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2024.08.07 土地活用節税対策

相続する土地の評価額を自分で計算!国税庁データの調べ方を知り正しい固定資産税を把握しよう

この記事の監修者
黒部 豪1級FP技能士黒部 豪

相続税の計算において、土地の評価額は非常に重要な要素です。しかし、その計算方法や評価の仕組みは複雑で、多くの方が専門家に頼らざるを得ない状況です。

本記事では、相続する土地の評価額を自分で計算する方法や、国税庁のデータを活用した調べ方について、わかりやすく解説します。また、相続税評価額と固定資産税評価額の違いなど、土地評価に関する基本的な知識もお伝えします。

これらの情報を活用することで、土地の評価額を正しく把握し、効果的な相続税対策ができるでしょう。

相続税の計算における土地評価の基本と重要性

相続税の計算における土地評価は、相続財産の中でもとくに重要な位置を占めています。不動産鑑定士に公的な鑑定を依頼すると、一筆あたり30万円くらいの手数料が発生することを考えれば、極力自分で正確な評価を出したいと考えたくなるでしょう。

ここでは、相続財産としての土地の意味や、相続税評価額が与える影響について解説します。また、相続税の基礎控除や、土地の評価方法である路線価方式と倍率方式についても触れていきます。

相続財産としての土地:相続税評価額の意味と影響

相続財産としての土地は、その評価額によって相続税額が大きく変わる可能性があります。相続税評価額は、実際の市場価格(時価)よりも低く設定されることが一般的ですが、それでも相続財産の中で大きな割合を占めることが多いです。

土地の評価額が高ければ相続税も高くなり、逆に評価額を抑えることができれば相続税も抑えられる可能性があります。そのため、正確な評価額を把握することは、相続税対策を考える上で非常に重要です。相続税評価額は、具体的には相続に対して以下のような影響があります。

相続税の計算基準
相続税は、相続税評価額に基づいて計算されるため、評価額が高ければ高いほど相続税の負担も増加します。これにより、相続人等は高額な相続税を支払う必要が生じる可能性があります。

財産の分割
相続財産を分割する際、相続人等の各々の個別状況のほかに、相続財産の価値も重要な分割基準となるため、評価額が不明確であると、相続人間での公平な分割が困難になることがあります。評価額を正確に把握することで、円滑な遺産分割が可能となります。

節税対策
相続税評価額を理解することで、生前贈与や不動産の有効活用など、適切な節税対策を講じることができます。例えば、評価額が低い時期に不動産を贈与することで、贈与税の負担を軽減することができます。

従って、相続税評価額の意味を正しく理解することが、相続税対策の第一歩です。

相続税の基礎控除額

相続税の基礎控除額は、相続財産の総額から控除される金額で、これを超えた部分に対して相続税が課税されます。

基礎控除額は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」で計算されます。例えば、法定相続人が2人の場合、基礎控除額は3,000万円 + 600万円 × 2=4,200万円です。

土地の評価額が高ければ、この基礎控除額を超えてしまう可能性が高くなるため、土地評価額をしっかり確認することの重要性がさらに増します。

相続にまつわる情報をまとめた資料をご用意しました。こちらも併せてお読みください。

路線価方式と倍率方式:土地評価の2つの主要な方法

土地の評価方法には、路線価方式倍率方式の2つがあります。

路線価方式は、主に市街地の土地に適用され、国税庁が毎年公表する路線価をもとに計算します。

一方、倍率方式は、主に郊外や農村部の土地に適用され、固定資産税評価額に一定の倍率を掛けて計算します。まずどちらの方式を使うか確認しましょう。

国税庁のホームページで、まず路線価図から検索し、該当がない場合に評価倍率表を検索します。「町(丁目)又は大字名」欄と「適用地域名」欄で土地がある地域を探し、「固定資産税評価額に乗ずる倍率等」欄で該当する地目を探します。「地目」が「宅地」の場合、「路線」と記載されていれば路線価地域、数字が記載されていれば倍率地域です。

相続にまつわる4つの価格(一物四価(いちぶつよんか))

