーが2~4カ月程度の完成と有利で、建築コストとアフターフォローの依頼のしやすさは工務店にメリットがあるでしょう。
また、アパートの設計施工の実績が数多くあるなか、Webサイト上での口コミの傾向や、担当営業の人の説明の分かりやすさ、見積書の内容の具体性などが、判断要素となります。
工務店であれば地域に密着した不動産会社のスタッフの意見や、周囲で実際にアパートを建てた人の経験も参考になるでしょう。

建設計画の立案

こちらの提示した予算、間取り希望(シングルかファミリーかなど)、戸数希望、付帯設備(駐輪場など)、竣工希望時期などをもとに、建築プランと価格、工期を提示してもらいます。
建物の構造は木造建築の他、鉄骨造や鉄筋コンクリート造などがあり、それぞれ工期も建築費も違ってきます。耐久性やコストパフォーマンスなど、それぞれに良さが異なるため、予算や土地に合った構造を選ぶ必要があります。
また、アパート建築は建築基準法や都市計画法、消防法、地域の条例などの法律によって、希望する内容が制限を受ける場合があります。建物の高さや面積、耐火性などが問われますが、希望の土地にアパート建設自体ができない用途制限のルールもあります。
そこは建築を依頼する会社に監修してもらえますが、戦略変更を余儀なくされることもあり得ます。

建築費用は大きく以下の3つに分類されます。

科目 総工費の中の割合
本体工事費 70%程度
付帯工事費(別途工事費) 20%程度
その他の諸費用 10%程度

付帯工事費とは解体、造成、ライフライン、外構などの工事で、その他諸費用は設計費、現況測量費、地盤調査、各種税金、登記の司法書士手数料、損害保険料、融資手数料などです。
3つの分類は建築を依頼する会社によってまちまちですが、必要なものが見積もりに含まれているか、値段の比較と併せてチェックしましょう。
工程や予算に無理はないか、効果的なプランニングとスケジューリングで成功率の向上を目指しましょう。

ガレージ付き賃貸物件の設計

通常の駐車場付き物件とは異なビルトインガレージを持つメゾネット住宅はコロナ禍以降に需要が高まったライフスタイルへのこだわりを満たすことができるため希少価値が高くライバルと差別化をはかれる賃貸物件となります。
ガレージハウスは、車・バイクの愛好家が愛車の車庫として利用するのはもちろん、サーフィンやキャンプなどのアウトドアグッズの保管庫、アーティストのアトリエ、DIYの作業スペース、トレーニングジムなどに利用可能です。居住空間以外に多目的に使える広いスペースを持つガレージハウスは、さまざまなニーズを満たす住環境として注目を集めるようになっています。
とくに、一戸建てのガレージハウスとは違い、自ら建てなくても手軽にガレージライフを叶えられる賃貸ガレージハウスは、幅広い層から人気です。
また、ガレージはシャッター付きであることから、セキュリティ面での安心感も人気の理由の一つといえるでしょう

関連記事:プレミアム  ガレージハウス

フィル・カンパニーでは、土地活用の有効手段としてガレージ付賃貸物件の提案をしています。現在空き地や駐車場をお持ちの土地オーナー様競合物件にない希少価値を高める手段として、賃貸ガレージハウスをご検討ください。

一般的なアパート経営とガレージハウス経営では、長期的な目線でみたときに大きな差が生まれます。その違いを知りたい方は、ぜひ一度ご相談ください。

マーケティングと入居者募集

建築当初の間取りや戸数の設定で、学生・社会人・カップル・子育て世代などおおよその設定は決めることとなります。ここから必要なのは、さらに細かい入居者像と、それに則したマーケティングの戦略です。
ここでおすすめしたいのは、入居者募集を開始する前の建築計画の段階から地元の不動産会社とのパイプをつくることです。そのエリアで場所、価格帯などに応じて成約しているお客様のことを一番よく知っているのは、客付けを行っている不動産会社です。その土地のリアルな情報を仕入れることができれば、入居者層のイメージがぐっとしやすくなるでしょう。
またお客様との仲介会社においても、賃貸全般を積極的に手がける会社なら、後述する物件管理を同時に委託することも可能です。その際、管理委託を条件に、市場調査やマーケティングに協力してもらうことでアパート経営の成功率をあげることができるでしょう。

