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2024.06.25 土地活用成功事例駐車場経営

駐車場経営の利回りの目安とは?相場や計算方法、安定した収益につながる運営方法まで徹底解説

この記事の監修者
垣内 典之一級建築士垣内 典之

駐車場の利回りは一体どれくらいなのか?―― 駐車場経営を検討している方にとって、大きな関心事ではないでしょうか。駐車場経営は比較的取り組みやすい不動産投資である一方、利回りなど事前の収支計算をきちんとしないと失敗してしまうこともあり得ます。ここでは、月極駐車場経営とコインパーキング経営における利回りの相場と計算方法、駐車場経営を成功に導くポイントなどについて詳しく解説します。

土地活用を検討している方は、まずは専門家に相談してみるのもおすすめです。

駐車場経営の重要な利回りの相場と目安

まずは、駐車場経営において重要となる利回りの考え方と相場について見ていきます。

利回りの計算方法

駐車場経営は不動産投資の一種です。「投資」というからには収益を上げることを目標とするわけですが、投資を行う際には判断材料となる指標が必要になります。投資家はその指標を駆使することで、複数ある投資商品を比較したり、売買の判断をくだしたりします。その投資指標のもっとも基本となるのが「利回り」です。

利回りをかんたんに説明すると、「投資金額に対して運用商品がどれだけ利益を生んだか」を計測するものです。つまり、駐車場経営における利回りは、土地の価格に占める駐車場収入の割合と考えます。

表面利回りと実質利回りとは

利回りにはいくつかの種類があります。駐車場経営において意識される利回りは、「表面利回り」と「実質利回り」になります。

表面利回りとは、年間の駐車場収入を土地価格で割って求められる数字です。「グロス利回り」とも呼ばれます。駐車場経営の表面利回りを求める式は以下の通りです。

表面利回り(%)=年間駐車場収入÷土地価格×100

表面利回りは、その駐車場経営の収益性を大づかみに把握する指標です。実際のお金の流れとは違って、駐車場整備のための初期費用や維持費用が含まれていません。年間駐車場収入の算出も満車想定で行うので、表面利回りのみで投資判断をしてはいけません。

次に実質利回りですが、実質利回りの計算にあたっては駐車場整備のための初期費用や、年間の管理費用などの維持コストが参入され、「ネット利回り」とも呼ばれます。

実質利回りの計算式は以下のようになります。

実質利回り(%)=(年間駐車場収入-駐車場経営にかかる諸経費)÷(土地価格+初期費用)×100

表面利回りよりも実質利回りのほうが現実のお金の流れに近いので、重視されます。

駐車場経営における利回りの相場

駐車場経営には、大きく分けて「月極駐車場」と「コインパーキング」があります。

月極駐車場は利用者と月単位で契約を結び、毎月一定の賃料(駐車場代)を受け取る駐車場を指します。それに対し、コインパーキングは駐車した時間分の料金を支払う、時間貸し駐車場のことです。どちらも基本、建物などは必要なく、月極駐車場は地面の整地をすれば始められます。コインパーキングの場合は精算機や看板などの設置が必要になりますが、早くて数週間以内に始められる手軽な不動産投資になります。また、どちらも365日24時間の無人営業が可能なので、運用コストは少なくてすみます。

一般的に月極駐車場経営の利回りの相場は、おおよそ5%だとされています。一方、コインパーキング経営は、集客に成功し、うまく回転すれば効率的に収益を上げることができ、その利回りの相場は15~30%とされています。

駐車場の賃料は、おおよそ地価を反映しているといえ、地価の高い東京の中心部がもっとも賃料が高く、地方に行くほど賃料が安くなります。

総務省によるデータから、月極駐車場の賃料とコインパーキングの料金相場を見ていきましょう。

地域 月極駐車場(月額) コインパーキング(時間貸し)
東京都区部 27,066 694
札幌 12,433 427
仙台 12,500 372
横浜 17,608 553
名古屋 6,833 527
大阪 20,000 392
福岡 11,026 200

 