土地の評価には、目的によって異なる4つの価格が存在し、これを「一物四価」と呼びます。それぞれの価格について、かんたんに説明していきます。

一物四価とは、具体的には以下の4つの価格を指します。

  • 相続税評価額
  • 固定資産税評価額
  • 時価(市場価格)
  • 公示価格

それぞれについて、以下で解説します。

相続税評価額

相続税評価額は、相続税を計算する際に用いられる価格です。一般的に、路線価方式や倍率方式で算出され、公示価格の約80%になるように設定されています。

相続税の計算の基礎となるため、相続税対策を考える上でもっとも重要な評価額といえます。

固定資産税評価額

固定資産税評価額は、固定資産税を計算するための基準となる価格です。一般的に、相続税評価額よりも低く設定されており、公示価格の約70%になることが多いです。

毎年の固定資産税額を決定する基準となるため、土地所有者にとっては重要な価格です。

時価(実勢価格)

時価、または実勢価格は、実際の不動産市場での取引価格を指し、公示価格の約1.1倍~1.2倍程度と言われています。相続税評価額や固定資産税評価額よりも高くなることが一般的です。

売買や担保設定の際の基準となる価格ですが、相続税の計算には直接用いられません。

公示価格

公示価格は、国土交通省が毎年1月1日時点で公表する標準地の価格です。実勢価格の指標となり、他の評価額の基準にもなります。一般的に、相続税評価額(路線価)は公示価格の約80%、固定資産税評価額は公示価格の約70%になるように設定されています。

一物四価の存在は相続税だけでなく、不動産に関連する以下のような場面で重要な役割を果たします。

税金の計算
相続税や贈与税、固定資産税など、税金の計算において各評価額が基準となります。これにより、課税の公平性が保たれています。

土地取引
公示価格や時価は、不動産取引の際の参考価格となり、適正な取引価格の設定に寄与します。

公共事業
公示価格や路線価は、公共事業における用地取得の際の価格算定基準となり、公正な補償が行われます。

上記が、1つの物件に4種類もの価格設定がされる理由です。

路線価方式による土地の時価の調べ方

路線価方式は、市街地の土地評価でもっとも一般的に使用される方法です。ここでは、実際に路線価方式を使って土地の評価額を計算する方法を、必要な資料の準備から計算の実践まで、段階を追って解説します。

路線価方式で用意するもの

路線価方式で土地の評価額を計算するには、以下の3つの資料が必要です。それぞれの資料の入手方法と重要性について説明します。

①固定資産税の納税通知書

固定資産税の納税通知書には、その土地の面積やその所在地が記載されています。これらの情報は、路線価方式での計算に必要不可欠です。通常、毎年4月~6月にかけてに市区町村から不動産の所有者に送付されます。

②登記簿謄本

登記簿謄本には、土地の正確な所在地や面積、権利関係などが記載されています。法務局で取得できますが、最近ではオンラインでの取得も可能になっています。

②登記簿謄本

出典:法務局ホームページ・各種証明書請求手続

③路線価図:国税庁ホームページの活用

路線価図は、国税庁のホームページで公開されています。毎年7月1日に更新される路線価を確認することができます。自分の土地が面している道路の路線価を調べることが重要です。

実際に計算してみよう

これらの資料を用意したら、実際に計算してみましょう。基本的な計算式は「路線価 × 補正率×土地の面積」です。

補正率は、土地の形状や利用状況によって変わります。例えば、間口が狭い土地や、不整形な土地では補正率が1.0未満になります。逆に、角地などでは正面路線価の補正率に、角地がある路線価の補正率を加算して計算するので、結果的に評価額が大きくなります。

具体的な計算例を挙げると、100㎡の土地で、路線価が30万円/㎡、補正率が1.0の場合、評価額は「30万円/㎡ × 1.0×100㎡ = 3,000万円」となります。

ただし、実際の計算はより複雑になることがほとんどのため、不安な場合は税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

評価額の調整について

土地の評価額を計算する際には、前述した補正率だけでなく、様々な調整を必要とします。これらの調整は、土地の形状や利用状況によって評価額を増減させる役割を果たします。ここでは、おもな調整の仕方について詳しく解説していきます。

奥行価格補正率

奥行価格補正率は、土地の奥行きが標準的な奥行きと異なる場合に適用される補正率です。

一般的に、奥行きが長すぎたり短すぎたりすると、土地の利用価値が低下するため、評価額が減額されます。例えば、標準的な奥行きが20メートルの地域で、実際の奥行きが30メートルある場合、補正率が0.95程度となり、通常に比べて評価が低くなります。

