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2024.07.17 土地活用節税対策

不動産の相続税、かかる?かからない?評価額算出法や控除について解説

この記事の監修者
黒部 豪1級FP技能士黒部 豪

この記事は今後相続する予定の人、あるいは相続される可能性がある人が読んでいるかと思います。せっかく資産を築いたのに、後の世代が相続で困るのは避けたいですし、受け継ぐのなら、なるべく節税しながらスムーズに気持ちよく相続を終わらせたいですよね。

本記事では、相続税についての基本知識から評価方法や控除、税金がかからない方法などをわかりやすくご説明します。ぜひ今のうちからご家族で知識を得て、前向きに来たるべき時に備えましょう。

この記事を読むとわかること

  • 相続税の基本的な考え方がわかる
  • 不動産相続税の評価額算出について、種類や方法がわかる
  • 不動産の相続税対策が具体的にわかる
  • 不動産の相続税対策に必要なアクションと相談先が分かる

相続税の基本 税率は?控除は?相続人は?

相続税は、亡くなった親族からお金や不動産などの財産を受け継いだ場合に、受け取った財産に対して課税される税金です。

相続税はすべての相続に対してかかるわけではありません。相続財産から個人の借金や葬儀費用を差し引いた残りの額が、一定の基礎控除額を上回った部分に課税されます。

相続人と法定相続分

被相続人(財産を残す人)が亡くなると、対象の相続人は以下の順番で決定されます。

つねに相続人:配偶者
第一順位:子ども、その代襲相続人(孫やひ孫)
第二順位:親、祖父母(直系尊属)
第三順位:兄弟姉妹、その代襲相続人(甥や姪)

配偶者は法的に婚姻関係にある人、代襲相続人とは配偶者や子ども、兄弟姉妹が亡くなっている場合に、かわりに相続する人です。また、相続人の意思に関わらず法で定められた持ち分があります。これを法定相続分と言います。

法定相続分の割合

配偶者と子ども 配偶者が1/2 子どもが1/2
配偶者と父母 配偶者が2/3 父母が1/3
配偶者と兄弟姉妹 配偶者が3/4 兄弟姉妹が1/4

子どもがいなかった場合に孫か父母が、孫も父母もいなかった場合に兄弟姉妹に相続の権利が承継されます。

配偶者以外の人が複数の時は、決まっている割合を人数で分けます。たとえば子どもが3人の時は、2分の1を子どもの人数で割って、6分の1ずつの割合となります。

相続税の税率

相続税の税率は累進課税となっていて、もらった相続財産の課税価格に応じて、以下のように税率が変わります。

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10% なし
1,000万円超から3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超から5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超から1億円以下 30% 700万円
1億円超から2億円以下 40% 1,700万円
2億円超から3億円以下 45% 2,700万円
3億円超から6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

上記の表で、取得金額にあてはまる税率をかけて控除額を引けば、相続税額を算出することができます。

ここで要注意なのは、税率に対する考え方です。たとえば、相続分の取得金額が6,000万円の場合、正しい計算法は以下のように6,000万円を4つに分けて計算します。

[1,000万円×10%]+[(3,000万円-1,000万円)×15%]+[(5,000万円-3,000万円)×20%]+[(6,000万円-5,000万円)×30%]=1,100万円

上記の早見表で、6,000万円✕30%ー700万円=1,100万円と、同じ結果になります。

法定相続人の数によって、相続税の金額に影響が出ます。

まず法定相続人の数だけ基礎控除額が600万円づつ増えるために課税対象になる財産が減り、税率も下がります。

また、死亡保険金や死亡退職金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)が増え、課税対象になる相続財産が減ります。

ただし、孫が養子の場合など、その者の相続税額に対して20%上乗せして納税をするケースもあるため、相続対策も視野に入れ、事前の検討が必要です。

相続税の基礎控除

また、相続税には基礎控除があり、まず最初に相続の正味の遺産額から以下の金額を差し引き、ゼロ以下になったら、相続税は発生しません。

基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

たとえば法定相続人が4人の場合、3,000万円+2,400万円で、5,400万円を超えた部分から相続税がかかります。基礎控除額を上回る正味の遺産額のある相続は、2022年財務省の調べで現状9.6%=相続税の発生は1割弱ほどといわれているため基本的には基礎控除の範囲に収まるでしょう。

また、相続税の控除の特例や節税方法はたくさんあるため、以降でご紹介します。

相続税の税額控除

相続税には基礎控除の他にも、利用できる税額控除があります。把握しておいて、計算の際に適用しましょう。

相続税で適用される税額控除

配偶者の税額軽減 配偶者の相続した遺産が、以下の金額のいずれか多い方を超えた部分のみ課税。

  • 1億6,000万円
  • 配偶者の法定相続分相当額
未成年者控除 法定相続人が未成年者(18歳未満)の場合、その者の相続税額から以下の金額を控除。

  • 10万円✕(18歳ー相続時の年齢)
障害者の税額控除 法定相続人が85歳未満の障害者の場合、その者の相続税額から以下の金額を控除。

  • 10万円✕(85歳ー相続時の年齢)

配偶者の税額軽減では、配偶者の相続の正味の財産が1億6千万円以上でも、法定相続分相当額が2億円なら、2億円が控除対象となります。

未成年者の年齢は、1年未満を切り捨てて計算します。控除額が相続税額より多い場合、引ききれなかったぶんは、未成年者の扶養義務者の相続税額から差し引くことができます。