月極駐車場の賃料とコインパーキング代ともに、東京都区部が一番高いことがわかります。

出典:総務省 小売物価統計調査(動向編)2023年

儲かる?儲からない?事例を使ってシミュレーション

実際に駐車場経営がどの程度の収益をもたらすのか、横浜市の駅近くを想定したモデルを用いて、詳細なシミュレーションを行ってみましょう。

月極駐車場のモデルを以下のように設定します。

  • 横浜市の駅に近い土地
  • 土地の価格:4,000万円
  • 駐車台数:10台
  • 賃料:1万7,000円
  • アスファルト舗装など初期費用:300万円
  • 管理費など維持費用:年間100万円
  • 契約率:90%

まず、土地の選定ですが、交通の利便性が高く、日々多くの人々が行き交う駅に近い土地は、駐車場経営において理想的な立地条件を備えています。ここでは、土地価格を4,000万円と設定し、10台の駐車スペースを確保できるとします。

賃料は、横浜市の駅近くという好立地を考慮し、1台あたり1万7,000円と設定しました。地域の平均的な価格帯と比較しても妥当な範囲内であり、市場競争力を維持しつつ利益を出すために重要な要素です。

維持費用は、税金、保険料などを年間100万円と見積もります。駐車場の清掃や保守、セキュリティの維持、さらには雨天時の排水設備のメンテナンスなどが含まれます。

契約率は、駐車場の稼働率を示す重要な指標です。ここでは90%という高い契約率を仮定していますが、これは、立地やサービスの質、市場の需要と供給のバランスなどが適切に管理されていることを前提としています。

表面利回りの計算

満車想定の年間駐車場収入は以下の計算式で求められます。

1万7,000円×10台×12ヶ月=204万円

これを土地価格で割ると表面利回りとなります。

204万円÷4,000万円×100=5.1%

表面利回りは5.1%と算出できました。

この数字は、投資に対する直接的な収益率を意味し、他の不動産投資や金融商品との比較に用いられます。

実質利回りの計算

初期費用・維持費用を計算に入れて、実質利回りを計算すると以下のようになります。

(204万円×0.9-100万円)÷(4,000万円+300万円)×100≒1.9%

実質利回りは1.9%と算出できました。

これは、駐車場経営の実際の収益性をより正確に反映した数字であり、長期的な投資の成果を測る際に重要な指標です。

土地を所有している場合

これは土地を購入して駐車場経営を行うモデルでしたが、初めから土地を所有している地主の場合の実質利回りはどうなるでしょうか。

(204万円×0.9-100万円)÷300万円×100≒28%

なんと28%にまで跳ね上がりました。駐車場経営は、もともと土地を所有している地主に圧倒的に有利な資産運用方法であることがわかります。

以上のシミュレーションを通じて、駐車場経営が土地所有者にとってもたらすメリットが明らかになりました。立地、賃料設定、維持管理の質など、成功への要因は多岐にわたりますが、適切な戦略と管理が行われれば、駐車場経営は安定した収益源となることが期待できるでしょう。

駐車場経営における利回り最大化の方法とは

では、駐車場経営における利回りを最大化させるには、どのようなことに気をつけるべきでしょうか。

利用者が必要としている立地か

駐車場経営の成否を大きく左右するのは立地です。車に乗っている人が必要としている立地か否かがすべてを決めるといっても過言ではありません。

とくにコインパーキングであれば、稼働率が収益を左右する大きなカギとなるので、ターミナル駅の近くや大型商業施設の近く、観光名所の近くなどが有利といえるでしょう。

月極駐車場であれば、住宅地の中でもニーズが見込めます。アパートやマンションが多く建っている住宅地であれば、駐車場の需要があると想定できるでしょう。また、オフィス街の場合は、法人契約が見込めることがあります。

運営方式の種類は

駐車場経営の利回りを向上させるには、運営方式も考える必要があります。駐車場経営には、主に以下の3つの運営方式があります。

  • 自主管理
  • 管理委託
  • 一括借り上げ(サブリース)

順番に解説します。

自主管理

自主管理は、駐車場の管理をすべてオーナーが行う管理方式です。

オーナー自身が管理業務を行うため、管理委託費用は発生しません。年間維持費用を節約し、収益性を高める効果があるといえます。

月極駐車場経営はアパート・マンション経営などとは異なり、管理業務が少ないでしょう。それでも、駐車場利用者との契約・更新・解約手続きを行なったり、毎月の賃料を回収したりする業務が発生します。駐車場内の掃除や巡回、事故対応などもオーナー自身で行なわなければなりません。