入居者のターゲット層設定

入居者ニーズを捉えたマーケティングには、ペルソナ(ユーザー像)を具体的に描き、ユーザーの思考や行動傾向を分析し、施策を最適化するペルソナマーケティングがおすすめです。以下のような要素を煮詰めてみましょう。

入居者のペルソナ

  • 性別は?
  • 学生ですか?社会人ですか?
  • 年齢はいくつからいくつまで?
  • 入居の家族構成は?
  • どこ(勤務先・場所)に勤めていますか?
  • 休日の過ごし方は?
  • 平日の帰宅は早いですか?遅いですか?
  • お部屋にお客様は来ますか?
  • どんな趣味をもっていますか?

上記のような要素をもとに、広告のキャッチコピーなどの打ち出し方を決めていきます。

効果的な広告媒体の選定

広告媒体は、suumoやatHomeなどのオンライン広告と、チラシやフリーペーパー、ポスティングなどオフラインの広告メディアがあります。また、業者間流通のためのメディアもオンライン・オフラインそれぞれに存在します。
インターネットでは各種SNSを広告メディアにして物件紹介が行われている例も、急速に増えてきています。
また、不動産情報は他のジャンルに比べて、オフライン広告を目に留めてもらえる確率が高いため、オフラインも物件の種類によっては、バランスよく活用するのがおすすめです。
まずは上記のメディアの不動産広告を参考に探して見てみましょう。アイデアをたくさん拾うことができるはずです。

魅力的な物件紹介の作成

広告は、仲介手数料や広告予算の中から、不動産会社が提携先に掲載してくれます。
物件の特徴といっても、インターネット上の不動産ポータルに掲載すると、結局どれも似通った印象になるのでは?と思われがちですが、そうではありません。
まず、物件検索をかける際に、こだわりの絞り込みをするはずです。この項目には、つけられるものすべてにチェックをしてもらいましょう。これでアクセス数に差が出ます。
ターゲットに向けた訴求ができる、簡潔で分かりやすいキャッチコピーと、おすすめ文章も大切です。
写真や動画は明るくカラフルで、清潔な印象が必要です。写真の出来でお問い合わせの件数は変わります。撮影条件が悪かった場合は、画像処理アプリで加工します。動画やパノラマ、VR内見などの映像も入れましょう。地方から都市部へのお部屋探しの方が参考にするニーズが多いです。
画像や動画は、物件の中のネガティブな要素も分かるようにしておいたほうが結果としていいことが多いです。事前に知るのと内見の時に知るのでは、前者のほうが印象が良く、決める妨げになりにくいためです。

家賃設定

家賃は、物件の状態や周辺の状況によって変動していきます。まず最初の募集にあたっては収益最大化のための家賃を設定し、アパート経営の成功率を高めましょう。

市場調査の実施

家賃の具体的な決定プロセスは、以下の流れをおすすめします。

  1. 経費や返済、利潤から、最低限の家賃設定を確認する
  2. 自分の物件スペックをまとめる
  3. 周辺の競合物件の家賃相場を絞り込み、10件程度競合を抽出する
  4. 競合物件のデータをもとに、平均的な家賃を出す 
  5. 出した基準価格をもとに自分の物件の家賃のプラス・マイナス要素を考慮する 
  6. 設定した家賃で収益がマイナスにならないかシミュレーションする

このリサーチの流れは一見機械的に進めていけるようで、実は中には必ず、家賃が高すぎる・安すぎる物件が混ざっているので、その理由の検証に意味があります
平米単価の平均値や、もっとも類似した物件の家賃設定、不動産会社にも相談しながら決めましょう。不動産会社は経験値の他、自社管理物件の場合は過去の実績、宅建業者しか閲覧できない物件データベースも参考にして意見を出してくれます