障害者の税額控除は、相続人が特別障害者の場合には、控除額が2倍になります。控除額が相続税額より多く引ききれなかった部分は、扶養義務者の相続税額から差し引くことができます。

この他に死亡保険金は、相続人が保険金を受け取る場合、500万円 × 法定相続人の数が非課税となります。「残された家族の生活保障」の目的があるため、一定の死亡保険金は非課税対象です。非課税金額計算上の法定相続人数には相続を放棄した者も含まれます。

つまり、法定相続人の数が3人の場合、子どもが相続放棄しても、妻が受け取る死亡保険金から1,500万円が控除可能です。しかし、相続放棄したのが妻(死亡保険金受取人)の場合は、妻には非課税金額は適用となりません。

相続税の計算

出典:財務省ウェブサイト(https://www.mof.go.jp/tax_information/qanda021.html

不動産の相続税、評価額はどうやって決めるの?

相続財産は、現金ならそのままの額ですが、不動産や株式は、その価値を金額に直して評価する必要があります。

不動産の金額は、市場に売りに出したらいくらになるかではなく、「評価額」を計算して決めます。評価額は、市場価格より安く設定されます。

不動産相続税の評価は遺産総額を算出してから考える

相続税額の算出にあたって、税額計算の基礎となる相続財産について、その評価額を計算する必要があります。不動産以外の預金、株、貴金属なども含めて、それぞれの計算方法に従って評価額を算出し、合計します。

不動産の相続税だけを計算しても、あまり意味がありません。相続税額の算出には、全ての相続財産に関して正味の遺産額を計算の基礎とします。相続人等への分配の方法も関係してきます。
そのため、ある相続財産に対してのみ税額を計算することはできません。

たとえば「この不動産の評価額は5,000万円だから、税率20%で控除額200万円を差し引いて、800万円が相続税」とはなりません。

不動産の評価額の計算

不動産相続税は土地と建物を分けて考える

不動産の相続税における評価方法は、土地と建物を別にして考えます。土地と建物では、計算の根拠が異なるためです。

土地の評価方法には「路線価方式」「倍率方式」があります。路線価は国税庁が年に1回発表しているもので、評価は以下の式で求めます。

路線価×各種補正率×土地面積=評価額

各種補正率は「奥行価格補正率」や「奥行長大補正率」などがあり、土地の形などによって評価を補正する働きをします。

倍率方式は、路線価が定められていない地域で利用するもので、以下の式で求めます。

固定資産税評価額×倍率=評価額

固定資産税評価額は、市町村から毎年送られてくる「固定資産税課税明細」に記載されている金額です。明細書の土地の「価格」の欄の額が固定資産税評価額です。エリアによって異なる倍率も、国税庁のWebサイトで公開されています。

注意が必要なのは、相続した建物を評価する際、固定資産税課税標準額を拾ってしまうミスです。建物の評価で使うのは固定資産税評価額です。

固定資産税課税明細書には、固定資産税課税標準額、固定資産税評価額の二つの金額が記載されており、間違えないように気をつけましょう。固定資産税課税標準額のほうが固定資産税評価額よりも低いことのほうが多いため、間違えると過小評価で、訂正の対象となります。

また、被相続人が亡くなる直前に行った自宅のリフォームやリノベーションは、建築中の場合、費用現価×70%で評価されます。このときの費用現価は、「工事代金の総額×工事の進捗率」で算出します。

参考:国税庁『路線価図・評価倍率表

誰がどう取得する?同居の家族が有利って本当?

誰が何を引き継ぐか、分配の方法や割合は、基本的に法定相続分を基礎にし、遺言書で変わった指定があったとしても、兄弟姉妹以外の法定相続人には、法定相続分の半分ないし1/3の遺産取得分は、最低限保証されています。

「同居している家族が多くもらえるの?」などの声がありますが、そういう基準はなく、判定する人はいませんし、同居していない家族にも言い分はあるものです。

ただし、故人の財産の維持や増額に貢献した相続人には、寄与分といって、相続財産の増額を認める考え方はあります。たとえば長期にわたる介護は、施設に入っていた場合の費用に換算できます。

土地の評価額を大幅に下げられる「小規模宅地等の特例」は特定居住用宅地等の場合、配偶者か、被相続人と同居していた親族が対象(同居していない親族も対象となることがありますが、一定の適用要件を全て満たす必要があります)となるため、実家の宅地を受け継ぐ場合に、該当する人が多いことでしょう。

不動産の用途はさまざまで、相続する不動産が居住用か事業用かなどでも減額割合は変わるため、注意が必要です。また、上手に節税できるよう、「小規模宅地等の特例」など各種特例も適用するように対策したいものです!