管理委託

管理委託は、駐車場の管理を運営会社に委託する方式です。先に述べた管理業務をすべて運営会社に任せることができるため、オーナーは業務のわずらわしさから解放されることになります。

管理委託費用が発生するので、自主管理よりは利回りは低下することになります。管理委託費用は会社によっても変わりますが、賃料の5~10%が相場です。

一括借り上げ(サブリース)

一括借り上げとは、土地を駐車場運営会社に貸し出し、稼働率とは関係なく運営会社から一定の賃料を受け取る方式です。一般には、コインパーキングの際に採用されます。

駐車場経営に関わる管理業務はすべて運営会社に任せることができるうえ、売上の変動に関わりなく毎月一定の賃料(借地料)が入るので、経営リスクを低減させることもできます。

ただし、駐車場運営会社の利益がある分、オーナーが受け取る収益は低くなります。また、駐車場運営会社が想定していた売上に到達しない場合、賃料が引き下げとなる契約内容になっていることもあります。トラブルのもととなりますので、契約内容はしっかりと確認しておきましょう。

初期費用とランニングコストを抑える

利回り計算のときに見たように、利回りを向上させるには初期費用とランニングコストを抑えることがポイントとなります。

月極駐車場の初期費用を抑えるには、アスファルト舗装ではなく砂利敷きにするという手があります。これだけで工事費用を大幅に削減することができます。

ただし、砂利敷駐車場は雨が降ると車やタイヤが汚れやすくなり、石を弾いて車に傷が付いたりする可能性があります。

利用者が砂利敷き駐車場を避けてしまうと収益は下がることになるので、見極めが必要です。

コインパーキングの初期費用については、複数社の見積もりを比較検討することが重要です。その際には、ランニングコストも含めて試算するようにします。

失敗しない駐車場経営には競合他社との差別化が重要

失敗しない駐車場経営には何が必要でしょうか。先ほど、駐車場経営の成否を決めるのは立地であると述べましたが、立地だけでは足りません。なぜなら、駐車場に向いている土地には競合がすでに存在していると考えることができるからです。

重要なことは、競合との差別化になります。ここでは、競合との差別化によって利用者に選んでもらえる駐車場づくりの方法を解説します。

上記資料では、駐車場を含めさまざまな土地活用方法を提案しています。土地活用を検討している方は、ぜひあわせてご覧ください。

満車を意識した集客方法

駐車場経営、とくにコインパーキング経営では、利用者に存在を認知してもらうことがとにかく重要です。

都市部における駐車スペースの需要は日増しに高まっており、車を利用する人々がストレスなく駐車場を見つけられるようにすることが、経営成功の鍵を握っています。車の利用者にいかにリーチをするのかが、集客の成果にダイレクトに結びつきます。

現場での集客

現場で集客するためには、視認性を向上させることが重要です。そのためには看板を工夫する必要があります。

駐車場の存在をドライバーに明確に伝えるために、看板のデザインに工夫を凝らすことが求められます。看板にはP看板、満車・空車看板、料金看板があり、そのうちP看板や満車・空車看板は、色鮮やかで目を引くデザインが効果的です。

一方、料金看板に関しては、価格競争を意識している場合にはとくに 目立たせることが重要であり、料金体系を明確に示必要があります。価格の安さで勝負していない場合は、とくに 目立たせる必要はないでしょう。

駐車場の使いやすさも細心の注意を払うべきです。入りにくい、出にくい、停めにくい駐車場は好まれません。出入口の数を増やすこと、電柱・植栽などの障害物を避けて適切に設計すること、段差を最小限に抑えることなど、利用客の立場に立って細部を設計していく必要があります。

料金設定

また、料金設定は、コインパーキング経営の成功の鍵を握る要素の一つです。その設定一つで、顧客の利用パターンや満足度が大きく変わるためです。

料金単位をどのように決めるかは、ターゲットとする顧客層や地域特性を考慮する必要があります。たとえば、ビジネス街にあるコインパーキングでは、短時間の停車が多いため、30分単位で料金を設定し、短時間利用者にとって使いやすいサービスを提供することが考えられるでしょう。