間口狭小補正率

間口狭小補正率は、土地の間口(道路に面している部分の幅)が狭い場合に適用される補正率です。間口が4m未満の場合には、補正率が0.80~0.90となります。

また、セットバック(敷地後退)の完了前に相続税評価を行う場合は、セットバックすべき部分について、通常通りに算出した評価額の70%相当額を控除して評価します。

不整形地補正率ーかげ地や不整形地の評価

不整形地補正率は、土地の形状が不整形である場合に適用される補正率です。角地の場合は評価額が増額されることがありますが、三角形や変形地の場合は減額されることがあります。

利用価値の低下する部分の土地をかげ地といいます。多角形の土地や旗竿地は、かげ地の割合で利用価値の低下を判断します。

なお、土地の形状により評価の軽減ができるのは路線価の場合のみで、倍率で評価する地域ではできません。

規模格差補正率ー500㎡以上の大きな宅地

規模格差補正率は、大規模な宅地に適用される補正率です。一般的に、500㎡以上の宅地に適用され(三大都市圏以外では1,000㎡以上)、面積が大きくなるほど評価額が減額されます。これは、大規模な土地ほど一括して売却することが難しいという考えに基づいています。例えば、1,000㎡の宅地の場合、補正率が0.9程度になることがあるでしょう。

がけ地補正率

がけ地補正率は、土地の一部ががけ地になっている場合に適用される補正率です。がけ地の部分は利用が制限されるため、評価額が減額されます。

がけ地の割合や傾斜の程度によって補正率が変わりますが、例えば土地の30%ががけ地である場合、補正率が0.83~0.88」程度になることがあります。

利用価値が著しく低い土地

利用価値が著しく低い土地については、個別の状況に応じて大幅な減額が行われることがあります。例えば、該当するのは線路や踏切の側、墓地の隣地などが挙げられますが、個々の状況による判断となります。これらの土地は、利用に大きな制限がかかるため、該当すれば、評価額が通常の10%減額する可能性があります

かげ地割合など、評価減の計算はとても複雑で対応しづらいこともあります。相続した土地の形状に不安がある方は、是非一度ご相談ください。

倍率方式で算出する土地の評価額の調べ方

倍率方式は、主に市街地以外の土地の評価に用いられる方法です。固定資産税評価額に一定の倍率を掛けて相続税評価額を算出します。ここでは、倍率方式による土地の評価額の計算方法について詳しく解説します。

倍率方式で用意するもの

倍率方式で土地の評価額を計算するには、以下の3つの資料が必要です。それぞれの資料の入手方法と重要性について説明します。

①固定資産税の納税通知書の中の「課税明細書」

固定資産税の納税通知書に同封されている課税明細書には、その土地の固定資産税評価額が記載されています。この評価額が倍率方式の基礎です。通常、毎年5月ごろに市区町村から送付されます。

②登記簿謄本

登記簿謄本には、土地の正確な所在地や面積、権利関係などが記載されています。法務局で取得できますが、最近ではオンラインでの取得も可能になっています。倍率方式では直接計算に使用しませんが、土地の特定や確認に必要です。

③倍率表:国税庁ホームページの活用

倍率表は、国税庁のホームページで公開されています。毎年7月1日に更新される倍率を確認できます。自分の土地が所在する地域の倍率を調べることが重要です。

③倍率表:国税庁ホームページの活用

出典:国税庁ホームページ

実際に計算してみよう

これらの資料を用意したら、実際に計算してみましょう。基本的な計算式は「固定資産税評価額 × 倍率」です。例えば、固定資産税評価額が1,000万円で、倍率が1.1の場合、相続税評価額は「1,000万円 × 1.1 = 1,100万円」となります。

適用地域ごとの倍率の違い:評価額への影響

倍率は地域によって異なり、その違いが評価額に大きな影響を与えます。一般的に、都市部に近い地域ほど倍率が高く、山間部や農村部では低くなる傾向です。例えば、同じ固定資産税評価額の土地でも、倍率が1.0の地域と1.3の地域では、30%もの評価額の差が生じることになります。