小規模宅地等の特例

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相続対象の土地を評価する流れと算出方法

相続する資産の中でも、不動産は評価が出しにくく、分けにくい対象です。早めに評価のめどをつけたうえで、相続人の間で大まかなプランを話し合っておくのが良いです。

あらためて、相続財産の土地の評価額を出す流れの詳細をご説明します。

土地評価の流れ

まず土地の評価は、前述のように路線価方式倍率方式の二通りどちらかの基準で算出します。

路線価地域か倍率地域かを確認する

まず国税庁のWebサイトで、都道府県を選択。路線価図を選択して、該当のエリアをクリックすると路線価図が表示されます。
「路線価図」に該当箇所が無い場合は、評価倍率表を確認します。

参考:国税庁『路線価図・評価倍率表

評価減できる土地か確認する

評価減とは、現在の路線価方式や倍率方式による評価額よりも、実際の土地の価値が低く見積もられる要素があるとき、評価を下げられることです。

たとえば、同じ面積でも一般的な長方形の土地に比べて、細長いうなぎの寝床のような土地のほうが、利用価値は低いことになります。

評価減の可能な土地の例は以下です。

  • 旗状になっている土地
  • セットバックが必要=面積が減る予定の土地
  • 電車の騒音がひどい土地
  • 都市計画道路予定地の区画内
  • 広大地(地積規模の大きな土地)
  • 不整形地(三角地や台形地、傾斜地など)
  • 間口の狭い土地

賃貸されているかどうか確認する

土地に借地権が設定されていると、借地権割合に応じて相続税の評価は下がります。計算方法は下記のとおりです。

評価額=通常の自用地評価額×(1-借地権割合)

たとえば、自用地としての評価額が5,000万円、借地権割合が70%の土地では、評価額は5,000万円×(1 – 0.7 )= 1,500万円にまで下がります。

借地の土地評価は借地、アパート、マンション、貸家などそれぞれの計算式がありますので、当てはめて試算してみましょう。

「小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)」が適用になるか確認する

「小規模宅地等の特例」が適用できるか、対象となる親族がいるかも確認しましょう。配偶者、同居の親族以外に、被相続人に配偶者も同居親族もいない場合は、3年以上借家暮らしで自己所有の家がない別居親族で、相続税の申告期限までに保有していれば、「小規模宅地等の特例」を適用した評価額が認められます。

土地の評価額算出方法(更地)

では実際に、例を挙げて評価額を算出してみましょう。更地のケースからご紹介します。

路線価方式

路線価が30万円/平方メートル、各種補正率が1.0、面積が200㎡の土地を相続したとします。相続税評価額は次の計算で算出できます。

相続税評価額(路線価)=路線価×補正率×土地面積(㎡)
30万円×1.0×200㎡=6,000万円

相続税評価額は6,000万円となります。

ここで、土地が細長い場合の試算をしてみましょう。

前提:間口10m 奥行20m 面積200㎡普通住宅地区
奥行価格補正率=1.0
間口狭小補正率=1.0
奥行長大補正率=0.98

30万円×0.98×200㎡=5,880万円

相続税評価額は下がり、5,880万円となりました。

参考:国税庁『路線価図・評価倍率表
参考:国税庁『奥行価格補正率表

倍率方式

倍率方式の場合は、固定資産税評価額がベースでした。固定資産税評価額が2,000万円で、倍率が1.1の土地を相続した場合は、相続税評価額は以下で算出できます。

相続税評価額(倍率)=固定資産税評価額×倍率
2,000万円×1.1=2,200万円

相続税評価額は2,200万円です。

参考:国税庁『路線価図・評価倍率表

土地の評価額算出方法(建物が建っている土地)

続いて、土地に建物がある場合の評価額の算出方法を解説します。建物のある宅地は、その用途によって、本来の評価額から最大80%減額することができます。

詳細は、以下をご参照ください。

「小規模宅地等の特例」の詳細

被相続人が住んでいた場合(特定居住用宅地等)

一般的に「小規模宅地の特例」と呼ばれるのが、被相続人の住んでいた家の土地に対する評価減です。330平方メートル(約100坪)を上限として、80%が減額されます。

被相続人が事業用に使用していた場合(特定事業用宅地等)

自営業の店舗などとして、事業で使っていた場合に受けられる特例です。事業用地400平方メートルまでの部分について、80%が減額されます。ただし、アパート用地のような貸付事業はこの特例から除かれています。

特定同族会社の事業用に使用していた場合(特定同族会社事業用宅地等)

被相続人および親族などの持ち株割合が50%を超える、法人化した同族企業の事業用に使っていた場合は、400平方メートルまでの部分について、80%が減額されます。

被相続人が不動産貸付業で使用していた場合(貸付事業用宅地等)

貸宅地、貸家建付地、構造物のある駐車場など、いわゆる不動産賃貸業を行っていた中で、条件に該当する土地が対象です。200平方メートルまでの部分について、50%が減額されます。

「小規模宅地等の特例」による相続税の控除

特定居住用宅地 土地を居住地として使っていた場合。330平方メートルまでの部分について80%減額。
特定事業用宅地 自営業の店舗などとして事業で使っていた場合。400平方メートルまでの部分について80%減額。
特定同族会社事業用宅地 法人化した同族企業の事業用に使っていた場合。400平方メートルまでの部分について80%減額。
貸付事業用宅地 貸宅地、貸家建付地、構造物のある駐車場など。200平方メートルまでの部分について50%減額。

 

相続対象の建物を評価する流れと算出方法

続いて、建物の評価の流れをチェックしましょう。建物の評価は比較的シンプルです。

建物評価の流れ

建物の評価は基本的に、固定資産税評価額×1.0です。

固定資産税評価額を確認する

固定資産税の通知は自治体にもよりますが、5月に自宅宛に発送されることが多いです。

建物の固定資産税評価額は、新築時の固定資産税評価額は、実際の建築費に対して6~7割程度の場合が多いでしょう。

新築時に評価されて以降、3年ごとの評価替えで経年減点補正などがされて評価額が減少していきます。一定年数を経過したのちゼロにはならず、最終残価率で2割が残るようになっています。