30分を200円で、1時間を200円で設定することの違いは、顧客の選択肢や駐車場の回転率に大きな影響を与えるます。ビジネス街では、30分200円の料金設定が適しているかもしれませんが、観光地では長時間停車する顧客が多いため、1時間あたりの料金を低く設定することで長時間の利用を促進できます。

時間帯や曜日による料金差別化も考えられます。昼間はビジネス利用が多く、夜間や週末は観光やショッピングでの利用が増えるのであれば、それぞれの時間帯や曜日に応じた料金設定が可能です。

さらに、顧客の安心感を考慮した料金設定も重要です。例えば、一日最大料金を設定することで、顧客は予想外の高額料金を心配することなく、安心して過ごすことができます。

リピーターの獲得

このように、稼働率の高い駐車場経営を目指すには、まず利用者の目線で検討することが欠かせません。駐車場の存在を認知してもらうことも大切ですが、リピーターを獲得するためには、サービスが充実しており、かつ使いやすいことが大前提です。

予想外の高額料金になってしまった、駐車しづらかった、清算がスムーズにいかなかったなど、不満につながる点があれば、顧客は一回きりの利用で離れてしまいます。

顧客が何を求めているのかニーズを先読みし、それを満たすことができれば、自然と利用者も増え、稼働率の向上につながるでしょう。

コインパーキングの上部空間を活用

土地を所有していると、その可能性を最大限に活かしたいと考えるのは当然のことです。一見すると、コインパーキング経営は手軽な収益源と思われがちですが、「せっかくの土地を駐車場にするだけではもったいない」という考えに至ることも少なくありません。とくに 、土地が広くない場合、駐車場から得られる収益は限られてしまうため、その他の収益化の方法を模索することが賢明です。

このようなシチュエーションで有効なのが、コインパーキングの上部空中を活用したテナントビルの建設です。土地の用途地域が商業地域に指定されている場合、容積率の恩恵を受けることができます。これは、土地の面積に対して建物の床面積を どれだけ大きくできるかを示す数値であり、商業地域では一般的に高い数値が設定されています。そのため、駐車場としての利用だけでなく、建物を建てることによって、土地から得られる収益を格段に高めることが可能になるのです。

コインパーキングの収益は、その台数によって左右されるため、土地の面積が狭いと収益性が低くなりがちです。しかし、賃貸アパートやマンション、オフィスビル、商業ビルなどの収益不動産を建設することで、限られた土地から高い収益を得ることができるようになります。

一般的には、商業系の不動産は住宅系に比べて利回りが高い傾向にあります。これは、商業ビルの場合、多くのテナントから賃料を得られるため、収益の安定性と規模が大きくなることが理由です。また、オフィスビルも企業の需要に応じた賃貸料が期待できるため、土地の収益化には非常に適しています。それぞれの土地の特性を見極め、最適な不動産投資を行うことで、より大きな経済的メリットが得られるでしょう。

利用者が得する仕組みでリピーターを増やす

ここでは、コインパーキングの価値をさらに高め、リピーターを獲得するための仕組みをいくつかご紹介します。

周辺の商業施設とタイアップする

周辺の商業 コインパーキングをより効果的にプロモーションできます。たとえば、近隣のレストランやショップで一定金額以上の買い物をすると、パーキング料金が割引されるようなサービスを提供すると良いでしょう。商業施設側にとっても、このようなサービスは顧客を引きつけるためのインセンティブとなり、双方にメリットがあります。

回数券や割引券になるバーコードの発行なども有効でしょう。

アプリの活用

スマートフォンアプリの活用は、駐車場の利用者にとっても経営者にとっても大きなメリットをもたらします。アプリを通じて駐車場の空き情報を提供することで、利用者は目的地付近の駐車場を素早く見つけることが可能になります。 都心部や観光地などでの駐車場探しは困難を極めることがありますが、利用者がリアルタイムに空き状況を確認できるようにすればストレスから軽減されるでしょう。