家賃の調整タイミング

家賃は値上げも値下げも可能です。しかし家賃改定には、ふさわしい時期があります。
基本はお部屋が空室の間に、長きにわたって入居がないお部屋の値下げや、リノベーションや設備投資を行ったお部屋を値上げする形になるでしょう。
季節的な調整タイミングとして適しているのは、退去者数が多くなる12月から1月にかけてです。価格調整の際は、周囲の類似物件の相場を改めてチェックしましょう。家賃が多少高くても、内容がよいお部屋のほうが入居が決まることもあります。単純に値下げだけを検討するのではなく、付加価値を付与して物件をアップグレードしていく姿勢も持っておきましょう。

入居中のお部屋の値上げは困難ですが、以下のような正当事由があれば、交渉は可能です。

  • 土地や建物に対する税金の負担が増えた
  • 土地や建物の価格や金利が上昇するなど経済事情が変化した
  • 近隣の類似した条件の物件の家賃よりも安すぎる

希少価値を価格・利回りに反映する方法

競合する物件を調べているうちに、自分の物件のセールスポイントは何だろう?と考えさせられることになります。
ターゲットに合わせて、暮らしの利便性を上げていくような支出を着実に行うのも大切です。エリア内で他と差別化ができる特徴が付加できると、収益面の向上や長期入居がの可能性が高まります。
たとえば、1階にビルトインガレージを設けた賃貸住宅なら、賃貸アパートで実現が難しかった愛車のカスタムスペースの確保といった差別化をはかることもできます。

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管理会社の選定と契約

不動産管理会社は、アパート経営の要である物件と入居者の管理窓口として協力関係となる、大切なパートナーです。その業務は家賃収納の他、入居者募集や契約業務、クレーム対応、清掃・点検など多岐にわたります。
長いお付き合いができる、良心的で熱量の高い管理会社を選び、タッグを組みましょう。

アパート経営に強い管理会社の評判を調べる

近年ではWebサイトに「物件オーナー様へ」と題して、賃貸管理業務の集客ページを持つ管理会社も増えました。物件オーナー様や入居者様の口コミ、客付けの実績、アパートの経営改善の事例などがあれば、参考にします。
できるだけ、地主様とのおつきあいで賃貸管理業務もやっているのではなく、積極的な管理を進めてくれる会社が理想です。
また、仲介会社としての得意ジャンル(=女性、学生、ファミリーなど)を確認しましょう。地域密着型の老舗か、フランチャイズや大手チェーンかでも、特色に違いがあります。

契約内容の確認

管理会社は仲介会社と違い、1社と管理委託契約を結んで業務を依頼します。契約前に、サービス内容と費用の透明性を確認しましょう。管理費の範囲でどこまでの業務を行ってもらえるのか、追加で何の費用が発生する可能性があるか、何を追加でお願いできるかなどに関してです。
管理委託契約の他にサブリース(転貸)方式の契約もあります。オーナー様が所有する賃貸物件を不動産管理会社が一括で借り上げて、賃貸住宅経営に関するすべての業務を行う契約です。
オーナー様は物件の運営を100%委託できる上、空室となってもある程度の家賃保証もあり、相応のメリットがあります。手数料は管理委託契約の5~10%に比べて、10~20%と、収益は少なくなります。また、契約期間も20年、30年と長く、転貸する不動産会社は賃借人に準ずる権利があるため、オーナー様は解約の正当事由を要するなど、途中解約は難しくなります

形態 メリット デメリット
管理委託契約 ・管理費が安い
・契約期間は主に2年=見直しが容易
・空室は収入ゼロ
・入居者とやり取りが生じることも
サブリース契約 ・家賃保証あり
・業務のすべてをお任せにできる
・手数料が高い
・契約期間が長く、途中解約困難
・家賃の値下げ交渉がある

管理会社との信頼関係の築き方

書面での定期報告を除けば、管理会社からのコミュニケーションの多くは「何かあった時に連絡がくる」程度です。
可能であればこちらから機会を作って出向いたり、オンラインで短時間でも定期的なミーティングを持つことができれば、物件に対しての細かい報告やまちの情報、業界の新しい動きの情報が得られます。