2024年が評価替えの年にあたるので、評価額の変更をチェックしてみてはいかがでしょうか。

賃貸されているかどうか確認する

賃貸されていた場合には、以下のように評価額の計算が変わります。

固定資産税評価額×(1−借家権割合)

「借家権割合」とは借り手側が家屋を借りて使用する権利のことで、その割合は30%と定められています。つまり、固定資産税評価額の70%まで評価が下がることになります。後述の通りアパートの場合は、賃貸に出している床面積の合計のうち、被相続人がなくなった日に賃貸されている面積の割合によっても評価額が変わります。

建物の評価額算出方法

建物の評価額は、基準年度の固定資産税評価額に、建物同様の評価倍率(1.0)を乗じて求めることとされています。

基準年度の固定資産税評価額 × 評価倍率(1.0)= 建物の評価額

たとえば、固定資産税評価額が2,400万円の場合、相続税評価額も2,400万円となります。

被相続人が住んでいた場合

被相続人が住んでいた建物の評価額は、上記のように固定資産税評価額の金額となります。

また、被相続人が住む予定で建築中だった建物は、工事代金に被相続人がなくなった日における工事の進捗率を乗じた金額の70%にて評価をするようになっています。

賃貸の用に供していた場合

相続する建物が賃貸されていた場合も、以下の式で評価します。

貸家の評価額=固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)

借家権割合は全国で一律30%と定められています。賃貸割合は、その貸家の各戸の床面積合計のうち、被相続人の亡くなった日の時点で賃貸されている部分の占める割合のことです。

賃貸物件は、入居者の賃貸借により所有者の自己使用が制限されています。また、所有者が建物を自由に使用するためには、入居者に立退料を支払って立ち退いてもらう必要があります。

以上から、借家権割合と賃貸割合が評価から差し引かれます。被相続人が亡くなった際に満室であれば、通常の自宅などの評価額の、70%相当の評価にできます。空室が相続開始後1か月以内程度の場合、賃貸中とみなされることもあります。

相続対象の戸建住宅を、第三者に賃貸していた場合は、賃貸割合は100%となるので、以下の式となります。

固定資産税評価額×(1−借家権割合)

したがって評価額は、固定資産税評価額✕0.7で計算できます。

マンションを区分所有していた場合

分譲マンションなどの区分所有物件は、2024年より相続税の評価方法が変わりました。

2024年以降に相続があった場合は、下記のように「区分所有補正率」を掛けて計算するようになりました。区分所有補正率は、都市部の高層マンションの相続税評価額が、市場価格より著しく安く評価されている点を調整するために、導入された経緯があります。

区分所有物件の評価方法

(A)従来の区分所有権の価額(1) × 区分所有補正率
(1) 家屋の固定資産税評価額 × 1.0
(B)従来の敷地利用権の価額(2) × 区分所有補正率
(2)路線価✕面積(又は固定資産税評価額✕評価倍率)✕敷地権の割合評価額 = 区分所有権の価額(A) + 敷地利用権の価額(B)

参考:居住用の区分所有資産の評価が変わりました|国税庁

相続税率が大きく変わる!「小規模宅地等の特例」とは

本項までにも何度か登場した「小規模宅地等の特例」ですが、改めてご紹介します。

「小規模宅地等の特例」概要

「小規模宅地等の特例」とは、相続した土地の評価額を、最大80%まで減額できる制度です。例として、土地の相続税評価額が5,000万円だった場合、この特例を使うことで、適用要件を満たしていれば1,000万円にまで引き下げることもできます。

なぜ当該の特例があるのかは、土地の相続で相続税を収めきれずに手放さざるをえないような事態を防ぐための対策です。

土地の価格に比例して相続税も多額になりがちで、相続税は現金一括払いが原則のため、土地を売却しないと現金が支払えない人もいます

相続対象の家に住んでいた人なら、住まいを失ってしまう可能性もあります。そうした状況に陥らないために、被相続人の配偶者や同居親族などを対象に、「小規模宅地等」の特例が存在します。

「小規模宅地等の特例」減額割合

評価額が減額される割合は、宅地の用途によってそれぞれ定められています。

土地を居住地として使っていた場合、自営業の店舗など事業で使っていた場合、法人化した同族企業の事業用に使っていた場合などは400平方メートルを限度に80%の減額、賃貸経営や事業用貸付に使っていた場合は200平方メートルを限度に50%の減額となります。

「小規模宅地等の特例」の対象

「小規模宅地等の特例」の対象になる土地をおさらいします。「小規模宅地等の特例」を使うにあたっては、大きく分類すると、次の3つのケースにあてはまります。

  • 被相続人等の居住の用に供されていた宅地等
  • 被相続人の事業の用に供されていた宅地等
  • 被相続人等の貸付事業の用に供されていた宅地等

特定居住用宅地等

「小規模宅地等の特例」でもっとも多い、親の自宅を相続するケースです。特定居住用宅地等の場合、次の2つのうちのいずれかを満たす必要があります。

1.被相続人が住宅で使っていた土地
  • 配偶者が取得する
  • 被相続人と同居していた親族が取得し、相続税の申告期限まで引き続き居住し、所有する
  • 被相続人と同居はしていない親族が取得し、以下の要件を満たすとき
    ⚪︎被相続人に配偶者がいないこと
    ⚪︎被相続人と同居している法定相続人がいないこと
    ⚪︎被相続人が亡くなる前の3年間、日本国内にあるその人あるいはその人の配偶者、三親等以内の親族または特別の関係がある一定の法人の所有する家屋に居住したことがないこと
2.被相続人の生計を一にする親族が居住用として使っていた土地
  • 配偶者が取得する
  • その生計を一にする親族が取得して、相続税の申告期限まで引き続き居住し、所有する