また、事前予約システムを導入し、駐車場が満車であるリスクを避け、スムーズな外出計画が立てられるよう手助けすることもできます。

決済システム

キャッシュレス決済の普及が進み、クレジットカードや電子マネー、スマートフォンを利用した決済サービスが日常的に使用されています。それらをコインパーキングのシステムに組み込むことで、利用者は財布から現金を取り出す手間を省くことができ、スムーズな出入りが可能になります。

キャッシュレス決済は時間の節約にもつながります。例えば、クレジットカードをタッチするだけで支払いが完了するタイプの決済システムは、硬貨を数えて投入する手間を省くだけでなく、精算機の前での待ち時間を減少させる効果があります。これにより、ピークタイムにおける混雑を緩和し、顧客のストレスを軽減することができるでしょう。

加えて、領収書の即時発行機能は、ビジネス利用者にとっては必須のサービスといえます。経費精算のための領収書を必要とする利用者にとって、その場でかんたに領収書を入手できるシステムは大きなメリットとなります。

電動車充電スポットの設置

電気自動車向けに充電器を設置するというのも有効な手立てです。

現在、電気自動車やプラグインハイブリッド自動車などの電動車の利用が急速に拡大しています。日本政府は、2035年までに乗用車新車販売における電動車の比率を100%とする目標を掲げており、それにあわせて充電インフラの数を拡大させる計画です。自宅のみならず、公共の場所や商業施設、そして駐車場においても充電器の設置は今後必要不可欠となっていくでしょう。

電動車が充電するシーンとしては、自宅で充電する、外出した目的地で充電するの2パターンが考えられ、コインパーキングで充電できるようにすることによって、電気自動車の所有者はより柔軟に移動することが可能になるでしょう。

しかし、電動車向けの充電器は、まだまだ不足しているのが現実です。駐車場に導入すれば、利用者の利便性が高まり、競合他社との差別化が図れます。

再生可能エネルギーを活用した充電器の設置は、環境への配慮とエネルギーの自給自足を推進する意味でも価値があるといえるでしょう。

駐車場経営の利回りを向上する運営のコツ

駐車場経営の収益性を高め、利回りを向上させるにはどうすればよいのでしょうか。運営のコツを解説します。

駐車場料金設定の相場とポイント

先ほどもお伝えしたように、駐車場経営においては賃料の設定が重要になります。料金設定では相場に見合った料金にすることが原則です。

料金が高すぎれば顧客は遠ざかりますし、相場より安い駐車料金であれば人気は出ますが、収益性に影響を及ぼします。相場より高い価格設定だと利用者がつかず、結局利回りは低迷します。駐車場料金は相場に収れんされていく傾向にあるといえます。

したがって、市場調査を徹底し、地域の平均価格を把握し、さらには顧客のニーズや期待を理解することが極めて重要です。

ここでは、料金設定についてより細かく見ていきましょう。

月極駐車場

利用者にとって月極駐車場の料金は、家賃や住宅ローン代、携帯電話料金などと同じ毎月の固定費になります。利用者は少しでも節約しようと、まわりの駐車場と比較検討しますので、土地オーナーは料金設定は慎重にならざるをえません。

アスファルトやコンクリートで舗装されているか否かでも価格は変わります。雨・雪などで車が汚れることを嫌がる利用者は、多少高い賃料を払っても舗装された駐車場を選ぶでしょうし、少しでも節約したい利用者は舗装されていなくても料金が安い駐車場を選ぶかもしれません。

地方の郊外などに多いのですが、周辺の駐車場に舗装されていない駐車場ばかりの場合、舗装することで逆に差別化につながることがあります。そうなれば強めの価格設定も可能になるでしょう。

リサーチをしっかり行って地域の傾向をつかみ、適正な価格を見つけることが重要です。

コインパーキング

コインパーキングでは、より柔軟な価格設定が可能になります。コインパーキングで価格を決める要因として、場所、時間、利用傾向の3つがあります。

駅の近くや商業施設の近くなど、場所によって駐車場への需要は変化するので、立地条件が価格に大きな影響を及ぼすため、商業施設や繁華街、駅周辺などの高需要エリアでは、料金を高めに設定することが一般的です。