アパート経営のリスク管理と保険の活用

安定してアパート経営の成功率を高めるためには、余裕のあるバランスシートが大切ですが、まさかのトラブルに備えるための対策も、しっかりしておくことが必要です。

保険の種類と選び方

火災保険は水害や水漏れの利用が大半を占めるため、火災以外の内容に対する補償内容をしっかり確認しましょう。
地震保険は基本的には全損で火災保険の50%の補償となりますが、会社によってはオプションで100%までの追加ができます。また、保険は2つ以上の重複加入はできませんが、地震への対応を手厚くしたい場合、地震補償保険や少額短期保険は重複加入ができます
また、入居者様の加入する家財保険の内容についても、補償の範囲や給付金額を把握しておくことをおすすめします。家財保険や家賃保証の付帯サービスで、孤独死の特殊清掃や原状回復の費用が不動産管理会社受け取りで給付される契約もあります。これを把握しているかいないかで、いざという時に大きな出費の差になります。

成功率に大きく関わる節税対策

前述のように、アパート経営の成功率を上げるために節税とても有効です。下記のように、贈与税や所得税・住民税・相続税まで恩恵があります。アパート経営の収益は毎年申告する形になりますが、税務対策はフルに行い、お金をしっかり残しましょう。

相続税 借入金でアパートを建築する。収益物件を建てることで土地に貸家建付地、建物に借家権割合による評価減が適用される。小規模宅地の特例も併用して、さらに相続税を圧縮。
贈与税 相続時精算課税制度による贈与や、暦年贈与制度を利用すれば相続税対策に。
所得税・住民税 経費の計上=赤字で損益通算ができる。青色申告(個人)でも節税できる。法人化により税率を下げられる。
固定資産税 アパートの土地は固定資産税評価が下げられる。

リスク分散の方法

アパート経営のリスク分散と言えば、複数棟所有や区分所有を連想しますが、ひとつの敷地内でもリスク分散が可能です。
一つの敷地内にコインラインドリーとアパートを両立させたり、最近需要が高まるシェアサイクルのポートを設置したり、複数の活用を組み合わせることで何かトラブルが起きた際にリスクヘッジとなります。
フィル・カンパニーは、都市部をはじめ全国各地に増え続ける駐車場・空き地・空き家などの〔未活性空間〕を、その時代・その場所にあった企画で活性化させる提案をしており、上記のようなリスク分散を含む、その土地に最適な土地活用を提案させていただいております。

これからの時代に求められるアパート・マンション経営のリスクや回避法についても資料をまとめさせていただきましたので、アパート経営に興味がある人はこちらをぜひご覧ください。

収支計画の策定とモニタリング

収益と支出のバランスを保つために収支計画をしっかり立て、運用開始後もモニタリングを継続し、アパート経営の成功率をあげましょう。ローンの返済終了や家賃の変更、大規模修繕など、運用後も変動要素は多数あります。

収支事例

2例ともに、ローン返済率は平均的な50%です。正式にはここから固定資産税と、決めた修繕積立額を差し引いて所得とします。

1.1K・8戸アパートの収支例

家賃(共益費込)7万円、全8戸(満室)

【収入】
家賃:月額56万円
【支出・費用】
ローン返済:28万円/月(ローン返済比率※50%)
管理委託料など:11.2万円/月(経費率20%)
支出合計 39.2万円
【年間所得】
(56万円 - 39.2万円) × 12か月 = 202万円(所得/年)
※固定資産税と修繕積立は別途

 

2.2DK・8戸アパートの収支例

家賃(共益費込)10万円、全8戸(満室)

【収入】
家賃:月額80万円
【支出・費用】
ローン返済:40万円/月(ローン返済比率50%)
管理委託料等:16.0万円/月(経費率20%)
支出合計 56万円
【年間所得】
( 80万円 - 56万円) × 12か月 = 288万円(所得/年)
※固定資産税と修繕積立は別途

 

定期的なモニタリングー何年で黒字になる?