特定居住用宅地等の特例が適用されると、330㎡までの面積を限度に、80%まで評価額の減額が可能です。

特定事業用宅地等

被相続人が、自己の所有していた土地で事業を行っていたケースです。たとえばお店を開いていたり、個人事業主としての事務所を構えていたなどです。

ただし、2019年4月1日以後の相続からは、相続開始前の3年以内に、新たに事業の用に供されていた土地は原則として、この特例の適用の対象外です。

後述しますが被相続人が貸付の事業や、事業を法人化していた場合は別の規定が適用されます。

このケースを「特定事業用宅地等」と呼び、特例の適用には次の要件を満たすことが必要です。

  • その土地を取得した親族が被相続人の事業を受け継ぎ、相続税の申告期限までその事業を継続
  • 上記以外で、その土地で事業を行っていた生計を一にする親族がその土地を取得し、相続税の申告期限までその事業を継続
  • その土地を相続税の申告期限まで保有

特定事業用宅地等の特例が適用されると、400㎡までの部分の土地に対して、80%まで評価額が減額されます。

特定同族会社事業用宅地等

特定同族会社」とは、相続開始の直前において、被相続人やその親族が、株式や出資の総額の50%超を保有している法人です。個人事業ではなく法人化したケースでは、個人である被相続人が、法人に対して事業用地を貸しつけていた扱いになります。

このケースの特例適用の要件は次の2つです。

  • その土地を取得した親族が、相続税の申告期限の時点でその法人の役員
  • その土地を申告期限まで保有

同族会社の特例が適用された場合、400㎡を限度に80%まで評価額の減額ができます。

貸付事業用宅地等

貸付事業用宅地等は、被相続人が賃貸住宅や駐車・駐輪場などの不動産貸付業を行っていた場合に適用を受けることが出来る宅地をいいます。なお、2018年4月1日以後の相続より、相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された土地は、原則として適用の対象外となっていますので、注意しましょう。

貸付事業用宅地等の特例が適用されるための要件は、以下です。

  • その土地を取得した親族が、被相続人の貸付事業を受け継ぎ、相続税の申告期限までその貸付事業を継続、またはその土地で貸付事業を行っていた生計一親族がその土地を取得し、相続税の申告期限までその貸付事業を継続
  • その土地を申告期限まで保有

特例が適用された場合は、200㎡を限度に、50%まで評価額の減額ができます。

日本郵便株式会社に貸し付けられている一定の郵便局舎の敷地の用に供されている宅地等

日本郵便に貸し付けられている郵便局舎の敷地などの宅地を相続する場合は、以下の要件すべてを満たす場合、「小規模宅地等の特例」の適用を受けることができます。

  • 平成19年9月30日以前から被相続人又はその相続人が旧日本郵政公社との間の賃貸借契約に基づき郵便局舎の敷地の用に供されていた宅地等であること。
  • 平成19年10月1日から相続の開始の直前までの間に、継続して郵便局舎の敷地に貸し付けられていた宅地等であること。
  • その宅地等を取得した相続人から、相続の開始の日以後5年以上その郵便局舎を日本郵便株式会社が引き続き借り受ける見込みであることについて、総務大臣の証明がなされたものであること。
  • 郵便局舎の宅地等について、すでにこの特例の適用を受けていないこと。

特例が適用された場合は、200㎡を限度に、50%まで評価額の減額が可能です。

「小規模宅地等の特例」 の特例を受けるための手続き

「小規模宅地等」の特例の適用を受けるためには、相続税の申告手続きを期限内(被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内)に行う必要があります。

相続税がゼロであっても、特例を使わなければ相続税が発生していた場合には、特例を有効にするための申告が必要となるためです。

例えば特定居住用宅地等の場合、申請のための書類は、被相続人との同居の有無によって必要な書類が異なります。相続税の申告書に添付する書類は、以下のものが挙げられます。

共通で必要な書類
  • 「被相続人の全ての相続人を明らかにする戸籍謄本」あるいは「法定相続情報一覧図」の写し
  • 遺言書の写し、または遺産分割協議書の写し
  • 相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書に押印したもの)
被相続人と同居していた場合
  • 特例の適用を受ける宅地等に自身が住んでいることを明らかにする書類(被相続人の配偶者又はマイナンバーを提出する者は不要)
被相続人と同居していなかった場合
  • 相続開始前3年以内の住所等を明らかにする書類(マイナンバーがある場合は不要)
  • 登記簿謄本や賃貸借契約書など相続開始前3年以内に住んでいた家屋が、自己・自己の配偶者・3親等以内の親族または同族会社等が所有する家屋でないこと、または相続開始時に自己が居住している家屋を、相続開始の以前に自己が所有したことがないことを証明する書類
被相続人が老人ホーム等に入所していた場合
  • 被相続人の戸籍の附票の写し
  • 介護保険の被保険者証の写しや障害者福祉サービス受給者証の写しなど
  • 施設への入所時における契約書の写しなど

 