国税庁のホームページで路線価地域か、倍率地域かを確認します。

地目は登記地目より現況地目が優先されるため、登記上の地目が原野でも、現況が駐車場の場合は雑種地として評価します。

倍率方式の補正要素:評価額の微調整

倍率方式でも、土地の個別の状況に応じて補正が行われることがあります。おもな補正要素としては、がけ地補正無道路地補正不整形地補正などがあります。

マンションなど家屋を含む不動産全体の評価方法

不動産の相続税評価額を算出する際には、土地と建物を別々に評価し、それらを合算して全体の評価額を求めます。ここでは、不動産全体の評価方法について、土地と建物それぞれの評価方法や一体評価の考え方を解説します。

不動産を相続する場合の評価方法

不動産を相続する場合、その評価方法は大きく分けて「土地の評価」と「建物の評価」の2つを別々に行います。

土地の評価は、前述のとおりに路線価方式や倍率方式を用いて行われます。一方、建物の評価は、固定資産税評価額をもとに計算されます。これらの評価額を合算することで、不動産全体の相続税評価額が算出されます。

建物の評価方法:家屋の相続税評価額の算出

建物の相続税評価額は、原則として固定資産税評価額に1.0を乗じた金額となります。ただし、築年数や構造によって固定資産税評価額が変動することがあります。

例えば、築年数が古い建物は減価償却の影響で固定資産税評価額が低くなる可能性があります。」また、マンションの場合は専有部分の面積や共用部分の持分割合なども考慮されます。

固定資産税評価額は、市町村が不動産の所有者に対して毎年課税する固定資産税の計算基準となる評価額です。この評価額は、3年に一度見直されます。

1. 家屋の種類と構造
家屋の種類(住宅、店舗、工場など)や構造(木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造など)は、評価額に大きな影響を与えます。構造が頑丈で耐久性が高いほど、評価額は高くなります。

2. 家屋の築年数
築年数が古い家屋は、経年劣化により評価額が低くなります。築年数に応じて減価償却が考慮され、評価額が調整されます。

3. 家屋の使用状況
家屋が実際に使用されているかどうか、またその使用目的(居住用、賃貸用、商業用など)も評価額に影響を与えます。例えば、賃貸用の家屋は、自用家屋としての相続税評価額から、国税庁にて定められている借家権割合(30%)を控除した価格が相続税評価額となります。

4. 家屋の立地
家屋が所在する地域の地価や周辺環境も評価に影響を与えます。都市部や交通の便が良い地域の家屋は、高い評価額がつけられる傾向にあります。

土地評価額の減額要素と特例:相続税対策のヒント

相続税の計算において、土地の評価額を適切に把握することは非常に重要です。ここでは、土地評価額の減額要素や特例について詳しく解説し、相続税対策のヒントを提供します。

相続した土地を評価する流れ

相続した土地を評価する際の一般的な流れをおさらいすると、以下のとおりです。

  1. 土地の所在地と面積を確認
  2. 路線価または倍率を調べる
  3. 各種補正要素を考慮して評価額を算出
  4. 特例の適用可否を検討
  5. 最終的なその土地の課税価格を算出

この流れに沿って評価を行うことで特例等を正しく反映した、より正確な土地の評価額を把握することができます。

貸家建付地の評価:賃貸不動産所有者の優遇措置

貸家建付地とは、賃貸用の建物が建っている土地のことです。この場合、土地の評価額が一定割合で減額されます。

貸家建付地の評価額は、通常の土地の評価額に対して一定の減額割合を適用して算出されます。この減額割合は、賃貸による制約の程度を反映しています。具体的には、以下のように計算します。

1. 自用地としての価格を算出
まず、自用地としての価格を算出します。これは、路線価方式または倍率方式に基づいて計算されます。

2. 貸家建付地の評価額を算出
次に、貸家建付地の評価額を以下のように算出します。

貸家建付地の評価額 = 自用地としての価格 × (1 – 借地権割合 × 賃貸割合)

自用地としての価格: 上記で算出した評価額です。

借地権割合
借地権の土地のみに適用します。国税庁が定めた割合で、土地の使用権に対する価値を示します。地域によって異なりますが、通常30%〜70%程度です。国税庁の路線価図で調べます。
借家権割合
賃貸している場合に控除される権利部分で、全国一律30%とされています。
賃貸割合:家屋の床面積のうち賃貸に供されている部分の割合です。満室の場合には100%となります。