収支状況の確認と見直しを行うには、定期的なモニタリングで収支の状況を見渡してみましょう。確定申告のために、単年では集計を行いますが、以下の表組のように、過去からの変遷を確認して変化をキャッチするようにしましょう。できれば月間単位での収支計画・実績のモニターをおすすめします。
これをもとにして、黒字までの年数の変化も追うことができます。また、手放すタイミングはいつごろが良いのか、出口戦略も検討する材料にしましょう。
収支計画とは、収入から支出を差し引いて、いくら収益を得られるかを年月単位で表にしたものです。年間の収入合計額が支出の合計額よりも多ければ、収益を得られます。
賃貸オーナー様として賃貸経営を成功させるためには、まずスタート地点での収支計画を、現実性を持って計画しましょう。収支計画は融資を受ける際にも必要となります以降も実績を入力して活用します。
賃貸経営は景気動向や税制の変化に大きく影響を受けるため、当初の収支計画と誤差が生じてくるケースが多くあります。修繕費用の高騰や、金利の引き上げなどで支出が増える場合や、逆にエリアの再開発により、近隣の家賃の相場が上がることも考えられます。
市場の動向に合わせて収支計画を軌道修正するためにも、定期的な見直しをしましょう。以下は収支計画と実績をチェックする表です。下記はあくまで一例なので、収入や支出の部分をご自分のケースに合わせてカスタマイズし、継続して収支状況をチェックしましょう。

収支計画と実績

項目 1年目 2年目 ・・・・ 10年目
収入 家賃 5,700,000 5,700,000 5,700,000
駐車場 6,000 8,000 12,000
礼金
その他
収入合計 6,186,000 5,708,000 5,712,000
支出 ローン返済 1,620,000 1,620,000 1,620,000
固定資産税 462,000 462,000 462,000
火災保険料 112,000 112,000 112,000
管理費 240,000 240,000 240,000
修繕積立金 360,000 360,000 360,000
修繕費 4,000 24,000
その他 20,000 15,000  
支出合計 2,818,000 2,833,000 2,924,000
年間収支合計 3,368,000 2,875,000 2,788,000

財務状況の改善策

満室にしたり、家賃を値上げしたりするだけではなく、運用のランニングコストの削減も、アパート経営の成功率を上げるための施策となります。以下の点に着目しましょう。

  • 建物メンテナンス系の費用が適正かどうか
  • 設備の交換時に少しでも安くすむ方法はないか
  • 保険の適用できる修繕項目がないか

また、物件の外観の傷みや、雑草が放置されている状態が続くと、退去者が増えたり、空室が埋まらなくなったりするので、必ず定期的に物件の点検をし住環境の改善を続けましょう。
アパートを良い状態に保っておくことで、将来売却するタイミングでの価値にも違いが出ます。

成功事例と失敗事例の分析

アパート経営の成功率は、宝くじの当選確率とは違い、いくらでも改善の余地があります。他の成功者から学び、失敗例から同じ轍を踏むのを避けましょう。

成功事例の紹介

以下は顧客を呼び寄せることに成功した事例です。周辺の状況をよく見て、競合する物件にない魅力を付加したり、 至らない部分の洗い出しを行ったりすれば、満室につなげることができます。
また、繰り返しますがバランスシートは、歯車が回り出したあとつねに改善の余地がないか、新しい情報をチェックしましょう。

事例 結果
地方都市で新築のアパート。
駅から20分と立地にやや難あり。
6室中2室が未入居
の状態。
一人暮らしのニーズなどを洗い直して対策。

置き配に対応できるよう追加設備で宅配ボックスを設置。
防犯のため鍵をオートロックに変更
・自動販売機を設置=収益に。

家賃を3000円上げて再募集。6月の閑散期にかかわらず、2週間で2部屋成約。駐輪場の利用台数が増え、月収も2万円UP。

相続したアパートで維持のための経費がかかり過ぎてトータルで収益が上がりにくい。 お世話になっていた業者や保険を見直すことで、無駄にかかっていた経費削減を多角的に検討。
・建物管理の会社を変更して清掃費用などが年間3割=12万円減。
・給水管の漏水事故で火災保険の遡及請求65万円。
・新たなガス会社と設備のフリーメンテナンスを契約し、エアコン2台と給湯機1台の交換28万円分を無料に。