相続財産である不動産を売却した場合に適用を受けることができる特例

相続した不動産を売却するのも、相続のひとつの方法です。分けにくい不動産は、換価分割と呼ばれる、誰か1人の相続人が相続したうえで、お金に換えて分ける相続もよく行われています。この項では、相続不動産の売却の際に役立つ特例をご紹介します。

空き家の発生を抑制するための特例措置

「空き家特例」の名前で知られつつある特例措置で、正式名称を、被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例といいます。

相続または遺贈により取得した被相続人の家屋、またはその敷地等を、平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に売って、一定の要件に当てはまる場合、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除できます。

ただし、令和6年1月1日以後に行う譲渡では、相続人の数が3人以上である場合は、控除額は2,000万円までとなります。

空き家特例の対象になる物件

特例の対象となる物件 被相続人の住んでいた建物とその土地で、以下の3つすべてに当てはまるもの。

  • 昭和56年5月31日以前に建築されたこと。
  • 区分所有建物登記がされている建物でないこと。
  • 相続の開始の直前に被相続人以外に居住していた人がいなかったこと。

要介護認定等を受けて老人ホーム等に入所するなどの理由により相続の開始の直前において被相続人が住んでいなくても、一定の要件を満たす場合は、被相続人居住用家屋に該当。

その土地にある2つ以上の建築物(母屋と離れなど)のある土地の場合には、母屋の床面積の占める割合に応じた面積の土地の部分に限る。

相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

相続で取得した土地、建物、株式などの財産を一定期間内に譲渡した場合、相続税額のうち一定の金額を、譲渡資産の取得費に加算して、譲渡所得の申告をすることができます。

相続財産を譲渡した場合の取得費の特例・要件

特例の適用を受けるための要件
  • 相続や遺贈により財産を取得した者であること。
  • その財産を取得した人に相続税が課税されていること。
  • その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること。
計算方法・計算式 譲渡した財産ごとに、次の算式で計算した金額。ただし、特例を適用しないで計算した譲渡益の金額を超える場合は、その譲渡益相当額となる。

相続税額×譲渡した財産の相続税評価額÷(取得財産の価額+その他相続時精算課税適用財産や贈与財産の価額
手続き この特例の適用を受けるためには、以下の書類を添えて確定申告をします。

  • 相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書
  • 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]

不動産の相続税、算出の準備チェックリスト

それでは、ご自身の相続を想定し、ここまでご説明した流れに沿って実際に相続税算出の準備をしてみましょう!

  • 遺産総額は把握できましたか。
  • 不動産の評価は路線価か倍率で算出できますか。
  • 不動産の立地や形、現在の用途は把握できましたか。
  • 建物の固定資産税評価額は分かりましたか。
  • 法定相続人や相続人が何人になるかを、正確に把握できましたか。
  • 相続人やそれ以外の者での中で、不動産に関して特別な希望はありますか。
  • 「小規模宅地等の特例」が適用できるか、確認できましたか。

面倒なようですが、ていねいに手分けして行えば、意外に早く概算はできます。不明点は本記事を参照いただく他、不動産会社、税務署への問い合わせをしましょう!

不動産相続税の対策

相続税対策には、普段からの相続人の間での意思疎通と、積極的な資産活用がおすすめです。時代に合った相続税対策を行いましょう!

不動産の相続税対策はいろいろなメリットが

相続はまだ先のことでも、今から始められる相続税対策があります。

評価額を低くするためにもっとも広く使われる手段は、アパートやマンション、テナントを建築し、賃貸化をすることです。

賃貸物件を建築した場合、満室の状態で、通常の土地の評価額より21%が減額(借地割合70%の地域の場合)され、建物の相続税評価額も、新築で約70%程度になります。

また、土地が200㎡であれば、相続の際に「小規模宅地等の特例」を適用することでさらに節税することが可能となります。

特例が有効になるには、貸付開始から相続開始まで3年が必要です。思い立ったら行動をおすすめします。

関連記事:不動産による相続税対策で1,000万円を超える節税効果も?仕組みと計算法をわかりやすく解説

不動産で土地活用をするならこれからの時代の流れを知っておきたいものです。そんな情報を集めた資料を作りました。

不動産相続で注意すべきポイント

相続税の計算以外に、相続の際に注意するポイントをまとめました。

不動産の相続税以外にかかる費用を把握する

相続の際には、相続税の支払いの他、相続登記が必要になります。被相続人の不動産を相続人の名義に書き換える登記には、おもに次のような費用がかかります。

  • 登記に必要な書類の取得費用
  • 登録免許税
  • 司法書士への報酬

戸籍謄本などの必要書類は、相続人の数など相続の状況によって意外に高額になることもあります。

登録免許税とは、登記を申請する時に納める税金です。税額は土地や建物の固定資産税評価額に税率をかけて算出します。現在の税率は0.4%となっています。

現在相続登記を促進するために、令和7年3月31日までの期限付きですが、登録免許税の免税措置が設けられています。次の3つのいずれかに該当する場合には、登録免許税がかかりません。

  • 相続により土地を取得した人が相続登記をしないで死亡した場合
  • 評価額が100万円以下の土地について相続登記をする場合
  • 表題部所有者のみが登記された評価額100万円以下の土地で、相続人名義の所有権保存登記をする場合

非課税の対象となるのは土地のみで、建物の相続についての免税措置は行われていません。

司法書士への報酬は、5~15万円が相場です。この他、書類作成の代行や調査、相談の依頼で税理士、弁護士、不動産鑑定士などの専門家に支払う費用の発生もありえます。

相続税の納付期限を把握する

相続税は原則として、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に、現金で一括納付するルールになっています。