立地に合わせて価格が変動するのは理解しやすいですが、時間帯によって変化することも重要な要素です。

たとえば夜間や早朝には低料金に設定し、昼間や夕方のピークタイムには料金を上げることで、需要と供給のバランスを取ることができます。

また、土日・祭日に利用が増加する、お祭りの日だけ特別に急増するなどの利用傾向も重要です。こうした動きを価格に反映させる「ダイナミックプライシング」の取り組みも進んでいます。

なお、料金設定とは直接関係ありませんが、コインパーキングと飲み物の自動販売機は相性が良いので設置を検討してもいいでしょう。デッドスペースの有効活用になりますし、駐車料金を払うために自販機を利用して、お釣りを作るといったこともあります。

その他にも、野立て看板を設置できるスペースを貸し出すなども考えられます。とくに、交通量の多い道路沿いや人通りの多い土地だと良いでしょう。広告主にとっては目に見える形でのプロモーション効果が期待でき、スペースを提供する側にとってはプラスアルファの賃貸料収入を見込むことができるのです。このように、スペースを有効活用することで収益の多角化を図ることが可能です。

市場の変化を素早く取り入れる

近年、私たちの生活におけるデジタル化は目覚ましいものがあり、さまざまな分野でデジタルトランスフォーメーション(DX)が進行しています。駐車場も例外ではありません。そうした変化をいち早く取り入れることで、競争力を高めることができるでしょう。

具体的には、従来の駐車場では入出場時に駐車券を発行し、精算の際にはその券を使用するという流れが一般的でした。これにより、利用者は券を保管する必要があり、精算機での支払いには行列が発生することも少なくありませんでした。また、運転に慣れない人は発券機のそばに車をつけることができず、いったん運転席から降りて駐車券を取る光景も見受けられました。

さらに、ゲートやフラップ(ロック板)のない駐車場も登場しています。入出場時の待ち時間が削減され、スムーズな流れが実現される他、雨でスリップしてゲートに衝突するといった事故も軽減します。

また、ゲートレスの駐車場は、従来のゲート付き駐車場と比較して、空間的な制約が少なくなるため、駐車場の設計自由度が高まり、駐車台数を増やすことができます。出入口でよく発生しがちな接触や追突事故なども減ることから、運用管理がより効率的になり、これまで現地に置かなければならなかった人員も削減することができます。

また、決済方法においても大きな変化が見られます。これまで現金決済が主流であった駐車場において、スマートフォン決済やクレジットカード決済など、非接触・キャッシュレス決済への移行が進んでいます。これは、利用者にとっては決済の便利さをもたらすだけでなく、土地オーナーにとっては精算機の設置やメンテナンスにかかるコストと手間を削減することができ、結果的に運営コストの削減につながります。

さらに、精算時の混雑が解消されることで、利用者のストレスが軽減され、サービスの全体的な質が向上するという効果も期待されます。

デジタル化によって得られるもう一つのメリットは、データの収集と分析の容易さです。これにより、ダイナミックプライシングの導入がより実現的になります。ダイナミックプライシングとは、需要に応じて駐車料金を柔軟に変動させるシステムであり、利用者にとっては駐車料金を節約するチャンスが増える一方、運営者にとっては収益最大化を図ることができるというメリットがあります。たとえば、ピーク時には料金を高く設定し、オフピーク時には割引を行うことで、駐車場の稼働率や回転率の向上を図ることができます。

また、思わぬ副次的な効果もあります。犯罪の減少がその一例です。入出庫の際に車両のナンバープレートを自動で読み取り、記録するシステムを導入したスマート駐車場により、

車両関連の窃盗被害が著しく減少することが期待されます。不審な動きを検知するとすぐに警備員や警察に通知されるため、犯罪者を抑止する効果があります。また、万が一犯罪が発生した場合でも、これらの記録が捜査の手がかりとなり、犯人特定に役立つことがあります。

さらに、 スマート駐車場は、車両が正しく駐車されているかを監視し、無断駐車や長時間の駐車違反を防ぐ機能も備えていることが多いです。これにより、駐車場内の秩序が保たれ、利用者にとっても安全で快適な環境が提供されます。