〇100万円以上が浮き、年間CFも20万円以上改善し、収益UP。


また、ちょっとしたリフォーム手段の一つとして壁紙(クロス)の工夫など検討してみるのはいかがでしょう。たとえば、壁紙や床の色を変えたり、お色直しをするだけで印象の違うお部屋に変更できます。
お客様の好みにあった場合、内見で即決もあり得ます。
ヴィンテージ風、ポップ、シック、和モダン、高級感など、カラークロスとフロアタイルを使ってさまざまなテーマのお部屋を作ることが可能です。
ただしお客様好みの部屋にリフォームするためのテーマ決めはマーケティングの一環です。ご自分の好みではなく、Webや雑誌などで流行りを研究した上で慎重に決定しましょう。

※原状回復は、お客様の敷金から支出する部分があるので、リフォームによる資本的支出とは分けて計算します。

失敗事例の紹介

以下は、経営がうまくいかなかった時に対策も採りづらかった失敗の例です。将来に対するリスクマネジメントは、目前の件に比べてどうしてもおろそかになりがちです。
とくに需要減や老朽化などに対しては、いかに先手を打てるかが大きな差になることがあります。

事例 対策

相続した土地に建てた1Rのアパート。
アパート建設時に十分な市場調査を行わなかったため、大学のキャンパス移転需要が減り、8室中5室空きに。

・期待していたニーズが消失して家賃を下げたが、近隣の物件も一斉に値下げ中。需給のバランスが変わって、新築のメリットを活かせない
狭めの1Rで、ターゲットも狭かった。

✕地元の会社の従業員寮として、割安の価格で借り上げを決めたが、予定していた収益よりもかなり下がってしまった
相続したアパートで、老朽化が進んでいる。
長期にわたり修繕をせず、古い間取りのままにしたため、周囲の物件に比べ競争力が低く、8室中5室が空く。
・手を入れていなかった期間が長い関係で、修繕見積もりが高額になった。
・古い間取りを、玄関から視界をさえぎる形にし、バストイレ同室を改修するプランを立てた。

✕空室を埋めて家賃を少し上げたシミュレーションで、10年後まで修繕費を回収できないことが分かり売却決定。あらたな物件購入の資金にする予定だったが、古い間取りや修繕にかかる費用が影響し、予定していたよりも資金が少なくなってしまった

また、不具合が出た室内や共有部分の建材は、放置期間が長くなるほど傷みが加速度的に進行し、それに比例して修繕費も高額となります。
たとえばスレート屋根は、10年ほどで塗装補修が必要となりますが、期間を過ぎてしまうと、外観が悪くなるだけでなく、雨漏りやカビ、屋根の下の建材など、建物全体の傷みにつながってしまいます。

専門家のアドバイスで成功率UP

本記事ではアパート経営の成功率を上げるための基本的なセオリーを解説しました。上記の内容をうまく消化していただければ、成功の確率は高くなると信じています。
しかし、不動産の市場は絶えず動いています。顧客のニーズやまちの盛衰、金利や土地建物、賃貸業に関係する諸法令の改定など、変動要素は盛りだくさんです。
アパート経営で成功するためには、継続した情報収集が必要です。最新情報に基づくプロの意見を聞きたい方は、どうぞお気軽にご相談ください。

この記事の監修者

垣内 典之

株式会社 PROPUP 代表取締役/一級建築士

石川県金沢市出身。千葉大学大学院修了(建築学)。建築設計監理からキャリアをスタート、環境性能に係る設計審査業務、企業不動産(CRE)戦略、ファシリティマネジメント(FM)コンストラクションマネジメント(CM)等を経験。建築・不動産・ITを横断的に繋げ、高次元のプロパティ・マネジメントを実現するべくPROPUPを設立。

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