納付の場所は、最寄りの金融機関、または所轄の税務署です。納付の場所に用意してある納付書に住所、氏名、税額、申告書を提出した税務署名などを記入して、現金に納付書を添えて提出しましょう。

相続税を支払わないでいると、延滞税や無申告加算税が加算されます。延滞税は期限の翌日から加算され、期限以降2か月後からは14.6%、無申告加算税は税額50万円以下で15%と、高率の延滞税がかかってしまいますので、要注意です。

相続税が払えないときの手段を知っておく

いきなり現金納付となる相続税は、相続人には難題です。売却などの対処でも、納付期限に間に合わないこともありえます。また、相続が発生してから遺産分割協議がまとまるまでの間は、故人の銀行口座は凍結されて、お金が引き出せなくなります。

協議がまとまるまでに時間がかかれば、納付期限が迫ってきます。払えないときの状況をシミュレーションしておきましょう。

相続財産を売却して現金化

相続財産の現金化で、納付に備える方法です。不動産の現金化は、話し合いや売却期間に時間がかかります。

金融資産(現金・預貯金)や株式(上場株式・投資信託等)、保険などから現金を調達するのがおすすめです。

ただしこの場合前述のように、遺産分割協議で相続人の相続割合や相続の内容が決定している必要があります。

相続税の延納

相続した財産を所有し続けたい方には、相続税を最大20年にわたって分割で支払える相続税の延納の制度があります。延納が認められると、延納した税額を延納期間で割った金額を毎年支払います。延納できる条件は以下です。

  • 相続税額が10万円を超える。
  • 金銭の納付が困難な事由があり、納付を困難とする金額である。
  • 延納額と利子税の額に相当する担保を提供する。ただし、延納税額が100万円以下で、かつ延納期間が3年以下である場合には担保は不要。

延納申請にかかわる相続税の納期限、または納付すべき日=延納申請期限までに、延納申請書に担保提供関係書類を添付して税務署長に提出する。

相続税の物納

相続税の納税には、不動産などの相続財産をそのまま相続税として納められる物納の制度もあります。物納するには、以下の全ての要件を満たす必要があります。

  • 延納によっても金銭の納付を困難とする理由があり、かつ、その納付を困難とする金額を限度としている。
  • 物納申請財産は、納付すべき相続税額の課税価格計算の基礎となった相続財産のうち、次に掲げる財産および順位(①から⑤の順)で、その所在が日本国内にある。
    ①国債、地方債、不動産、船舶
    ②不動産のうち物納劣後財産に該当するもの
    ③社債、株式、証券投資信託または貸付信託の受益証券
    ④株式のうち物納劣後財産に該当するもの
    ⑤動産
  • 物納に充てることができる財産は、管理処分不適格財産に該当しないものであること(物納劣後財産に該当する場合には、他に物納に充てるべき財産がないこと)。
  • 物納しようとする相続税の納期限または納付すべき日(物納申請期限)までに、物納申請書に物納手続き関係書類を添付して税務署長に提出する。

参考:国税庁「相続税の物納

一部分割を行う

遺産分割協議で、相続の全体像をまとめるのに時間がかかる場合は、相続人全員の同意のもとに、相続財産の一部を先に分割して納税するのが、一部分割です。

一部分割を行っても、残りの遺産は分割協議を行う必要があり、先に行った一部分割をどう反映させるかが問題になる場合もあります。

また、不動産を一部分割する場合、被相続人と同居していた相続人が自宅を先に一部分割した時、そこには住めなくなり、別の住居を確保する必要が出てきます。

また、被相続人が亡くなった際に取り急ぎ入金されるお金は、死亡保険金です。保険金から納税しておいて、あとで分割協議を行うのは可能です。前述のように生命保険には相続人が取得した場合には、法定相続人一人あたり500万円に非課税枠もありますので、葬儀費用など当座の急用にも利用しやすくなっています。

相続放棄する

相続税を支払うお金を用意できない場合には、相続放棄もできます。

相続放棄をすれば、相続税の納税自体が不要です。相続財産には借金などマイナスとなる財産もあるので、その回避にも有効な手段です。また、放棄すれば相続人ではなくなるため、遺産分割のもめ事などにも、関係する必要がなくなります。