具体例
例えば、自用地としての価格が2,000万円で、借地権割合が60%、賃貸割合が100%の場合、貸家建付地の評価額は以下のようになります。

貸家建付地の評価額 = 2,000万円 × (1 – 0.6×0.3 × 1)
= 2,000万円 × 0.82
= 1,640万円

貸家建付地の評価には以下のメリットがあります。収入を得るだけはなく、節税にも活用したいものです。

税負担の軽減 自用地に比べて評価額が低くなるため、相続税や贈与税の負担が軽減されます。また、相続の際には小規模宅地等の特例により、最大で50%評価が減額されるため、賃貸物件を所有するオーナーにとって大きなメリットです。

キャッシュフローの改善 賃貸収入が継続する一方で、相続税の負担が軽減されるため、キャッシュフローが改善されます。これにより、賃貸経営の安定性が向上します。

資産の有効活用 賃貸物件として運用することで、土地を有効に活用しながら、評価額を抑えることができます。これにより、資産の効率的な運用が可能となります。

小規模宅地等の特例:居住用・事業用地の評価減

小規模宅地等の特例は、被相続人等が居住や事業に使用していた土地について、一定の条件を満たす場合に評価額を大幅に減額できる制度です。

例えば、被相続人の自宅の敷地(特定居住用宅地等)は、最大330㎡まで80%の減額が適用されます。この特例を活用することで、相続税の負担を大きく軽減できる可能性があります。

下記の表で、特例に該当するかどうか確認しましょう。

相続開始の直前における宅地等の利用区分 要件 限度面積 減額割合
被相続人等の事業の用に供されていた宅地等 貸付事業以外の事業用の宅地等 特定事業用宅地等 400㎡ 80%
貸付事業用の宅地等 一定の法人に貸し付けられ、その法人の貸付事業用の宅地等 特定同族会社事業用宅地等 200㎡ 50%
被相続人等の貸付事業用の宅地等 貸付事業用宅地等 200㎡ 50%
被相続人等の居住の用に供されていた宅地等 特定居住用宅地等 330㎡ 80%

1. 特定事業用宅地等
特定事業用宅地等とは、被相続人等が生前に事業を営んでいた宅地のうち、相続開始直前にその事業の用に供されていたものを指します。この特例は、事業の継続を支援するために設けられています。

要件

  • 被相続人等が相続開始の直前において、事業を行っていた宅地であること。
  • 被相続人の親族が相続開始後も事業を引き継ぎ、継続していること。

減額率
400平方メートルまでの部分について80%減額されます。

2. 特定同族会社事業用宅地等
特定同族会社事業用宅地等は、被相続人等が特定同族会社の事業のために使用していた宅地を指します。特定同族会社とは、被相続人およびその親族が発行済株式等の総数の50%以上を保有する法人を指します。

要件

  • 被相続人等が特定同族会社の株式の過半数を保有していること。
  • 被相続人等がその会社の事業に従事していたこと。
  • その宅地が会社の事業の用に供されている(貸付事業等を除く)こと。

減額率
400平方メートルまでの部分について80%減額されます。

3. 貸付事業用宅地等
貸付事業用宅地等とは、被相続人が賃貸アパートや賃貸マンションなどの貸付事業を行っていた宅地のうち、相続開始直前にその事業の用に供されていたものを指します。

要件

  • 被相続人等が相続開始直前に貸付事業を行っていたこと。
  • 被相続人の親族が相続後も申告期限まで引き続きその貸付事業を継続していること。
  • 事業開始から3年が経過していること。

減額率
200平方メートルまでの部分について50%減額されます。

4. 特定居住用宅地等

特定居住用宅地等とは、被相続人等が生前に居住していた宅地のうち、相続開始直前にその居住の用に供されていたものを指します。この特例は、被相続人の親族が引き続きその宅地に居住することを支援するために設けられています。

要件

  • 被相続人等が相続開始の直前において居住していた宅地であること。
  • 被相続人等が申告期限まで引き続き居住していること(配偶者が相続した場合には、この要件はありません)