「スマートパーキング化」は今後も加速していくことが予想されます。こういった技術革新は、駐車場業界における競争力の向上に不可欠です。

メンテナンス計画

月極駐車場ではメンテナンスらしいメンテナンスはありませんが、こまめな清掃は利用者に好印象を与えます。たとえば、駐車場内の落ち葉を定期的に掃除する、排水溝の詰まりを防ぐために細かなゴミを取り除くなど、細やかな清掃活動は利用者が快適に駐車場を使用するために役立ちますし、良好な印象を与えることでリピーターを増やす効果も期待できます。

一方で、コインパーキング経営においては、メンテナンス計画がその成功を左右するほど重要です。コインパーキングは多くの場合、24時間365日稼働しているため、設備の故障や不具合は避けられない問題です。そのため、機械の定期的な点検や修理はもちろん、清掃計画の策定や緊急時の対応計画も含めた綿密なメンテナンススケジュールが必要となります。コインパーキング経営を長期にわたって運営していくためには、定期的なメンテナンスの実施が不可欠です。

定期的な巡回

コインパーキングではカメラ監視が基本なので、通常は無人となります。そのため、ゴミが投げ捨てられたり、夜間に人が集まるなどのトラブルも発生したりします。定期的な巡回があると安心ですので、メンテナンスの1つとして取り組みます。

定期的な清掃

ゴミが散乱していたり、機械が汚れていたりすると利用者に良い印象を与えません。定期的な清掃は欠かせないものです。

機械の点検・保守

コインパーキング経営は機械で支えられています。機械は一定の周期で不具合を発生しますので、定期的な点検・保守を行うようにします。とくにゲートなどの可動部は故障が発生しやすいので、こまめに点検します。

機械の修理

定期的な点検で機械の故障を発見したら、速やかに修理します。また、突発的な故障や事故にも対応します。故障・事故への対応が遅れるとクレームの対象になりますので、運営会社はつねに対応する態勢を取ります。故障や事故への迅速な対応は、信頼性の高いサービスを提供する上での基本であり、顧客満足度を高めるためにも極めて重要です。

委託する駐車場運営会社の選定

コインパーキング経営の成功のためには、信頼できる駐車場運営会社を選ぶことが重要です。

コインパーキングの運営会社は、単に管理をするだけではなくプランニング、設計、施工管理、一括借上げ契約、竣工後の運営まで一気通貫で担当するケースが多くあります。それだけに運営会社の役割は非常に大きいものがあります。

駐車場運営会社を選ぶ視点としては、以下のポイントを押さえておきましょう。

幅広く柔軟な提案ができるか

ありきたりの提案ではなく、土地の性格をふまえ、オーナーの要望を盛り込んだ幅広く柔軟な提案ができるかどうかが重要になります。

駐車場のDX化に対応できるか、コストパフォーマンスを考えた提案になっているか、一括借上げではない契約も可能かなどを判断材料としましょう。

会社に実績があるか

駐車場運営会社に実績が豊富にあるかを着目しましょう。受注数を積み重ねている運営会社であれば、ノウハウを蓄積しているといえます。地主の要望にも応えられる効率的で収益性の高いプランを提案してもらえる可能性も高まります。

突発的なトラブルへの対応やレアケースの事例でも、これまでの経験と実績を活かしてサポートしてくれるでしょう。

スピーディーな対応ができるか

スピーディーな対応力も駐車場運営会社に求められる能力です。

コインパーキング経営では、時に予期しないクレームやトラブルが生じることがあります。これらに対して素早く、そして適切に対応できる体制が整っているかが、運営会社の質を測るバロメーターになります。

また、営業担当のレスポンスが早いかどうかも判断基準になります。電話やメールを早く返してくれるかどうかで担当者の能力とともに、会社の実力を図ることができます。問い合わせに対する返答が迅速かつ丁寧であれば、それは運営会社がオーナーとのコミュニケーションを重視している証拠といえるでしょう。

近隣に営業所があるか

駐車場経営を予定している土地の近隣に事業所があれば、地元のニーズを的確に把握している可能性が高いです。地域の特性を生かして運用してくれる会社であれば、より収益を最大化できるかもしれません。