ただし相続放棄の場合、相続財産を受け継ぐ権利をすべて手放すことになります。相続放棄は、相続が発生したことを知ってから3カ月以内の手続きが必要となります。

この他、金融機関からの借り入れで相続税を支払ったほうが、延納の利子税よりも低金利での返済が可能になることもあります。

相続した財産を現金で受け取ったり、収入の発生する財産を相続した場合は確定申告が必要で、その結果相続税とは別に、所得税も課税されますので、覚えておきましょう。

遺産相続で確定申告が必要になるケース

相続した遺産を売却した場合 ・相続した土地や建物、株式などを売却した場合。

・相続により取得した土地や建物、株式などを相続後に売却し、利益が出た場合その利益に対して所得税がかかる。売却日の翌年3月15日までに確定申告をする。

収入が生じる遺産を相続した場合 ・収入を生む遺産とは、賃貸マンションやアパート、駐車場などを指す。
相続開始日以降の賃貸収入は、相続人の収入として所得税の確定申告を収入が生じている間は毎年行う。・賃貸不動産を相続する人がすでに遺言で指定されている場合は受遺者が確定申告を行い、遺言がない場合は遺産分割協議が終わるまで相続人全員の共有財産となる。すなわち、家賃収入や諸々の経費を法定相続分で分割し、各自が確定申告をする。・相続発生日が年の途中である場合、その日までの家賃収入は被相続人の収入であるため、その分が相続財産となる。被相続人の所得として税務署に申告し、納税する(準確定申告)。 申告の期限は相続人が相続の開始があったことを知った日の翌日から4カ月以内に行う。
相続した遺産を寄附した場合 ・相続税の申告期限までに寄附した場合には、相続税の対象としない特例が適用される可能性がある。
また、相続税の期限後に寄付した場合には、所得税の寄附金控除の適用がある。<寄附金控除の対象となるおもな寄附先>
国、都道府県、市区町村、日本赤十字社の支部、公益財団法人、公益社団法人、学校法人、社会福祉法人、認定NPO法人、政党、政治資金団体
相続した遺産を換価分割した場合 ・遺産をすべて現金化し、相続人同士で分け合う「換価分割」を行った場合。

・遺産を売却して取得した現金は、収入として売却益部分に所得税がかかり、確定申告が必要。相続発生後に遺産分割が行われた場合、翌年3月15日までに確定申告をする。
未支給年金・死亡保険金を受け取った場合 ・未支給年金は相続人の一時所得として取り扱われるため、確定申告が必要。ただし、一時所得には50万円の特別控除があり、未支給年金を含めたその年の一時所得が50万円以下の場合は申告の必要なし。

・死亡保険金を受け取った場合、被保険者、保険料の負担者、保険金受取人が誰であるかにより、所得税、相続税、贈与税のいずれかの課税の対象になるので要注意。

・所得税が課税されるのは、保険料の負担者と保険金受取人とが同一人の場合のみ。この場合の死亡保険金は受取の方法により、一時所得または雑所得として課税される。

相続した不動産をどうするか、考えておくべき重要ポイント

せっかく税金対策して相続した不動産は、そのまま放置となってはもったいないばかりでなく、損をしてしまいます。

昨今は空き家対策が問題になり、自治体の指定を受けると固定資産税の優遇がなくなって最大6倍となったり、廃屋の強制執行と費用の支払いを求められたりします。ぜひ有効な活用方法を検討しましょう。

相続人が住む

相続人が住む場合、相続登記で所有権移転を行い、相続税の納税をする必要があります。相続による不動産の取得を知った日から、3年以内に相続登記を行わない場合、10万円以下の罰金の対象になります。

また、実家は売買取引で購入した物件ではないので、どのような不具合が隠れているか、一切チェックなどがされていません。「まだまだ使う!」場合は、一度専門業者に検査してもらうことをおすすめします。

しばらく暮らしながら、リフォームや今後の活用方法を不動産会社のスタッフと相談するのも良いでしょう。

売却する

相続した後に売却し、相続税納税や、あらたな物件購入に使うのも一つの方法です。

節税対策で購入した不動産の場合は、売却の時期に注意が必要です。購入してからの所有期間が5年以下である不動産を売却すると、合計で39.63%の、高率の譲渡所得税がかかってしまうためです。

また、所有期間は不動産購入から売却・引き渡しまでではなく、購入した日から買い手に引き渡した年の1月1日までです。つまり売却の年の日数は計算に入らないため、間違えると短期譲渡所得扱いになってしまうので、要注意です。

関連記事:
相続対策としての不動産売却|フィル・パーク

活用する

相続した不動産を活用して収益源とする選択肢もあります。

駐車場、アパート・マンション経営、コインパーキングなど、土地の形状や広さ、所在地によって土地活用には様々な選択肢があります。フィル・カンパニーでは、豊富な活用実績から土地オーナー様のニーズに沿った提案が可能です。土地活用事業の最初から最後まで、オーナー様と一体となって事業の成功に向けて伴走いたします。

フィル・カンパニーをご利用いただいた、これまでの成功事例をご覧ください。

投資回収が早いフィル・パークのビジネスモデル
コインパーキングと商業ビルの両方から収益を得られるビジネスモデルです。建築コスト・メンテナンスコストも低く抑えられ、初期テナント誘致保証で安心のスタート。

「駐車場は無難だけど面白くない、それに地域づくりにも関われない…」
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東京都中央区 中村様(2棟オーナー)

圧倒的な投資利回りに、大変満足しています
高収入の駐車場を残したまま新たにテナント賃料が入る。十二分に納得のいく投資対効果があると判断できました。
愛知県名古屋市 古川様(フィル・パーク名古屋栄オーナー)

まとめ

税金の計算は、例外や改定などを理解しながら進めるのが面倒で、不動産の評価も、プロの目線で算出しないと、相続税がかかってしまう場合も。

また、相続人となる家族の間でコミュニケーションが取れていないと、のちまでのトラブルの種になりかねません。

不動産の相続は、土地建物のプロである不動産業者のサポートを受けて、対策・準備していくのが一番です。相続や土地活用は、お気軽にご相談ください!
この記事の監修者

黒部 豪

税理士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/GKコンサルティング合同会社 代表社員

東京都出身。明治大学理工学部物理学科卒業。大学卒業後はIT会社に勤務していたが、一念発起して税理士に。都内の税理士事務所に約10年ほど勤務したのち、2021年にくろべ税理士事務所を開業。法人や個人事業主の税務顧問以外に、相続やファイナンシャルプランなどのスポット案件も行う。

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