減額率
330平方メートルまでの部分について80%減額されます。

小規模宅地等の特例は、相続税の負担を大幅に軽減するための重要な措置です。特例を受けることで、事業の継続や居住の安定を図り、相続税の負担を軽減することができます。具体的な適用条件や手続きについては、専門家の助言を受けることが望ましいです。

相続した土地はそのままにしておくのではなく、何かしらの土地活用をすることで、評価額を下げることができ、節税面と収益面の両方にメリットがあります。

そこで今から伸びる土地活用、衰退する土地活用の情報をまとめました。併せてご覧ください。

借地権が付与された土地の評価:複雑な権利関係の影響

借地権が付与された土地の評価は、通常の土地評価とは異なります。

借地権の価値は、一般的に更地価格の60〜80%程度とされ、残りの価値が底地価格となります。この複雑な権利関係を考慮することで、より正確な土地の評価額を算出できます。

貸宅地の相続税評価

貸宅地とは、他人に土地を貸し出している状態の土地を指します。貸宅地の相続税評価額は、通常の土地評価額から一定の割合を控除して計算されます。この控除割合は、借地権割合によって異なるため、事前に確認が必要です。

貸宅地の評価額=自用地評価額×(1-借地権割合)

借地権と貸宅地の違い

借地権と貸宅地は似て非なるものです。借地権は土地を借りている側の権利を指し、貸宅地は土地を貸している側の立場を指します。相続税評価額の算出においては、それぞれ異なる計算方法が適用されるため、注意が必要です。

空き家特例

空き家特例は、相続又は遺贈により取得した空き家やその敷地を売却した場合に、譲渡所得の金額から最大3,000万円を控除できる制度です。この特例を利用するには、一定の要件を満たす必要がありますが、相続した空き家の処分を考えている場合には非常に有効な対策となります。

空き家特例の適用条件

建物の要件
  • 昭和56年5月31日以前に建築されたこと
  • 区分所有建物登記がされている建物でないこと
  • 相続の開始の直前において亡くなった人以外に居住をしていた人がいなかったこと
取得者の要件
  • 譲渡人が、相続または遺贈により空き家を取得したこと
  • 空き家を売るか、空き家とその敷地を売る場合は、相続のときから譲渡のときまで事業、貸付、居住などに使用しておらず、譲渡時に空き家が一定の耐震基準を満たすこと
  • 相続または遺贈により取得した空き家を取り壊した後に、その敷地を売る場合は、相続のときから譲渡のときまで事業、貸付け、居住などに使用しておらず、取り壊し後にほかの建物や構築物などを建築していないこと
  • 相続開始から3年を経過した年の12月31日までに売ること
  • 売却代金が1億円以下であること(相続人が複数いる場合や、別途分割して売却している場合には、合算した売却代金が1億円以下であること)
  • 売った空き家等について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除など、ほかの特例の適用を受けていないこと
  • 同一の亡くなった人からの相続または遺贈により取得した空き家等について、空き家特例の適用を受けていないこと
  • 空き家等の売却先が親子や夫婦など特別の関係がある人でないこと

私道

私道部分の土地評価は、一般的に公道に面した土地よりも低く評価されます。これは、私道部分が、実質的に使用制限を受けているためです。
私道は通常、公共の交通やインフラの一部として利用されないため、その利用価値や管理負担が公道とは異なります。以下にそのおもな理由を説明します。

私道の評価が下がる理由

1. 利用価値の低さ 

私道は、一般的には限られた人々(通常は私道に面する土地の所有者や居住者)によって利用されます。 

 

公道に比べて利用者が限定されるため、公共の交通網やインフラの一部としての価値が低くなります。これにより、私道部分の土地の市場価値が低く見積もられます。 

2. 管理と維持の負担 

私道は通常、道路の管理や維持が公的機関ではなく、私道の所有者や使用者の責任となります。このため、私道の所有者には維持管理の負担がかかります。 

 

例えば、私道の舗装の修繕や除雪などの管理業務は、所有者が直接行う必要があります。このような負担は、私道部分の土地の評価において減額要因となります。 

3. 公共サービスの制限 

私道は、公共の道路として認識されていないため、公的なサービス(ゴミ収集、除雪、道路の維持管理など)が提供されない場合があります。 

 