口コミを確認する

駐車場運営会社を選ぶにあたっては、ウェブサイトで口コミを確認する、複数社に見積もりを取るなどして、比較検討することをおすすめします。

また、管理会社が運営している他の駐車場を実際に見てみるのも手助けになります。清掃やメンテナンスが行き届いていることがわかれば安心材料となるでしょう。

以上ポイントを総合的に考慮し、慎重に運営会社を選ぶことで、コインパーキングの経営を成功へと導くことが可能です。

適切なパートナーを見つけることで、効率的な経営はもちろんのこと、将来的な拡張や新たなビジネスモデルへの挑戦など、さまざまな可能性が広がります。

駐車場経営の成功事例

ここで、駐車場経営の具体的な成功事例を3つご紹介します。

月極からコインパーキングに

月極駐車場の運営からコインパーキングへの転換によって、売上を大幅に増加させた成功事例をご紹介します。

月極駐車場とは、契約者が毎月定額の賃料を支払い、指定された駐車スペースを利用するビジネスモデルです。駐車場のスペースが満車であっても、駐車台数に応じた固定収入しか得られないため、収益には上限があります。

対照的に、コインパーキングは時間貸しの形式を取り、利用者が利用した時間に応じて料金を支払います。この柔軟な料金体系は、とくに都市部など、交通量が多く短時間駐車の需要が高い地域で非常に有効です。

コインパーキングの稼働率は、以下の式によって計算されます。

コインパーキングの稼働率(%)=1日あたりの駐車時間の合計÷24時間×100

この稼働率を高めることにより、収益性を大幅に向上させることが可能になります。

事業者は、ピークタイムとオフピークタイムの料金差を設けることで、時間帯に応じた需要を捉え、収益最大化を図りました。また、週末や祝日などの特別料金設定や、近隣のイベント情報に合わせたプロモーションを行いました。これらの取り組みにより、表面利回りは従来の月極駐車場時代の15%から、30%まで改善することができたのです。

 

狭小スペースの駐車場

これまでは有効活用を諦めていた狭くて小さい土地でも、需要があれば駐車場経営は可能です。極論すれば、1台でも停めるスペースがあれば駐車場になるのです。

駅の近くやショッピングモール・商店街の近くであれば、コインパーキングとして営業できるかもしれません。また、住宅地にある土地でも集合住宅やオフィスが近くにあれば、月極駐車場として借りてくれるかもしれません。

ある土地オーナーは、狭小地ならではの工夫を考え、駐車場として活用しました。土地が狭いことを逆手に取り、軽自動車専用にし、さらに屋根を付けて競合と差別化を図ったのです。こういった取り組みにより、活用が難しいと思われていた土地を最大限に活用することができました。

これは所有していた土地と周辺のニーズが一致して収益化できた例です。駐車場を経営さえすれば必ず収益が生み出せるとは限りません。

駐車場のニーズがあるかどうかの事前調査は必須となりますので、駐車場のマーケティングの実績がある運営会社に任せると良いでしょう。

建物(住居・テナント)あり駐車場

土地が広ければ駐車台数を稼ぐことができ、収益を上げていくことは比較的容易ですが、たとえ狭い土地であっても工夫次第で収益を生み出すことができます。

その一つが、駐車場の上部空間を活用する、空中店舗「フィル・パーク」です。コインパーキングを営業している土地に容積率の余裕がある場合は、コインパーキングの上部に商業ビルを建てて、テナントを誘致することで、コインパーキング以外の収益を確保することができます。限られた土地でも、コインパーキングと商業ビルの双方から収益を得られるのが、フィル・パークの魅力です。

空中店舗「フィル・パーク 」を展開するフィル・カンパニーは“まちのスキマを「創造」で満たす” をパーパスとして、土地オーナーのニーズに応じた柔軟な提案を行ってきました。活用が難しいと他社に断れられた土地でも有効に活用してきた実績が多数あります。

土地オーナー様の課題解決のためにできることがあると信じていますので、駐車場経営に少しでも関心のある方は、ぜひ私たちに相談してください。

この記事の監修者

垣内 典之

株式会社 PROPUP 代表取締役/一級建築士

石川県金沢市出身。千葉大学大学院修了(建築学)。建築設計監理からキャリアをスタート、環境性能に係る設計審査業務、企業不動産(CRE)戦略、ファシリティマネジメント(FM)コンストラクションマネジメント(CM)等を経験。建築・不動産・ITを横断的に繋げ、高次元のプロパティ・マネジメントを実現するべくPROPUPを設立。

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