これにより、私道に面する土地の利便性が低下し、その結果、土地の評価額が下がります。 

4. 固定資産税評価の減額 

日本の固定資産税評価においても、私道部分の土地はその特性を反映して低く評価されます。具体的には、路線価や固定資産税評価額が通常の宅地に比べて減額されます。 

評価の具体例
私道の相続税評価額は、通常の路線価方式により評価した金額の30%相当額で算出されます。例えば、その私道を路線価方式で評価した場合の評価額が20万円とします。その場合の私道の相続税評価額は、6万円(=20万円×30%)となります。

相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

相続した不動産を売却する際、被相続人の取得時から所有期間が短い場合でも、一定の条件を満たせば支払った相続税額、もしくは納税予定の相続税額に応じて、取得費を加算することができます。この特例により、譲渡所得税の負担を軽減できる可能性があります。

相続財産を譲渡した場合の取得費の特例の計算式

相続財産を譲渡した場合の取得費の特例の計算式

相続税評価額と実勢価格の差:遺産分割への影響

相続税評価額と実勢価格の差は、遺産分割に大きな影響を与える可能性があります。ここでは、その差がどのように生じるのか、そしてそれが遺産分割にどのような影響を与えるのかについて解説します。

相続税評価額と市場価格の乖離:相続における注意点

相続税評価額は、一般的に実勢価格(市場価格)よりも低く設定されています。これは、相続税の負担を軽減するための配慮ですが、同時に遺産分割の際に問題を引き起こす可能性があります。

例えば、相続税評価額が1億円の土地があったとして、実際の市場価格が1億5000万円だった場合、相続人間で不公平が生じる可能性があります。このような乖離を認識し、適切に対処することが重要です。

遺産分割協議で相続税評価額の活用:公平な財産分配の実現

遺産分割協議では、相続税評価額を基準にしつつも、実勢価格も考慮に入れることが公平な分配につながります。

例えば、評価額の低い不動産と、評価額の高い現金を比較する際には、不動産の実勢価格も考慮に入れて分配を検討することが望ましいでしょう。

また、複数の不動産がある場合は、それぞれの評価額と実勢価格の差を比較し、バランスの取れた分配を心がけることが重要です。

遺産の不動産を取得したいと考えている相続人がいる場合、その人にとっては不動産の評価額が低いほど有利になるので「相続税評価額で」という主張になるでしょう。

一方で、遺産に含まれる不動産を取得しない相続人にとっては、不動産の評価額が高いほど有利になるため「実勢価格で考えるべき」と主張することになります。

【相続人は長男と次男の2人で、2分の1ずつ分割するケース】

遺産:相続税申告での遺産総額は合計で8,000万円
・実家の土地建物・相続税評価額3,000万円(長男夫婦が同居していた)
・預貯金5,000万円

長男の主張(相続税評価額で考えた場合):総額8,000万円
長男=実家の土地と家(3,000万円相当)+預金から1,000万円
次男=預金から4,000万円

次男の主張(実勢価格で考えた場合):総額9,500万円
長男=実家の土地と家(4,500万円相当)+預金から250万円
次男=預金から4,750万円

ポイントは実家の評価の仕方によって、預金の取り分に違いが出てくる点です。家族ごとで考え方や事情はさまざまなため、専門家にも相談しながら、冷静な話し合いが必要となります。

土地評価額に関する専門家相談と税務調査対策

土地の評価額を正確に把握し、適切な相続税対策を立てるためには、専門家の助言が不可欠です。ここでは、どのような専門家に相談すべきか、また税務調査のリスクを回避するためのポイントについて解説します。

不動産鑑定士や税理士への相談

土地の評価額について詳しく知りたい場合は、不動産鑑定士への相談がおすすめです。不動産鑑定士は、土地の実勢価格を専門的に評価する資格を持っており、相続税評価額と市場価格の差について詳しく説明してくれます。

ただし、公定の評価を下してもらうためには、前述のように相応の費用が必要となるため、正式な依頼をするのは、相続人間での話し合いが不調に終わったケースに限られるようです。

一方、相続税の計算や申告に関しては、税理士への相談が有効です。税理士は、相続税法に精通しており、評価額の計算方法や各種特例の適用について適切なアドバイスを提供してくれます。

ただし、多くの税理士は所得税や法人税を専門としているため、相続税の申告に慣れていない税理士や、中には相続税の申告を一度も扱ったことがないという税理士も少なくありません。相談する前に、依頼先の専門分野について確認しましょう。

税務調査リスクを回避しよう

相続税の申告において、土地の評価額を不当に低く申告すると、税務調査のリスクが高まります。税務調査を回避するためには、国税庁が公表している路線価や倍率を正確に使用し、適切な評価額を算出することが重要です。

また、特殊な事情がある場合(例:土地の一部が崖地である等)は、その事情を明確に説明できる資料を準備しておくことも大切です。税務調査が行われやすい事例は以下です。

  • 相続の直前に不動産を購入した場合
  • 時価より低い金額で売買すると贈与税を課税される場合がある
  • 生前から不動産所得があったが、申告額が少ない

税務署の対応例

事例 税務調査後の対応
相続開始前3年以内に購入していたアパート3,000万円(評価額・180平米・満室)を、小規模宅地等の特例で計算して、アパートの課税価格を1,500万円で申告した。 令和3年以降、3年経過後でなければ小規模宅地等の特例は使えない。

評価額が1,500万円→3,000万円となり、課税価格1,500万円に対応する税額が発生。

時価4,000万円の不動産を、相場より過少の1,500万円で親子間売買した。 時価との差額2,500万円から基礎控除110万円控除後に税率を乗じて算出した税額約81万円を納税。

 

相続税対策として長期的な視点の必要性

相続税対策は、相続が発生する直前に行うのではなく、長期的な視点で計画を立てることが重要です。例えば、生前贈与を活用して徐々に資産を移転する、不動産の共有持分を分散させる、あるいは土地を有効活用して収益性を高めるなど、さまざまな方法があります。

令和3年4月1日以降は、被相続人が3年以内に新たに貸付事業の用に供した宅地等は、一部の例外を除いて小規模宅地等の特例を適用できなくなり、相続税評価額の優遇が受けられなくなっています。

例外的に小規模宅地等の特例が適用できるケース

  • 継続的に事業的規模で特定貸付事業を営んでいる場合
  • 3年以内に相次相続が発生した場合

分かりやすく換言すると、被相続人が継続的に事業的規模(5棟10室基準)で、3年以上前から貸付事業を行っていた場合、又は、3年以内に2度目の相続が発生した場合のいずれかが適用対象となります。
土地活用で相続税の優遇も受けたいとお考えの場合、相続の可能性が生まれる以前から、土地活用の検討など、早期のスタートが大切です。

まとめ

相続する土地の評価額を正確に把握し、適切な相続税対策を立てることは、円滑な相続と公平な遺産分割を実現するために非常に重要です。

本記事では、土地の評価額の計算方法や、相続税評価額と実勢価格の違い、専門家への相談方法などについて解説しました。これらの知識を活用することで、より効果的な相続税対策や土地活用の計画を立てられるでしょう。

ただし、相続税の計算や土地評価には複雑な要素が多く、専門的な知識が必要な場合もあります。より詳細な相談や、具体的な土地活用のアイデアが必要な場合は、ぜひ専門家への相談や資料請求をご検討ください。

例えば、プレミアムガレージハウスのような新しい土地活用方法も、相続税対策の一環として効果的です。

プレミアムガレージハウスはガレージ付きの賃貸住宅で、車・バイク・アートなどさまざまな趣味を充実させる場として、一般的な賃貸物件に対して強い競争力を発揮できます。

また、入居者のニーズが気兼ねなく趣味にでき、乗り物移動が前提であることが多いため立地を選ばず、仲間のコミュニティなど、さまざまなニーズを想定して集客することも可能です。

フィル・カンパニーでは、さまざまな土地活用について、総合的なご相談を受け付けています。ぜひ一度、お気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

黒部 豪

税理士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/GKコンサルティング合同会社 代表社員

東京都出身。明治大学理工学部物理学科卒業。大学卒業後はIT会社に勤務していたが、一念発起して税理士に。都内の税理士事務所に約10年ほど勤務したのち、2021年にくろべ税理士事務所を開業。法人や個人事業主の税務顧問以外に、相続やファイナンシャルプランなどのスポット案件も行う。

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